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ウミトソラノシルス

2024.11.18

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

動物の蹄による損傷
解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

10月1週目に行われたスタンレーレディスホンダゴルフトーナメントは東名カントリークラブで開催されました。

佐藤心結選手の初優勝で大きな話題になりましたが、
その他にもニュースに取り上げられたのがコースに多数生息する鹿です。

ギャラリー用のロープ内に入り込み静かに観戦する鹿はとても可愛いですが、
何かの拍子に驚かせてしまうと凄い勢いでコース内を走り回り、
パッティンググリーンやフェアウェイ、バンカーなどを傷つけてしまいます。

このような損傷は、パッティンググリーン上では修理できますが(規則13.1)、
他のコース上ではできません。

また、コース上にある単独の動物の足跡や蹄の跡は動物の穴ではありませんので、
プレーヤーは自動的に救済を受けることもできません。(定義:動物の穴)

もし、委員会が鹿の蹄による全ての損傷区域をマーキングすることなく修理地として定め、
プレーヤーに救済を認めたい場合はローカルルールF-13の「動物の蹄による損傷」を採用することができます。

このローカルルールを適用することで、
バンカー内に深くできてしまった鹿の蹄跡やフェアウェイが蹄によって傷ついた区域が
プレーヤーのスタンス、スイング、または球の障害になっている場合、
規則16.1に基づいて救済を受けることができます。

パッティンググリーン上ではそうした損傷は修理することができるため、
委員会は規則16.1に基づいた救済を認めないことを選択することもできます。

つまり、球がパッティンググリーン上にあり蹄跡がプレーの線上にあっても救済はなく、蹄跡の修理に限られます。

東名カントリークラブは鹿による損傷が少なかったため、
このローカルルールは採用しませんでしたが、
10番グリーン付近に現れた鹿を森の中に追っ払っていた私を見たプレーヤーが
バンカーやフェアウェイにある鹿の蹄による損傷から救済は認められるのかを確認されました。

答えはノーでしたが、あまりにも酷い損傷がある場合は競技委員を要請してくださいとお伝えしました。

なぜなら、
委員会は競技中でも修理地としてマーキングされていない区域を修理地と定める権限を持っている
からです。

一般的に、地面の状態がそのコースにとって異常であったり、
特定の区域からプレーすることをプレーヤーに求めることが合理的ではない場合、
その場所を修理地としてマーキングします。(一般的なプレーのためのコースマーキング2F(1))

コースはあるがままにプレーすることがゴルフの原則ですが、
競技期間中ではコースの状況が変わることもあります。

例えば鹿の蹄跡や多くのギャラリーがぬかるんだコースを歩いた跡など、
フェアなプレーをするための妨げになることは
適切なコースマーキングと追加ローカルルールを採用することでプレーヤーに救済を認めています。

2024.11.18

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

コース上の橋
解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

ゴルフコースにある橋はさまざまな理由で建築され、
そのような橋は動かせない障害物として、
救済が認められます。

しかし、救済を受ける際は気をつけなければならないポイントがいくつかありますのでご紹介します。

新南愛知カントリークラブ美浜コースで開催された住友生命Vitalityレディス東海クラシックの
12番ホールは570ヤードのパー5で、
残り144ヤードのラフには縦5メートルで地面から1.5メートルほどの高さの小さな石橋があります。

この石橋は飾り橋でジェネラルエリアに架けられており、
プレーの物理的な障害になっている場合、救済が認められます。

今年はこの橋で2件のルーリングがあったのですが、
球が橋の後ろ側のラフにあり、
スイングの障害になっていたので、
ジェネラルエリアの完全な救済のニヤレストポイントから
ホールに近づかない1クラブレングス以内の救済エリアに球をドロップしました。

しかし、救済後には球とホールの間に橋があり、
プレーの線に介在していましたが、
救済は認められませんのでプレーヤーは橋を越せる高さのクラブでパッティンググリーン前まで刻んでいました。

もし、橋の上に球が止まった場合、完全な救済のニヤレストポイントはその橋の下の地面となります。

つまり、プレーヤーが救済を受けることを選ぶ場合、
垂直距離は無視されます。

これは橋などの高架の部分に球が止まった場合に、
橋の周りに生えている木の枝の上が救済のニヤレストポイントになることを避けるためです。

その真下の地面の地点にまだ橋の一部が障害となっている場合は、
その地点を基点として完全な救済のニヤレストポイントを決定します。
(詳説16.1/4)

ゴルフコースにある橋はペナルティーエリアの中やアウトオブバウンズにあることもあります。

橋がアウトオブバウンズにある場合、
たとえプレーヤーのプレーの障害になっていたとしても救済はありません。

しかし、橋がペナルティーエリアにある場合は、
まず球がどのコースエリアにあるかを確認することが重要です。

球がペナルティーエリアにある場合、
その橋がプレーヤーの障害になっていたとしても無罰の救済を受けることはできません。
(規則17.3)

しかし、球がジェネラルエリアにある場合、
その橋がたとえペナルティーエリアの中にあったとしても
プレーヤーのスタンスやスイングの障害になっていたら救済を受けることができます。
(規則16.1)

このように、コースにある橋は障害物の中でも少しだけ気をつけなければならない建築物です。

ご参考にして頂ければ嬉しいです。

2024.11.07

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

動物の蹄による損傷
解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

10月1週目に行われたスタンレーレディスホンダゴルフトーナメントは東名カントリークラブで開催されました。

佐藤心結選手の初優勝で大きな話題になりましたが、
その他にもニュースに取り上げられたのがコースに多数生息する鹿です。

ギャラリー用のロープ内に入り込み静かに観戦する鹿はとても可愛いですが、
何かの拍子に驚かせてしまうと凄い勢いでコース内を走り回り、
パッティンググリーンやフェアウェイ、バンカーなどを傷つけてしまいます。

このような損傷は、パッティンググリーン上では修理できますが(規則13.1)、
他のコース上ではできません。

また、コース上にある単独の動物の足跡や蹄の跡は動物の穴ではありませんので、
プレーヤーは自動的に救済を受けることもできません。(定義:動物の穴)

もし、委員会が鹿の蹄による全ての損傷区域をマーキングすることなく修理地として定め、
プレーヤーに救済を認めたい場合はローカルルールF-13の「動物の蹄による損傷」を採用することができます。

このローカルルールを適用することで、
バンカー内に深くできてしまった鹿の蹄跡やフェアウェイが蹄によって傷ついた区域が
プレーヤーのスタンス、スイング、または球の障害になっている場合、
規則16.1に基づいて救済を受けることができます。

パッティンググリーン上ではそうした損傷は修理することができるため、
委員会は規則16.1に基づいた救済を認めないことを選択することもできます。

つまり、球がパッティンググリーン上にあり蹄跡がプレーの線上にあっても救済はなく、蹄跡の修理に限られます。

東名カントリークラブは鹿による損傷が少なかったため、
このローカルルールは採用しませんでしたが、
10番グリーン付近に現れた鹿を森の中に追っ払っていた私を見たプレーヤーが
バンカーやフェアウェイにある鹿の蹄による損傷から救済は認められるのかを確認されました。

答えはノーでしたが、あまりにも酷い損傷がある場合は競技委員を要請してくださいとお伝えしました。

なぜなら、
委員会は競技中でも修理地としてマーキングされていない区域を修理地と定める権限を持っている
からです。

一般的に、地面の状態がそのコースにとって異常であったり、
特定の区域からプレーすることをプレーヤーに求めることが合理的ではない場合、
その場所を修理地としてマーキングします。(一般的なプレーのためのコースマーキング2F(1))

コースはあるがままにプレーすることがゴルフの原則ですが、
競技期間中ではコースの状況が変わることもあります。

例えば鹿の蹄跡や多くのギャラリーがぬかるんだコースを歩いた跡など、
フェアなプレーをするための妨げになることは
適切なコースマーキングと追加ローカルルールを採用することでプレーヤーに救済を認めています。

2024.11.07

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

アンプレヤブルとみなした後の暫定球の扱い
解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

プレーヤーがティーショットを右の林の方へ打ってしまい、
紛失の恐れがあるとして暫定球をプレーしました。
2打目地点に行くと、プレーヤーは初めの球を見つけたものの、
ブッシュの中に深く潜った状態でそのままプレーできる状態ではありません。

そこでアンプレヤブルとみなしてラテラル救済や後方線上の救済を試みるのですが、
ブッシュは広範囲にあり、2クラブレングス離れたところでドロップしても打てない状況は変わらず。
また球の後方線上はOBの近くで良い選択肢とは言えません。

そこで最後の残る選択肢は、
ティーに戻って1罰打でストロークと距離の救済を受けることになります。

このようなルーリングがあるとき、
選手に「暫定球でプレーを続けていいですか」と聞かれることがあります。
残念ながら、今のゴルフ規則ではせっかく打った暫定球は放棄しなければなりません。(規則 18.3c(3))
そしてこれは2023年2月にセントアンドリュースで開催されたゴルフ規則会議でも議題に挙がり、かなりの議論になりました。

会議の詳細は2023年4月1日の記事にありますので、ご興味のある方は読んで頂ければと思います。

この会議では、2027年の規則改定に向けて100の変更案を出し合い、最終的に11の候補が残り、
その中の一つが「初めの球がアンプレヤブルとなり、ストロークと距離の救済しか選択肢がない場合、
暫定球をプレーしていればその暫定球でプレーを続けることができるようにすべき」という案でした。

そして多くの議論を重ねたあとの最終投票では、賛成票が反対票を僅かに上回る結果となりました。
賛成とする大きな理由として、元の位置に戻ってプレーし直す必要がなく、プレーのペースが大幅に改善されることです。
また多くのプレーヤーは、既に暫定球を打っているのに、何故その球でプレーを続けられないのかと疑問に思うものです。

それに対する反対意見は、仮にその暫定球がミスショットだった場合、
プレーヤーはストロークと距離の救済の球の結果を既に知っている為、
無理してでも他の選択肢であるラテラル救済や後方線上の救済を選ぶ可能性があるという点です。

このように1つの選択肢の結果が分かってしまっているが故、
他の選択肢と比較して良い方を選べてしまうのは果たしてフェアなのかが論点となりました。

また、もし初めの球をプレーしたくないのであれば、「暫定球」と宣言せずにティーショットをすれば、
初めの球はアウトオブプレーとなり、2球目でプレーを続けることができます。
プレーヤーはいつでもストロークと距離の救済が認められます。
(規則 18.1)

また暫定球というのは、初めの球がOBかペナルティーエリア以外で紛失の恐れがある場合のみ、
暫定的にプレーが認められる球であり、それ以外に暫定球の使用を認めてしまうと、
定義から見直さないといけなくなります。

私自身、この案が出たときは賛成でしたが、色々と議論をしていく中で反対に転じました。
今後はR&AやUSGAが主体となって議論を重ねていくと思いますが、いずれ改定となるか否か、とても興味深いです。

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