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2025.01.26

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

「教えて!Nory」

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

 

毎週楽しく拝聴させて頂いています。

昨年の9月に行われたマイナビネクストヒロインゴルフツアー第9戦マイナビカップでのことですが、
徳田 葵選手が残念ながらライの改善でペナルティーを受け優勝を逃しました。

ライの改善とみなされるのはボールからどのくらいの距離内なのでしょうか?

Youtubeの映像も見られます。

【解説】

ご質問ありがとうございます。

この件はYouTubeの映像やALBAさんのオンライン記事で確認することができました。

回答から申しますと、
プレーヤーが球の「すぐ近く」の地面を変えて
そのストロークに対して潜在的な利益を得たときにライの改善とみなされます。

規則は具体的な球からの距離は明記していません。

徳田選手の状況を説明しますと、18番ホール、522ヤードのパー5のセカンド地点。
選手の球はフェアウェイに止まり、そのすぐ後ろにはディボット跡に戻されてある切り芝が少し浮いている状態でした。

選手はその切り芝を足で踏み、地面に押し付けてからストロークを行いました。
委員会はその行為をライの改善とみなし、トーナメントリーダーとしてクラブハウスで待っていた彼女に2罰打課しました。

そもそも球のライとは、
球が止まっている箇所と、球に触れているか、球のすぐ近くにある、
成長または付着している自然物、動かせない障害物、不可分な物、境界物のことです。
(定義:ライ)

それに加え、改善とは
プレーヤーがストロークに対して潜在的な利益を得るためにそのストロークに影響を及ぼす状態、
またはプレーに影響を及ぼす他の物理的な状態の1つまたは複数を変えることです。
(定義:改善)

徳田選手の行った行為は、球のすぐ近くにあったすでに所定の位置に戻されている切り芝を足で踏み、
押し付けることによって地面を変え、平らにしたことがストロークに対して潜在的な利益を得たとみなされました。(規則8.1a(3))

このケースではたとえ彼女がストローク前に違反に気付き、
切り芝を元の状態に復元したとしても罰を免れることはできません。(規則8.1c)

本人はパッティンググリーンの損傷を修理するような感覚で地面を踏んだとコメントしていました。

徳田選手の言う通り、
パッティンググリーンとティーイングエリアの地面の修理や改善は認められていますが、
他のコースエリアは一部例外があるものの、
基本的に改善した場合は一般の罰が課されます。
(規則6.2b(3)、13.1c、8.1)

競技に参加するプレーヤーのほとんどは、徳田選手のように痛い目にあって初めて規則を学びます。

そうならないようにこちらのコーナーを通してお役に立てたら嬉しいです。

2025.01.06

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

インプレーの球に触れる
解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

9月に開催された山陽新聞レディースカップの1ラウンド目の出来事です。

8番グリーンでルーリング要請がありました。

プレーヤーはパッティングをしようとボールマーカーの前に球をリプレースし、
ボールマーカーを拾い上げました。

それからストロークしようと思いきや、球の向きが狙っている方向より僅かにずれていることが気になり、
その向きを調整しようと無意識に球に触れてしまったのです。

プレーヤーは、「球を動かしてはいないが、その位置で球に触れて少し向きを変えた」と言いました。

本来であれば、ボールマーカーで球の位置をマークしたままでなければ
グリーン上の球を拾い上げたり触れたりしてはいけません。

それはたとえ、球の位置を変えずに故意に触れるだけでも
規則9.4の違反で1罰打となります。

プレーヤーは、「故意ではなく、無意識です」と説明しましたが、
たとえ無意識であっても手で球に触れる行為は故意とみなされてしまいます。

その結果、1罰打を加えた上で、
同じ位置からプレーを続けました。

このようなルーリングはとても稀ですが、
年に1~2度あります。

昨年は富士通レディースの9番グリーンでは、
プレーヤーがマークせずに球を拾い上げてしまうことがありました。

この場合も1罰打で、
球を元の箇所にリプレースしました。

あとでそのプレーヤーに事情を聞いてみたところ、
「グリーンに上がったときに、3打目のサンドウェッジの距離が想定していた距離より4ヤードショートしていたので、
何でだろうと考え込んでいたら、
マークするのを忘れて球を拾い上げてしまった」と言ってました。

プレーヤーたちは、常に多くのことを考え、
判断や決定、ときには反省をしながらプレーしています。

そんな中、
ふとしたことでいつものルーティーンと違う行動を取ってしまうのかもしれません。

それで罰を課されるのは勿体ないので、
インプレーの球に触れる時は、慎重に行いましょう。

2024.12.17

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

ラウンド中にドライバーヘッドが壊れる

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

ソニー日本女子プロゴルフ選手権の2日目に14番ホールでルーリングがありました。

プレーヤーは前のホールでティーショットをした際に、
ドライバーヘッドの上面部分であるクラウンの接着が剥がれて割れてしまったとのことでした。

そのドライバーではもう打てる状況ではなかったので、
どうしたら良いかの質問でした。

規則4.1a(2)には、「クラブがラウンド中に損傷した場合、
クラブを乱暴に扱った場合を除き、そのクラブを修理するか、他のクラブに取り替えることができる」とあります。

つまり、プレー中に怒りに任せてクラブを地面に叩きつけたり投げたりする以外で、
クラブが壊れてしまった場合、他のクラブに取り替えることができます。

しかしJLPGAを含む主だったゴルフ団体は、ローカルルールで
「壊れた、または著しく損傷したクラブの取り替え」を採用している為、
軽度な損傷では取り替えができない制限を設けています。
(ローカルルールひな型G-9)

例えば、シャフトが折れたり、曲がってしまったら取り替えは認められますが、
単にシャフトがへこんでいるだけでは認められません。

クラブフェースは、目に見えて陥没などで変形していれば取り替えられますが、
細い亀裂が入っているだけでは認められません。

今回のケースでは、プレーヤーは通常のプレーでクラブが壊れ、
しかも著しく損傷しているので、クラブの取り替えを認めました。

そこで担当のクラブメーカーさんは、クラブカーからドライバーヘッドを持ってきて、
プレーヤーが18番ティーに来たところで、シャフトから壊れたヘッドを取り外し、
新たなヘッドを取り付けました。

これは同じシャフトを使っているので、修理と思われがちですが、
修理とはラウンドをスタートした時点でそのクラブを構成していたグリップ、シャフト、
クラブヘッドで元の状態に修復することを意味します。

今回のようにクラブヘッドを交換した場合は、
修理の範囲を越えているので取り替えとなります。

このクラブの修理と取り替えの違いを明確にする理由は、
クラブが著しく損傷してなくても修理は可能ですが、取り替えはできないという点です。

このケースのもう一つの注意点は、新たに取り替えたドライバーヘッドについてです。
14番ホールでルーリング要請があったとき、
メーカーさんはドライバーヘッドを新たに取り付けたいと言いました。

それについては問題ないのですが、
レフェリーはその時点で取り付けたいドライバーヘッドをプレーヤーやメーカーさんらが
一緒に持ち運んでいないことを確認しました。

これは規則4.1b(4)の「クラブを追加する、または取り替える場合の制限」にありますが、
ラウンド中にクラブが壊れるかもしれないと心配して、ドライバーヘッドなどの部品を持ち運び、
その部品でクラブを組み立てることを禁じています。

つまりプレーヤーが事前にキャディーバッグに入れてプレーしたり、
クラブメーカーさんがいつでも交換できるようにとプレーを観戦しながら
持ち歩いた部品でクラブを取り替えると違反となります。

何故なら、これを認めてしまうと規則4.1b(1)の「14本のクラブの制限」の効力がなくなってしまうからです。

クラブとは、1本のシャフトにクラブヘッドがついて初めて1本と数えられます。

つまりシャフトだけとかヘッドだけを部品として持ち運んでも
14本のクラブの制限の違反に引っかからないのです。

今回のように、部品として持ち運び、いざ壊れたという時に直ぐに1本のクラブに組み立てて使えてしまうと、
15本のクラブを持っているのと変わらないので、それを制限する為にこの規則があります。

この違反は組み立てて1本のクラブとして追加、
或いは取り替えた時点で一般の罰(2罰打)で2回目の違反は失格となります。

そして違反に気づいたら、次のストロークをプレーする前にプレーから除外する手続きをしなければ、
今度は規則4.1c(1)の失格となります。

このようにクラブの損傷や取り替えには、どのようにして壊れたのか、
著しい損傷なのか、修理なのか取り替えか、取り替える部品は持ち運ばれていないか等、
正しく裁定するまで1つ1つ細かな確認が必要です。

2024.12.17

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

フェアウェイの下のトンネル内に球が止まる

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

クオリファイイングトーナメント(QT)で実際に起こった出来事です。

打ち下ろしのパー4で、プレーヤーのティーショットは右へ飛んでいき、
そのホールのフェアウェイの下を横切っているトンネルに転がっていきました。

トンネルは車が1台通れる大きさでコンクリートが敷かれているため、球はコロコロと転がり続け、
フェアウェイの真ん中あたりの地下でようやく止まり、ルーリングとなりました。

トンネルは障害物なので、トンネルの中で球が止まった場合は、
異常なコース状態からの救済が受けられます。
(規則 16.1b)

そして完全な救済のニヤレストポイントは、球からの水平距離と垂直距離の両方を考慮した上で、
ホールに近づかない球から最も近い救済箇所を決定しなければなりません。
(詳説 16/5)

今回のケースでは、球はトンネルの入り口から11ヤード近く転がり込んでいました。
そしてトンネルは地上であるフェアウェイのすぐ下にあり、
球の位置から推定するとフェアウェイまでの垂直距離は約3メートルでした。

両方の距離を比較しますと、真上の方が近いので、その基点はフェアウェイのほぼ真ん中となりました。
プレーヤーは罰なしに救済エリアに球をドロップしてフェアウェイから2打目をプレーしていきました。

大きなミスショットにも関わらず、異常なコース状態からの救済で、
幸運にもフェアウェイ真ん中からプレーを続けられた珍しいケースでした。

因みに、フェアウェイで基点を取るとき、地下にある球の位置は見えません。
そんな時は、トンネル内で入り口から球まで歩測し、
地上でもその入り口から等距離の11ヤード横に歩けば正しく基点を定めることができます。

いつか参考になれば幸いです。

2024.12.01

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スコアカード誤記による失格を最小化するために
解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

今年6月にPGAツアーがスコアカード誤記による失格を最小限にする措置としてスコアカード提出に関するルールを
一部修正することを決めました。

ことの発端は今年2月のジェネシス招待でジョーダン・スピースが失格となった出来事です。

スピースはジェネシス招待2日目のラウンド後、スコアリングエリアに直行しスコアカードにサインして提出しました。

しかし、スコアリングエリアから出てすぐに4番ホール、パー3でボギーの「4」だったにも関わらず、
スコアカードには「3」と記したまま提出してしまったことに気づきます。

そのホールの訂正をしようとスコアリングエリアに戻りましたが、
スコアの修正は認められず、彼は失格となりました。(規則 3.3b(3))

そこで、PGAツアーはUSGAやR&A、DPワールドツアーとともに、
プレーヤーがスコアリングエリアを出てから15分間の猶予を設ける新たな規定を発表しました。

PGAツアーが運営する全てのツアーと主要なゴルフ団体によるツアーにおいては、
プレーヤーがスコアリングエリアから出た時が、スコアカードを提出した時と定めています。

JLPGAも赤テープで区切られた提出エリアを完全に離れたとき、スコアカードを提出したものと定めています。

一度スコアカードを提出すると、提出された実際のスコアよりもホールのスコアが少ない場合、
知らなかった罰を含めなかった場合を除き、失格となります。

それが、6月以降のPGAツアーではスコアリングエリアを出たとしても、15分以内であれば、
スコアリングエリアに戻ってスコアを修正することができるようになりました。

また、スコアリングエリアから出たプレーヤーのスコアカードの誤記に競技委員が気づいた場合は、
プレーヤーにその誤りを伝えた時から15分以内であれば、修正可能になります。

PGAツアーのこのルールの修正は大物プレーヤーの失格を防ぐための忖度とも言われており、
「ジョーダン・スピース・ルール」と呼ばれています。

この規則は、AIG Women’s Openでも採用されており、私は初めてR&Aによる原文を見ました。

そこには、例外も書いてあり、次の4つでは、たとえ15分以内だったとしても修正はできません。

それらは、
組み合わせ表が発表された、
プレーヤーが次のラウンドを始めた、
プレーヤーの1人でもプレーオフのためのストロークを行った、
または、競技会の結果が最終となった場合です。

私は時間管理が必要とされるこの新ルールに戸惑ってしまいますが、
プレーヤーにとっては心強い味方なのかもしれません。

2024.12.01

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パー3のコールオンについて
解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

今年8月に行われたAIG Women’s Openはゴルフの聖地セントアンドリューズで開催されました。

スコットランドの夏は日本に比べればとても寒く、最高気温20度前後、最低気温10度に加え、突然の雨や突風が吹きます。

大会当週は最大18m/s(40mph)の風が予報されており、競技がその風で止まらないよう、
コースセッティング担当のGrant Moir氏はスティンプメーターを9 1/3フィートに設定し、
グリーン刈りをやめてコースをプレーヤブルな状態にしました。

大会2日目、私は11番ホール、165ヤードのパー3を担当しました。

海の横に位置するこのホールはコースの中でも特に風が強く、
パッティンググリーン上に止まっていた球は頻繁に動き、難易度の高いホールでした。

そのため、大会初日は最大4組がそのホールに溜まってしまい、2日目はコールオンが実施されました。

私は10番ホール担当レフェリーのアーニャとやりとりを繰り返し、最終組までコールオンを続けました。

コールオンとは、プレーのペースを改善するために、
パー3でグリーンに球が乗った後に後続組を打たせてプレーを進める手順のことです。

そして3サムの組み合わせだった場合、そのパッティンググリーン上に最大6個の球が乗る可能性があります。

ここでの注意点として、例えばあるプレーヤーがパッティンググリーン上からストロークして、
同じパッティンググリーン上に止まっている別の球に当てた場合、
プレーヤーは一般の罰(2罰打)を受けます。
(規則11.1a 例外)

これは例え止まっていた球が後続組のであったとしても罰は免れません。

なので、通常パッティンググリーン上の後続組の球がプレーの障害になる場合、
前の組のプレーヤーや競技委員がマークしてその球を拾い上げますが今回はR&Aの指示の下、
プレーヤー自身に拾い上げてもらうようにしました。

なぜならパッティンググリーン上に止まっていた球が、風の力で自然にホールに近づく可能性があり、
安易にその球を拾い上げてしまうと球がホールに近づく可能性をそのプレーヤーから奪ってしまうことになるからです。

規則では一度パッティンググリーン上から拾い上げられた球は、
リプレース後に自然の力で動かされたとしてもまた元の箇所にリプレースしなければなりません。(規則13.1d,規則9.6)

このコールオンの効果で11番ホールは最大2組の待ちですみましたが、
その代わりに12番ホールが混み合い、長いティー待ちになっていました。

混み合うパー3でのコールオンはプレーのペースの改善にはなるものの、
規則違反のリスクやプレーヤーの利益を考えると、委員会は安易に実行するものではないと思いました。

今回は特に11番ホールのティーイングエリア付近にトイレが設置されており、
12番ホールのティーイングエリアより待ちやすい環境でした。

結果的にコールオンはしない方が良いと思いました。

2024.11.18

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動物の蹄による損傷
解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

10月1週目に行われたスタンレーレディスホンダゴルフトーナメントは東名カントリークラブで開催されました。

佐藤心結選手の初優勝で大きな話題になりましたが、
その他にもニュースに取り上げられたのがコースに多数生息する鹿です。

ギャラリー用のロープ内に入り込み静かに観戦する鹿はとても可愛いですが、
何かの拍子に驚かせてしまうと凄い勢いでコース内を走り回り、
パッティンググリーンやフェアウェイ、バンカーなどを傷つけてしまいます。

このような損傷は、パッティンググリーン上では修理できますが(規則13.1)、
他のコース上ではできません。

また、コース上にある単独の動物の足跡や蹄の跡は動物の穴ではありませんので、
プレーヤーは自動的に救済を受けることもできません。(定義:動物の穴)

もし、委員会が鹿の蹄による全ての損傷区域をマーキングすることなく修理地として定め、
プレーヤーに救済を認めたい場合はローカルルールF-13の「動物の蹄による損傷」を採用することができます。

このローカルルールを適用することで、
バンカー内に深くできてしまった鹿の蹄跡やフェアウェイが蹄によって傷ついた区域が
プレーヤーのスタンス、スイング、または球の障害になっている場合、
規則16.1に基づいて救済を受けることができます。

パッティンググリーン上ではそうした損傷は修理することができるため、
委員会は規則16.1に基づいた救済を認めないことを選択することもできます。

つまり、球がパッティンググリーン上にあり蹄跡がプレーの線上にあっても救済はなく、蹄跡の修理に限られます。

東名カントリークラブは鹿による損傷が少なかったため、
このローカルルールは採用しませんでしたが、
10番グリーン付近に現れた鹿を森の中に追っ払っていた私を見たプレーヤーが
バンカーやフェアウェイにある鹿の蹄による損傷から救済は認められるのかを確認されました。

答えはノーでしたが、あまりにも酷い損傷がある場合は競技委員を要請してくださいとお伝えしました。

なぜなら、
委員会は競技中でも修理地としてマーキングされていない区域を修理地と定める権限を持っている
からです。

一般的に、地面の状態がそのコースにとって異常であったり、
特定の区域からプレーすることをプレーヤーに求めることが合理的ではない場合、
その場所を修理地としてマーキングします。(一般的なプレーのためのコースマーキング2F(1))

コースはあるがままにプレーすることがゴルフの原則ですが、
競技期間中ではコースの状況が変わることもあります。

例えば鹿の蹄跡や多くのギャラリーがぬかるんだコースを歩いた跡など、
フェアなプレーをするための妨げになることは
適切なコースマーキングと追加ローカルルールを採用することでプレーヤーに救済を認めています。

2024.11.18

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コース上の橋
解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

ゴルフコースにある橋はさまざまな理由で建築され、
そのような橋は動かせない障害物として、
救済が認められます。

しかし、救済を受ける際は気をつけなければならないポイントがいくつかありますのでご紹介します。

新南愛知カントリークラブ美浜コースで開催された住友生命Vitalityレディス東海クラシックの
12番ホールは570ヤードのパー5で、
残り144ヤードのラフには縦5メートルで地面から1.5メートルほどの高さの小さな石橋があります。

この石橋は飾り橋でジェネラルエリアに架けられており、
プレーの物理的な障害になっている場合、救済が認められます。

今年はこの橋で2件のルーリングがあったのですが、
球が橋の後ろ側のラフにあり、
スイングの障害になっていたので、
ジェネラルエリアの完全な救済のニヤレストポイントから
ホールに近づかない1クラブレングス以内の救済エリアに球をドロップしました。

しかし、救済後には球とホールの間に橋があり、
プレーの線に介在していましたが、
救済は認められませんのでプレーヤーは橋を越せる高さのクラブでパッティンググリーン前まで刻んでいました。

もし、橋の上に球が止まった場合、完全な救済のニヤレストポイントはその橋の下の地面となります。

つまり、プレーヤーが救済を受けることを選ぶ場合、
垂直距離は無視されます。

これは橋などの高架の部分に球が止まった場合に、
橋の周りに生えている木の枝の上が救済のニヤレストポイントになることを避けるためです。

その真下の地面の地点にまだ橋の一部が障害となっている場合は、
その地点を基点として完全な救済のニヤレストポイントを決定します。
(詳説16.1/4)

ゴルフコースにある橋はペナルティーエリアの中やアウトオブバウンズにあることもあります。

橋がアウトオブバウンズにある場合、
たとえプレーヤーのプレーの障害になっていたとしても救済はありません。

しかし、橋がペナルティーエリアにある場合は、
まず球がどのコースエリアにあるかを確認することが重要です。

球がペナルティーエリアにある場合、
その橋がプレーヤーの障害になっていたとしても無罰の救済を受けることはできません。
(規則17.3)

しかし、球がジェネラルエリアにある場合、
その橋がたとえペナルティーエリアの中にあったとしても
プレーヤーのスタンスやスイングの障害になっていたら救済を受けることができます。
(規則16.1)

このように、コースにある橋は障害物の中でも少しだけ気をつけなければならない建築物です。

ご参考にして頂ければ嬉しいです。

2024.11.07

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動物の蹄による損傷
解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

10月1週目に行われたスタンレーレディスホンダゴルフトーナメントは東名カントリークラブで開催されました。

佐藤心結選手の初優勝で大きな話題になりましたが、
その他にもニュースに取り上げられたのがコースに多数生息する鹿です。

ギャラリー用のロープ内に入り込み静かに観戦する鹿はとても可愛いですが、
何かの拍子に驚かせてしまうと凄い勢いでコース内を走り回り、
パッティンググリーンやフェアウェイ、バンカーなどを傷つけてしまいます。

このような損傷は、パッティンググリーン上では修理できますが(規則13.1)、
他のコース上ではできません。

また、コース上にある単独の動物の足跡や蹄の跡は動物の穴ではありませんので、
プレーヤーは自動的に救済を受けることもできません。(定義:動物の穴)

もし、委員会が鹿の蹄による全ての損傷区域をマーキングすることなく修理地として定め、
プレーヤーに救済を認めたい場合はローカルルールF-13の「動物の蹄による損傷」を採用することができます。

このローカルルールを適用することで、
バンカー内に深くできてしまった鹿の蹄跡やフェアウェイが蹄によって傷ついた区域が
プレーヤーのスタンス、スイング、または球の障害になっている場合、
規則16.1に基づいて救済を受けることができます。

パッティンググリーン上ではそうした損傷は修理することができるため、
委員会は規則16.1に基づいた救済を認めないことを選択することもできます。

つまり、球がパッティンググリーン上にあり蹄跡がプレーの線上にあっても救済はなく、蹄跡の修理に限られます。

東名カントリークラブは鹿による損傷が少なかったため、
このローカルルールは採用しませんでしたが、
10番グリーン付近に現れた鹿を森の中に追っ払っていた私を見たプレーヤーが
バンカーやフェアウェイにある鹿の蹄による損傷から救済は認められるのかを確認されました。

答えはノーでしたが、あまりにも酷い損傷がある場合は競技委員を要請してくださいとお伝えしました。

なぜなら、
委員会は競技中でも修理地としてマーキングされていない区域を修理地と定める権限を持っている
からです。

一般的に、地面の状態がそのコースにとって異常であったり、
特定の区域からプレーすることをプレーヤーに求めることが合理的ではない場合、
その場所を修理地としてマーキングします。(一般的なプレーのためのコースマーキング2F(1))

コースはあるがままにプレーすることがゴルフの原則ですが、
競技期間中ではコースの状況が変わることもあります。

例えば鹿の蹄跡や多くのギャラリーがぬかるんだコースを歩いた跡など、
フェアなプレーをするための妨げになることは
適切なコースマーキングと追加ローカルルールを採用することでプレーヤーに救済を認めています。

2024.11.07

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アンプレヤブルとみなした後の暫定球の扱い
解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

プレーヤーがティーショットを右の林の方へ打ってしまい、
紛失の恐れがあるとして暫定球をプレーしました。
2打目地点に行くと、プレーヤーは初めの球を見つけたものの、
ブッシュの中に深く潜った状態でそのままプレーできる状態ではありません。

そこでアンプレヤブルとみなしてラテラル救済や後方線上の救済を試みるのですが、
ブッシュは広範囲にあり、2クラブレングス離れたところでドロップしても打てない状況は変わらず。
また球の後方線上はOBの近くで良い選択肢とは言えません。

そこで最後の残る選択肢は、
ティーに戻って1罰打でストロークと距離の救済を受けることになります。

このようなルーリングがあるとき、
選手に「暫定球でプレーを続けていいですか」と聞かれることがあります。
残念ながら、今のゴルフ規則ではせっかく打った暫定球は放棄しなければなりません。(規則 18.3c(3))
そしてこれは2023年2月にセントアンドリュースで開催されたゴルフ規則会議でも議題に挙がり、かなりの議論になりました。

会議の詳細は2023年4月1日の記事にありますので、ご興味のある方は読んで頂ければと思います。

この会議では、2027年の規則改定に向けて100の変更案を出し合い、最終的に11の候補が残り、
その中の一つが「初めの球がアンプレヤブルとなり、ストロークと距離の救済しか選択肢がない場合、
暫定球をプレーしていればその暫定球でプレーを続けることができるようにすべき」という案でした。

そして多くの議論を重ねたあとの最終投票では、賛成票が反対票を僅かに上回る結果となりました。
賛成とする大きな理由として、元の位置に戻ってプレーし直す必要がなく、プレーのペースが大幅に改善されることです。
また多くのプレーヤーは、既に暫定球を打っているのに、何故その球でプレーを続けられないのかと疑問に思うものです。

それに対する反対意見は、仮にその暫定球がミスショットだった場合、
プレーヤーはストロークと距離の救済の球の結果を既に知っている為、
無理してでも他の選択肢であるラテラル救済や後方線上の救済を選ぶ可能性があるという点です。

このように1つの選択肢の結果が分かってしまっているが故、
他の選択肢と比較して良い方を選べてしまうのは果たしてフェアなのかが論点となりました。

また、もし初めの球をプレーしたくないのであれば、「暫定球」と宣言せずにティーショットをすれば、
初めの球はアウトオブプレーとなり、2球目でプレーを続けることができます。
プレーヤーはいつでもストロークと距離の救済が認められます。
(規則 18.1)

また暫定球というのは、初めの球がOBかペナルティーエリア以外で紛失の恐れがある場合のみ、
暫定的にプレーが認められる球であり、それ以外に暫定球の使用を認めてしまうと、
定義から見直さないといけなくなります。

私自身、この案が出たときは賛成でしたが、色々と議論をしていく中で反対に転じました。
今後はR&AやUSGAが主体となって議論を重ねていくと思いますが、いずれ改定となるか否か、とても興味深いです。

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