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2025.06.30

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

「教えて!Nory」

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

【質問】

ルールが大改訂される前は、
ワッグルの最中にクラブが枝に触れて葉っぱが落ちた場合はライの改善として、罰が課されていましたが、
現在のルールブックを見てもワッグルの最中に枝に触れて葉っぱが落ちた場合の罰が明記されていない様なのですが、
今一度、明確に解説頂けませんでしょうか。

【解説】

ご質問者様、ご質問ありがとうございます。

この内容に関する規則は、2019年のゴルフ規則の大改訂の前後で変更はありません。

私が競技委員になった2012年以降の裁定集(2012~2013、2014~2015、2016~2017)も全て調べて改訂はなかったので、
少なくとも2012年以降の解釈は変わりません。

プレーヤーの球が木の近くにあり、練習スイングやワッグルなどをした結果、木の葉っぱを数枚落としてしまった場合、
葉っぱを数枚落としたからと言って、自動的に規則8.1aの一般の罰が課される訳ではありません。

それは単にそのスイング区域やスタンス区域などの状況を変えたとしても、
プレーヤーのプレーに対して潜在的な利益を生み出していなければ違反とはならないからです。

規則8.1aには、「ストロークに影響を及ぼす状態を改善するプレーヤーの認められない行動」について書かれていますが、
その中にプレーヤーのスイングやスタンス区域に生長している自然物を動かしたり、曲げたり、壊してはならないとあります。

このケースですと、スイング区域に木の枝があり、ワッグルをした際に枝に付いている葉っぱが落ちたとのことですが、
その枝にまだ何十枚もの葉っぱが残っていて状況がほぼ変わらず、
スイング区域を改善したことにならないとのことであれば罰はありません。

このようなルーリングは実際でもありますが、ほとんどのケースで同様に罰なしの裁定となっています。

しかし、もし落とした葉っぱがスイング区域にある唯一の葉っぱであり、
この葉っぱが無くなったことでスイング区域が明らかに改善されたとなれば一般の罰、
つまり2罰打が課されます。

また落とした葉っぱを枝に付け直すことはまず不可能なので、罰は免れず、
プレーヤーはその改善された状況でプレーを続けることになります。

規則8.1c(1)には、「動かした木の枝、草、動かせない障害物を元の位置に戻すことによって改善を無くした場合、罰はない」
とありますが、葉っぱを枝に付け直すことはテープなどを使わない限り、付け直すことはできません。

しかし規則では元の状態に復元しようと、他の物質を使用することはできないとあるのでテープの使用は認められません。

もし枝葉のある木の近くで練習スイングをするときは、
ストロークに影響を及ぼす状況の改善とみなされないように慎重に行動しましょう。

2025.06.30

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

ルーリングに要する時間

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

JLPGA2戦目となるVポイント×SMBCレディスゴルフトーナメントの2ラウンド目で起こったことです。

18番ホール(パー5)のグリーン左側でルーリング要請があり、近くにいたレフェリーが駆けつけました。

プレーヤーはツーオンを狙ったのですが2打目を左に曲げてしまい、グリーンから30ヤード離れた位置に止まりました。

グリーン周りはホスピタリティーテントやスタンドに囲われており、 球とホールの間にはリーダーズボードが介在していました。

プレーヤーはそのリーダーズボードから罰なしで介在の救済を受けられたので、球をあるがままにプレーするか、
臨時の動かせない障害物(TIO)からの介在の救済を受けられるとプレーヤーに説明しました。(ローカルルールひな型 F-23)

ところがプレーヤーではなく、そのキャディーは実際にはホールの左側を狙いたいから、
その狙い目を考えるとレフェリーが示した救済エリアよりも7ヤードほど右側に球をドロップしたいと要求してきました。

このキャディーは外国人で英語しか話せないため、現場で対応したレフェリーの説明が理解できず、
雇った日本人プレーヤーも英語が話せず、どうしてよいか分からずにルーリングが停滞してしまいました。

そこでセカンドオピニオンで私が対応したのですが、キャディーに
「TIOの救済エリアはプレーヤーの狙い目は関係なく、
ホールとリーダーズボードの右端を結んだ線から1クラブレングス離れた箇所が基点となる」
と説明しても納得しません。

キャディーはゴルフ規則を理解しないまま、興奮状態で誤った主張を繰り返すばかりです。

しかしプレーヤーが、キャディーの主張する箇所に球をドロップしてプレーした場合は、
誤所からのプレーで2罰打が付いてしまいます。

そこでプレーヤーに再度、ルールを説明したところ、正しい救済エリアに球をドロップしてプレーを続けました。

結局、このルーリングは18分も要してしまい、18番ホールはティーに2組待ちという大渋滞を招きました。

その結果、プレーの進行が著しく遅れてしまい、予定していた最終組の終了時間は20分超えてしまいました。

プレーヤーやキャディーは、1打が掛かっている中で競技しているのは理解できます。

しかしゴルフ規則を知らないで自身の要求を押し付けるのは誤りです。

ルーリングを要請したのであれば、レフェリーから現場での処置の選択肢や方法を聞いた上で、
次のプレーをどうすべきかを考えて行動に移さなければなりません。

そうでなく、別の場所にドロップを主張してルーリングが長引けば、不当の遅延となります。

プロツアー競技ではプレーの進行が著しく遅れると、
テレビの放送枠、コースのメンテナンス、ラウンド後の練習時間、ギャラリーバスの送迎時間など多くに影響を及ぼします。

それ故、これらの状況も踏まえて行動しなければいけません。

2025.06.30

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

蛭田みな美、「30㎝のパット」を17時間打てず!

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

4月に開催された富士フィルム・スタジオアリス女子オープンの1ラウンド目での出来事です。

この日は一日中、大気が不安定な状態で、午後には会場から離れた北西で雷が鳴り始めました。
大会関係者は安全を最優先に考え、13時57分に雷雨接近のために即時中断を決定しました。

即時中断とは、雷などの切迫した危険がある場合に行う中断で、
レフェリーはエアホンで一回の長い音を一斉に鳴らします。

この合図を聞いたプレーヤーはすぐにプレーを止めなければならず、
もしこのエアホンを聞いたあとで、プレーをすると規則5.7bにより失格となってしまいます。

このとき蛭田選手は最終の18番ホールのグリーン上にいました。

バーディーパットが惜しくもはずれ、
ホールから30cmのところに止まった球をマークして同伴プレーヤーのプレーを待っていた時にエアホンが鳴りました。

もしマークせずにそのままタップインしていれば、
エアホンが鳴る前にそのラウンドは終了となり、翌日の第2ラウンドに備えることができました。

しかし、たとえどんなに短いパットであっても、即時中断の合図が聞こえたあとはプレーを止めなければなりません。
もしプレーヤーがホールアウトしてしまいたいと思って、球をリプレースしてタップインした場合は失格です。

当然、蛭田選手はそのことを理解していたので、すぐに避難しました。

その後、プレーの再開を待ちましたが、その日のうちに天気の回復は見込めず、翌日に持ち越されました。
そして翌朝の7時、中断から実に17時間後、ようやくタップインして第1ラウンドを終えることができました。

この規則5.7bの失格はとても厳しいように思えますが、
これは雷などの危険が及んでいるときにできるだけ速やかに安全な場所に避難させることが目的です。

数か月前にも奈良県の学校のグラウンドでサッカーをしていた学生が落雷で病院に搬送されたニュースがありました。

ゴルフも野外で行われるスポーツであり、いつこのような被害に遭ってもおかしくありません。
大気が不安定なときはプレーヤーのみならず、コースにいる関係者やギャラリーの皆さまも直ぐに安全な場所へ避難してください。

2025.06.11

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テストドロップすること

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

3月に開催されたアクサレディスゴルフトーナメントの3ラウンド目。

9番ホールのセカンド地点右にあるカート道の上に球が止まり、ルーリング要請がありました。

そのカート道の右側は急斜面で、もしカート道から救済をするとなるとその斜面が救済エリアとなり、
かなりのつま先上がりのライから打つことが予想されました。

プレーヤーは、
「この急斜面に球をドロップすることになるが、ドロップした後にそのライから打ちたくないと思ったら、
カート道上の球の止まっていた箇所にリプレースしてプレーしてよいか」
と訊ねました。

レフェリーは
「それはできません。
カート道の上からそのままプレーするのであれば、インプレーの球を拾い上げることも、ドロップを試すこともできません」
と伝えました。

何故なら、プレーヤーがカート道の救済を受ける目的で球を拾い上げた場合、救済を受けなければならず、
拾い上げた後に気が変わって救済のドロップをしないと決めた場合、
もはや規則16.1bに基づいて球を拾い上げる権利が無効となるからです。

プレーヤーは規則9.4のインプレーの球を拾い上げた1罰打を足して、
カート道に止まっていた元の箇所に球をリプレースしてプレーを続けなければなりません。
(詳説 9.4b/4)

これが球を拾い上げるだけにとどまらず、更にドロップしてライの状態を見定めてから、
そのライで打ちたくないと判断してカート道上の元の位置に球をリプレースしてプレーを続けると、
場合によっては失格となる可能性があります。

もしプレーヤーが、インプレーにする意図がなければ、
ドロップした球はインプレーにはならないことを知っていて、ドロップした球がどうなるかを事前にテストした場合、
ゲームの精神から逸脱したことになります。

これは規則1.2aの「プレーヤーの行動基準」に基づいて失格とすることが正当化される行為です。(詳説 14.4/2)

球をドロップするという処置は、救済を受けるときに球がどのようなライに止まるかの不確実性の要素があることを意味しており、
そのライを受け入れなければなりません。

このルーリングでは、プレーヤーは球に触れずに待っていたので何ら罰はありませんでした。

そして球をドロップしたらどのようなライになるかを想像した上で、
カート道に止まっている球をそのままプレーすることを選択しました。

プレーヤーはそこからナイスショットをしてバーディーチャンスに繋げました。

2025.06.11

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外的影響によって木の上になった球が動かされた

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

JLPGAツアー開幕のダイキンオーキッドレディスは沖縄の琉球ゴルフ倶楽部で開催されましたが、
大会3ラウンド目の3番ホールのパー3で起きたルーリングをもとに木の上になった球が動かされた場合の救済と処置を解説します。

あるプレーヤーの193ヤードのティーショットはかなり左に飛んでしまい、
胸ぐらいの高さの小さな木の枝の上に球が止まりました。

試合観戦に来ていたギャラリーの小学生低学年ほどの女の子はプレーヤーの球だと思わず、
手を伸ばしてその球を掴んでしまいました。

周りのギャラリーに注意されたその女の子は動揺して泣いてしまいましたが、
球があった元の箇所を示してくれました。

この場合、女の子は規則上、外的影響になります。

外的影響とはプレーヤーの球、用具、コースに起きることに影響を及ぼす可能性のあるプレーヤーや
そのキャディーを除くすべての人、動物、自然物などを指します。
(定義:外的影響)

プレーヤーの球が外的影響によって動かされた場合、
プレーヤーは罰なしにその球を元の箇所にリプレースしなければなりません。
(規則9.6)

その箇所がわからない場合は推定位置に戻します。

外的影響が動かした事例は他にもカラスが球を咥えていった、
レポーターが誤ってコースにあるプレーヤーの球を蹴飛ばしたなどがあります。

これもすべて外的影響が球を動かしたことになります。

このケースでは、罰なしに木の上に球をリプレースした後にその箇所からあるがままにプレーすることができます。

しかし、プレーヤーはその球をリプレースの処置を省略して、1罰打でアンプレヤブルの球とみなしました。

アンプレヤブルの球の処置は3つの選択肢があります。

ストロークと距離の救済、後方線上の救済、そしてラテラル救済です。(規則19.2)

プレーヤーはラテラル救済を選択し、球が木の上にあった箇所の真下の地面の地点を基点として、
そこからホールに近づかない2クラブレングス以内の救済エリアに球をドロップすることで処置を終了しました。(規則19.2b)

ホールアウト後、プレーヤーは泣きじゃくる女の子にサイン入りのボールをあげて次のホールへ歩いて行ったそうです。

仮にプレーヤーがストロークを行う前に球が外的影響によって動かされていたことを知らずに
球の止まった箇所からストロークを行った場合、罰はありません。
(規則9.2a)

それは、プレーヤーにとって球が動かされたことはストローク前には知らなかった事実であり、
「分かっている、または事実上確実」ではなかったからです。
(規則9.2b、定義:分かっている、または事実上確実)

2025.05.28

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「教えて!Nory」

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

【質問】

質問です。

アマチュアでもプロの試合でもよく見かけますが、パターでパッティンググリーンをトントンしていますよね。

あれはずっとモヤっとしていました。

そこでノーリー様の早わかり集を購入して読んでみると130ページに
プレーヤー自身がつけたボールマーク、スパイクマーク、人が引っ掻いた傷や動物の足跡など記載してありましたが、
ラインを読んだ後、念入りにトントンする人がいます。

それはどの程度良いのでしょうか?

モラルの問題なのか、時間をかけスロープレーになる人もいます。

ぜひ教えてください。

【解説】

ご質問者様、ご質問ありがとうございます。

解答から申しますと、
プレーヤーがパッティンググリーンを元の状態に復元するために合理的な範囲を超える行動、
例えば、ホールへの道を作ることによってパッティンググリーンを改善した場合、
そのプレーヤーは規則8.1aの違反に対して2罰打(一般の罰)を受けます。
(規則13.1c(2))

そもそもパッティンググリーン上の損傷の修理は不当にプレーを遅らせることなく行わなくてはなりません。

不当にプレーを遅らせた場合の最初の違反は1罰打、2回目の違反は2罰打(一般の罰)、
そして3回目の違反は失格になります。
(規則5.6a)

この質問はある試合でプロからも受けたことがあります。

彼女は「合理的な範囲を超える行動」とはどのように判断すれば良いのかとあまり納得していませんでしたが、
残念ながらオフィシャルガイドにはそれ以上のことは書かれていません。

もし現場で私が裁定を求められたら、
あまりに度を超えてパターでパッティンググリーンをトントンしているのであれば1回目はその選手を注意します。

必要であれば、ラウンドが終了した後にパッティンググリーン上で修理して良いものとしてはならないものを指導し、
プレーが不当に遅れないように注意します。

それでも後日、彼女の行動が改善しない場合は、
現場にいるレフェリーの判断に基づいて
プレーヤーに規則8.1aの違反による2罰打か規則5.6aの違反による1罰打を課すことでしょう。

2025.05.28

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ダウンスイングでアイアンのシャフトが折れる

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

米ツアー、3月に開催されたブルーベイLPGAは竹田麗央選手の優勝で嬉しいニュースが日本まで届きました。

大会初日の4番ホール、パー3で馬場咲希選手に珍しいハプニングが起こりました。

彼女はティーショットのためのダウンスイングに入ったところ、
なんと5番アイアンのシャフトが真っ二つに折れてしまいました。

折れたクラブによって球は動かされることなく、馬場選手はスイングを止めて唖然としていました。

要請された競技委員から1打目はストロークとしてカウントしないと裁定され、
1番手大きなクラブに持ち替えて打ち直したそうです。

定義のストロークとは「球を打つために行われるクラブの前方への動き」です。

つまり、ダウンスイングに入った時点でストロークは開始され、
その時点でクラブヘッドがシャフトから外れようが、
シャフトが真っ二つに折れようが、球を打ったかどうかに関わらず、
スイングを続けた場合はストロークとしてカウントされます。

しかし、馬場選手の裁定はノーカウントだったので、ダウンスイングの間に球を打たないことを決めて、
そのクラブヘッドを意図的に止めようとして打つことを避けたと考えられます。

この場合はストロークとしてカウントされません。(定義:ストローク)

オフィシャルガイドの詳説には、ストロークとしてカウントされない例として、
「ダウンスイングの途中でプレーヤーのクラブヘッドがシャフトから外れた。
そのプレーヤーは球に届く前にダウンスイングを止めたが、
そのクラブヘッドが落下し、その球に当たって動かした。」とあります。(詳説:ストローク/1)

興味深いことに、もし、このようなことがホールのプレー中に起きた場合、
ストロークとしてカウントされないものの、
規則9.4に基づき、インプレーの球を動かしたことによる1罰打は免れません。

そして、その動かされた球を元の位置にリプレースしなければなりません。

しかし、馬場選手はホールをスタートするためのティーイングエリアでの出来事でしたので、
例えクラブから外れたヘッドが球に当たったとしても罰はありません。

これは、ルールザワールドの振り返りで3月15日のティーイングエリアにてご参照ください。

2025.05.15

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くい込んだ球の判断と処置

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

JLPGAツアー開幕のダイキンオーキッドレディスは沖縄の琉球ゴルフ倶楽部で開催されましたが、
そこで起きたルーリングをもとに「くい込んだ球の判断と処置」を解説します。

琉球ゴルフ倶楽部の芝はコーライでラフはティフトンが混じっていることにより、
ラフに打ち込んでしまうと球全体が沈んでしまい、とても難しいショットになります。

そして球全体がラフに沈むと、プレーヤーは地面にくい込んでいるのではないかと確認のためルーリングを呼ぶことが多々あります。

実際、トーナメント初日の1番ホール左ラフでくい込んだ球かの確認でルーリングに呼ばれました。
状況を調べてみると、その球は地表面よりも下にはなかったため、救済は認められませんでした。

このルーリングが今年JLPGAツアー最初のルーリングで、立ち会った私はファーストペンギンになりました。

ファーストペンギンとは
ペンギンの群れの中から天敵がいるかもしれない海に魚を求めて最初に飛び込む勇敢なペンギンなのですが、
それに比喩して委員会はこれから始まる長いシーズンの最初にルーリングに立ち会った競技委員にその名称を与えます。

委員会の慣例でファーストペンギンはご飯をご馳走してもらえます。

それはさておき、そもそも
地面にくい込んでいる球で罰なしの救済が認められるのはジェネラルエリアにある球、
例えばラフやフェアウェイ、カラーにある場合のみです。

そして、プレーヤーの直前のストロークの結果作られた自らのピッチマークの中にあり、
その球の一部が地表面以下にある場合です。
(規則16.3a(1)(2))

稀に、フェアウェイに転がった球が別のプレーヤーの作ったピッチマークに入ってしまうことがあります。

そのような場合は罰なしの救済はありません。

そのため、後からプレーするプレーヤーへの配慮とコースの保護を目的として
フェアウェイなどでも自ら作ったピッチマークはストロークした後に修復することをお勧めします。

プレーヤーは球が地表面を割っているのか確認するのに、
球をマークして拾い上げることができます。
(規則16.4)

このときに拾い上げた球を拭くことはできませんので注意が必要です。(規則16.4)

球を拾い上げた後、ピッチマークが地表面以下にあるのか目視で判断できない場合、
ライを改善しないように気を付けながら、手で地面に触れて確認することがあります。

この時点で救済が認められないと判断すれば、その球を元の箇所にリプレースします。

救済が認められる場合は、球が地面にくい込んでいる直後の箇所を基点として、
ホールに近づかない、1クラブレングスのジェネラルエリアに球をドロップすることによって
救済を受けることができます。

このときに球を拭いたり取り替えたりすることもできます。(規則14.3a、14.1c)

2023年から新たに追加された詳説に球の直後の箇所がジェネラルエリアではない場合の救済があります。(詳説16.3b/1)

このような状況は、球がジェネラルエリアにくい込んでおり、
球の直後の箇所がバンカー、ペナルティーエリア、またはアウトオブバウンズの場合があります。

このような状況ではホールに近づかないジェネラルエリアの箇所を見つけるために
左右や後ろに幾らかの距離を取ることが必要となるかもしれません。

くい込んだ球の処置を覚えていただけるとご自身のプレーに役立つことがあるかもしれません。

2025.05.15

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笠りつ子選手のRPAの処置について

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

VポイントxSMBCレディスの2ndラウンド、13番ホールで起きたルーリングが大きなニュースになりました。

13番ホールは大会を通して難易度の高い390ヤードのパー4で、
ホールの左側はグリーンの奥まで続くレッドペナルティーエリアでした。

笠選手のティーショットはそのレッドペナルティーエリアに入り、ラテラル救済の処置を自ら行いました。

2クラブレングスの救済エリアの芝地はペナルティーエリアの方に傾斜していたため、
ドロップした球はペナルティーエリアを定める線の近くまで転がりましたが、
救済エリア内に止まったため、正しくインプレーになりました。

ところが、彼女は意図するスタンス区域がペナルティーエリアにかかったため、
再ドロップが必要と勘違いし、その球を拾い上げてしまいました。

2回目のドロップ後も同様に球を拾い上げ、2回目にドロップしたときにその球が最初に地面に触れた箇所に球をプレースしました。

そこからアドレスをしたところ、意図するスタンス区域がまたペナルティーエリアにかかったため、競技委員を要請しました。

立ち会った競技委員は選手から
「ラテラル救済の処置のためドロップを2回して球が止まらなかったので、2回目に球をドロップしたところにプレースしたのですが、
スタンスがレッドペナルティーエリアにかかります。これは大丈夫なのでしょうか?」
と質問されたため、
「意図するスタンス区域がペナルティーエリアにかかっていても球が救済エリア内にあればインプレーです」
と答えてルーリングは終了しました。

そして、彼女は誤った箇所にプレースした球をプレーしたことで、後に誤所からのプレーの一般の罰が課されました。(規則14.7a)

もし、競技委員が要請された現場でその誤りに気づくことができたら、ストロークを行う前でしたので、
1回目のドロップで球が止まった箇所にリプレースしてその誤りを訂正することができました。(規則14.5)

そうすることで、誤所からのプレーの一般の罰は免れることができますが、
例えその処置をしたとしても、インプレーの球を動かした規則9.4の違反による1罰打を免れることはできません。

そのため、レッドペナルティーエリアの1罰打を含む合計2罰打の4打目としてプレーすることができました。

しかし、実際は、3rdラウンドで最終組が終盤のホールに入った頃、委員会は大会関係者より前日の笠選手の誤った処置を知りました。

彼女に確認したところ、球をドロップした後はペナルティーエリアにスタンスがかかってはいけないと思い込んでおり、
その誤りに気づきました。

彼女は1回目のドロップで正しくインプレーになった球を拾い上げ、
その球が止まった箇所にリプレースせずに誤所からプレーしたので、一般の罰を受けます。(規則9.4、14.7)

競技終了前に発覚した事実だったので、委員会はそのホールのスコアに含めるべきであった罰打を加え、
2ndラウンドの13番ホールのスコアを「6」から「8」に修正しました。(規則3.3b(3))

この件に関して非常に残念なポイントが3つあります。

1つは笠選手自身が要請前に行った処置の誤りに気付き、立ち会った競技委員に伝えてほしかったことです。

2つ目は立ち会った競技委員も選手が行った処置を一から具体的に聞いてほしかったことです。

3つ目はJLPGAから発表された「視聴者による指摘で発覚したルール違反」という内容です。

2021年以降、JLPGAは一般視聴者によるルール違反の指摘は受け付けない方針にしていますが、
大会関係者がモニターを見て気づいた違反を「視聴者」という誤解を招く言葉で表現したことで訂正が入り、
問題を更に大きくしてしまいました。

また、この件で「選手は失格ではないか」という質問を多く受けましたが、これは大きな誤りです。

選手は委員会から指摘されるまで自身の誤りに気づいておらず、
今回のように競技終了前に発覚した場合は
そのホールのスコアに含めるべきであった罰打を加えることでホールのスコアを修正します。

もし、競技終了後に発覚した場合は、
競技が終了する前に選手は罰を受けていたことを知らなかったため、
「6」で提出したスコアは訂正してはなりません。
(規則20.2e(2))

つまり、13番ホールのスコアは6のままで罰打を加えることなく、また失格にもなりません。

アマチュアの模範であるプロゴルファーはゴルフ規則を知っておくべきですが、プロも人間ですので勘違いや失敗もあります。

当然のことながら心無いコメントに傷付きます。
どうか温かい目でプレーヤーを見守って頂けますと幸いです。

2025.05.15

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

「教えて!Nory」

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

【質問】

質問です。OBの球をOB区域と知らずに打ってしまった場合の処置です。

Aさんはティーショットを打ちましたが、OBラインも見える場所に打ち込んだ為、暫定球を打ちました。

セカンド地点に行ってみるとコース脇に1打目の球が見えたので、
その球を打ちましたが、同伴プレーヤーから打った地点はOB区域との指摘を受けました。

よく見るとその境界線を越えていました。この場合の処置を教えて下さい。

【解説】

ご質問者様、ご質問有難うございます。

本来、初めの球をOBに打ってしまった場合、暫定球がインプレ―の球となり、
その球でプレーを続けなければなりません。

それを誤ってOB区域にある球をプレーしたことにより誤球として規則6.3cの違反で2罰打を受けます。

プレーヤーはセカンド地点にあるインプレーとなった暫定球でプレーを続けることになりますが、次が6打目となります。

打数の数え方としては、初めの球をティーショットして1打、
それがOBに行ったのでストロークと距離の罰で1罰打を足します。

それなので暫定球としてプレーしたティーショットは3打目となります。

本来ならセカンド地点から4打目となりますが、誤球の2罰打を加えて6打目となります。

ここで間違えやすいのは、誤球でプレーしたストロークをカウントしてしまうことですが、
そのストロークはカウントしません。

ご参考になれば幸いです。

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