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2025.03.07

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

強風のための中断

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

今年1月に開催されたPGAツアーのファーマーズインシュランスオープン2日目は、
強風でパッティンググリーン上の球が止まらないために午後2:05に競技が中断されました。

委員会は中断中にパッティンググリーンを散水した後、午後3:30に再開しましたが、
そのラウンドは日没サスペンデットになりました。

大会はカリフォルニア州サンディエゴ市にあるトーリーパインズで開催され、
予選ラウンドは北コース18ホールと南コース18ホールが使用されていました。

この風はサンタアナの風が影響しており、常時6m/s(15mph)、最大13m/s(30mph)の突風が吹き荒れていました。

本来、中断中にパッティンググリーン上の球を止まりやすくするために散水して、
プレーのコンディションを人為的に変えることはほとんどありません。

しかし強風の中、競技を続けるための有効な手段として委員会は実行したと思われます。

風の影響で競技を中断する具体的な基準はないもののガイダンス(推奨)はあります。

そこには、「パッティンググリーン上で風によって、
例えば3つ以上の球が動かされたということはプレーを中断する理由になる」とあります。
(競技中6E(2)d)

しかし2024年のAIG Women’s Openがセント・アンドリュースで行われた際、
強風で3つ以上のグリーンで3つ以上の球が動いていましたが、競技を中断することなくプレーは続けられました。

規則書のガイダンスを定めているR&Aが、そのガイダンスを無視して強風での競技を強行するのは矛盾がありますが、
そこには大会を開催する諸事情や難しさがあります。

また強行できたのは、2019年に改訂されたパッティンググリーン上の規則で、
プレーヤーが罰を受けることが少なくなり、荒天の中でもプレーを続けやすくなったことも挙げられます。

例えば、プレーヤーがパッティンググリーン上で一度マークして拾い上げ、
リプレースした球が風の影響で動いたとしても、無罰で元の箇所にリプレースになります。

それでも風で動いた球を元の箇所かその近くにリプレースしようとしても止まらない場合は、競技を止めるべきです。

例えば、リプレースした球が元の箇所に2度試しても止まらない場合、ホールに近づかない、
その箇所から最も近いパッティンググリーン上かジェネラルエリアの箇所に球をプレースするのですが(規則14.2e)、
この処置で1メートルも離れたところが救済箇所であったり、
カラーにしか球が止まらない場合などはフェアなプレーに問題があるといえますので、中断を考えるべきです。

JLPGAの競技で風によって中断したケースは非常に稀です。

過去には、2009年のフジサンケイレディスの最終日のあるホールで、
ホールから1mに止まっていた球が強風で20m転がってカラーまで行ったことがありました。

この時は強風が収まる見込みがないという理由で中止となりました。

近年の異常気象による猛暑や強風、大雨など荒天の中競技をする場合、
どのように運営するのか難しい問題になりそうです。

2025.03.07

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組でプレーすること

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

数年前のクオリファイイングトーナメントで起こった出来事です。

2ラウンド目のスタート直前に、ツーサムの組のプレーヤーAが、
1ラウンド目での自身の処置について疑問があったので競技委員に質問しました。

事情を聞いたところ、Aは誤球をプレーして正しく処置をしなかったことで、その場で失格となってしまいました。

急遽、2ラウンドに進むことができなくなり、同伴プレーヤーだったはずのBは一人でプレーすることになりました。

するとスコアカードのマーカー役がいないので、事務局のスタッフに帯同してもらうことになりました。

しかしこの人は集計所を担当するため、後半のハーフは付いていけません。

そこで委員会は、ハーフターンでその前の組のスリーサムから一人移ってもらうようにお願いしました。

前の組のプレーヤーに事情を説明し、快諾してもらうと、
後半は両組ともツーサムとなり、プレーヤー同士でマーカーとなることができました。

このようにラウンドの途中で組を変えたケースは初めてでした。

本来であれば、プレーヤーはラウンド中に委員会が設定した組を変えることはできません。(規則 5.4b)

もしプレーヤーが正当な理由なく勝手にペアリングの組を変えてプレーした場合、
委員会がその変更を承認する場合を除き、規則5.4の違反で失格となります。

また委員会も特別な事情なく、ラウンド中に組を変えることはしません。

しかしこの時はスタート直前に失格者が出てしまい、
競技運営やプレーのペースなどの諸事情を鑑みてハーフで組を変えた稀なケースでした。

2025.02.24

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ローカルルールひな型G-9の変更

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

2024年8月、コロラド州で開催されたBMWチャンピオンシップの最終日。

マット・フィッツパトリック選手は使用しているドライバーのフェースに僅かな亀裂があることに気づき、
8番ティーでルーリングを要請しました。

プレーヤーは他のドライバーに取り替えることができると期待したのですが、
立ち会ったレフェリーは「確かに亀裂は確認できるが、取り替えが認められるほど著しい損傷ではない」と裁定し、
このドライバーで残りのホールでプレーを続けるか、修理のみが認められると伝えました。

さすがに修理はできないので、亀裂の入ったドライバーで打つか、
スプーンなどのクラブで代用するしかなくなったプレーヤーは、抗議の意味も込めてドライバーでティーショットをしました。

案の定、打った球は本来の球筋とは程遠く、飛距離も全く出ていませんでした。

そしてレフェリーに、「こんなティーショットしか打てないクラブのどこが認められないのだ」と抗議したのでした。

そんな事例があり、R&AとUSGAは2025年1月1日にゴルフ規則に新たな詳説を追加しました。

これは従来のローカルルールひな型G-9の「壊れた、または著しく損傷したクラブの取り替え」に置き替わり内容を緩和したもので、
これまで取り替えが認められなかったクラブヘッドやクラブフェースの目に見える亀裂は、
著しい損傷として取り替えを認めることにしました。

他にも、クラブヘッド内部のカタカタ音やシャフトに凹みや捻じれがある場合も、
取り替えを認めることになりました。

因みに取り替えるクラブは、損傷してプレーから除外するものと類似のクラブでなければなりません。

つまりドライバーが損傷して取り替えたい場合は、別のドライバーでなければならないということです。

2025.02.10

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7罰打を自己申告しながらも3位フィニッシュ

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

2024年12月にオーストラリアで開催されたビクトリアンPGA選手権で、
アンソニー・クエイル選手が1ラウンド目に7罰打を課されてしまいました。

この大会では、13番ホールの青線で囲まれた一部でプリファードライの救済を認める追加ローカルルールが出ていたのですが、
クエイルは18ホール全てにプリファードライの救済ができると思い、
その誤りを15番ホールで同伴プレーヤーに指摘されるまで気づきませんでした。

インスタートだったクエイルは、その場でレフェリーを要請し、
そこまで4回誤ってプリファードライの処置をしてしまったと申告。

そのうち、1回は球のあった元の箇所にリプレースしてプレーをし、
3回は球のあった箇所から少し離れた位置にプレースしてプレーをしました。

これによりプリファードライの救済が認められていないフェアウェイで球を拾い上げたので、
1罰打を受けます。
(規則9.4b)

それを元の位置にリプレースしてプレーすればその1罰打で済みますが、
違う場所にプレースしてプレーした場合は規則9.4に違反して誤所からのプレーで2罰打となります。

その結果、インプレ―の球を拾い上げて元の箇所にリプレースした1罰打と
3度違う箇所にプレースした6罰打で合計7罰打を課しました。

そんな厳しいスタートだったにも関わらず、クエイル選手はめげずにプレーを続け、大会を3位でフィニッシュしました。

しかしこの違反がなければ優勝できたと思うとやはり大きな痛手でした。

クエイルは、「追加ローカルルールをちゃんと読まなかった自分に責任がある」とコメントしましたが、
プリファードライが出たときは18ホール全てとは限らず、
数ホール限定の場合もあれば、1ホールのごく一部分のときもあるので、
しっかり読んでからスタートしましょう。

2025.02.10

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「教えて!Nory」

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

【質問】

昨年の7月に知り合いのコンペに参加した時のことです。

その日は朝から雨が強かったり、弱かったりで、コースの状態が悪く、
水溜まりが出来ていたホールもありました。

あるホールで、グリーン近くのバンカーに入れてしまったところ、
ボールは水溜まりに入っていました。

私はルールがわからず、あるがままでプレーして脱出に手間取り、
このホールはパー4で10打を叩いてしまいました。

そこで質問ですが、バンカー内の水溜まりに入ってしまった場合は、
救済とかあるのでしょうか?

【解説】

ご質問者様、ご質問有難うございました。

水溜まりは一時的な水であり、異常なコース状態のひとつなので罰なしで救済が受けられます。

この場合、そのバンカー内の水溜まりのない箇所に球をドロップすればよいのですが、
手順としては、まずドロップする救済エリアを定めるために、完全な救済のニヤレストポイントを決めます。

その基点は、バンカー内で球と意図するスタンスとスイングの3つすべてが水溜まりから避けられ、
且つ、元の球よりホールに近づかない箇所
です。

その基点からバンカー内でホールに近づかないワンクラブレングス以内が救済エリアとなります。

拾い上げた球はタオルなどで拭いてから救済エリアにドロップすることができますし、
別の球をドロップすることもできます。

今後に活用して頂ければ幸いです。

2025.01.26

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「教えて!Nory」

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

【質問】

クラブ競技に出場して9H終わった後に、肩がガチガチだったので、
ハンディマッサージガンでマッサージしようとしていたら、
同伴競技者に「それは失格になるよ」と指摘されました。

えっそうなの?と思いつつ、その方に聞いたら、
パター練習はいいんだけど、ショットやアプローチの練習はダメで、
素振り棒とかの練習器具を使うのもダメとのこと。

なぜ、マッサージガンもダメなのか、その理由がいまいちわからないので教えてノーリーズ!

よろしくお願いします。

【解説】

ご質問者様、ご質問ありがとうございます。

一般的にラウンド中のハンディマッサージガンの使用は肩こりやどこかの筋肉の痛みなど、
病状を緩和するための理由であれば認められます。
(規則4.3b)

ところが、マッサージガンを使用することによって
飛距離が10ヤード伸びるとか、スイングの矯正になるなど
プレーヤーが不当な利益を得るようなことが理由の場合は
規則4.3の違反となり認められません。

最初の違反の罰は2罰打(一般の罰)で2回目の違反の罰は失格です。

また、ラウンド中にスイング補助器具や素振り棒を振って
スイングの確認やグリップの確認などを行うと違反になります。

しかし、このようなものを一般的なストレッチのために使用すること、
例えば背中を伸ばす、前屈をするなどは認められます。

このように、用具の使用は理由や使い方によって認められたり違反になったりするので、少し複雑です。

これとは別に「パター練習はいいんだけど、ショットやアプローチの練習はダメ」
という内容についてですが、これは規則4.3の用具ではなく、
規則5.5bの「ホール終了後の練習ストロークの制限」に関係しています。

ここにはホールを終えた後に、プレーヤーは練習ストロークを行ってはならないと記載されています。

しかし、これには例外があり、指定練習グリーンでパッティングやチッピングの練習は認められています。

ただし、バンカーショットや打撃練習をすると一般の罰(2罰打)が課されます。

ご参考にしていただけますと幸いです。

2025.01.26

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正しい処置に対する疑問

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

昨年の1次プロテストE地区のエリエールゴルフクラブ松山での出来事です。

あるプレーヤーは6番ホールのパー4でセカンドショットをラフから打ったところ、
OBの方向に行ったので暫定球をプレーしました。
本来ならば球を救済エリアにドロップして打たなければならないところプレースして打ちました。

そして、パッティンググリーンに到着したときに同伴プレーヤーに
「暫定球をプレーする場合、球はプレースではなくドロップしてからプレーしないといけないんだよ」
と指摘されたため、そのプレーヤーは誤りを訂正しなければならないと勘違いし、
セカンド地点へ戻って、別の球をドロップして打ち直しをしました。

そして、再びグリーン近くに到着したときにようやくルーリングを要請しました。

そのプレーヤーは、
「プレースして打ってきた元の球を拾い上げても良いか」
と質問をしたところ、現場に現れたレフェリーは
「プレースして打ってきた球はもはやインプレーの球ではないので拾い上げても良い」と回答しました。

このケースでは、元の球がインバウンズにあれば罰なしにその球でプレーを続けることができました。
しかし、元の球はOBだったので暫定球がインプレーの球となります。(規則18.3)

ところが、プレーヤーがその球を救済エリアにドロップせずにプレースしてストロークを行ったことで、
規則14.3の処置違反で一般の罰(2罰打)が課されます。

この処置に重大な違反はないため、そのままホールアウトすれば良かったのですが、
更に打ち直しをしてしまったことで、改めてドロップした球がインプレーの球となり、
プレースして打った球はアウトオブプレーとなります。

つまりストロークと距離の1罰打を加えて、
その球でホールアウトしなければいけないことになりました。

その球はパッティンググリーン手前のラフに止まり、
そこからアプローチして1パットでホールアウトしたため、
スコアは10となってしまいました。

規則では、
プレーヤーが適用しない手続きで球をプレースした場合でも
インプレーの球となります。
(規則6.3b(2))

また、その救済処置の誤りを罰なしに訂正することができるのは、
その球をプレーする前のみです。
(規則14.5)

もしプレーしてしまった場合は、2罰打を加えて誤ってインプレーにした球でホールアウトしなくてはなりません。

ラウンド中、正しい処置への疑問が生じた場合、すぐにレフェリーを呼ぶことをお勧めします。

1ストロークで予選を通過したり落ちたりするゴルフ競技では自身のプレーを守る術として、
暫定球の正しい処置は覚えておきましょう。

2025.01.26

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「教えて!Nory」

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

 

毎週楽しく拝聴させて頂いています。

昨年の9月に行われたマイナビネクストヒロインゴルフツアー第9戦マイナビカップでのことですが、
徳田 葵選手が残念ながらライの改善でペナルティーを受け優勝を逃しました。

ライの改善とみなされるのはボールからどのくらいの距離内なのでしょうか?

Youtubeの映像も見られます。

【解説】

ご質問ありがとうございます。

この件はYouTubeの映像やALBAさんのオンライン記事で確認することができました。

回答から申しますと、
プレーヤーが球の「すぐ近く」の地面を変えて
そのストロークに対して潜在的な利益を得たときにライの改善とみなされます。

規則は具体的な球からの距離は明記していません。

徳田選手の状況を説明しますと、18番ホール、522ヤードのパー5のセカンド地点。
選手の球はフェアウェイに止まり、そのすぐ後ろにはディボット跡に戻されてある切り芝が少し浮いている状態でした。

選手はその切り芝を足で踏み、地面に押し付けてからストロークを行いました。
委員会はその行為をライの改善とみなし、トーナメントリーダーとしてクラブハウスで待っていた彼女に2罰打課しました。

そもそも球のライとは、
球が止まっている箇所と、球に触れているか、球のすぐ近くにある、
成長または付着している自然物、動かせない障害物、不可分な物、境界物のことです。
(定義:ライ)

それに加え、改善とは
プレーヤーがストロークに対して潜在的な利益を得るためにそのストロークに影響を及ぼす状態、
またはプレーに影響を及ぼす他の物理的な状態の1つまたは複数を変えることです。
(定義:改善)

徳田選手の行った行為は、球のすぐ近くにあったすでに所定の位置に戻されている切り芝を足で踏み、
押し付けることによって地面を変え、平らにしたことがストロークに対して潜在的な利益を得たとみなされました。(規則8.1a(3))

このケースではたとえ彼女がストローク前に違反に気付き、
切り芝を元の状態に復元したとしても罰を免れることはできません。(規則8.1c)

本人はパッティンググリーンの損傷を修理するような感覚で地面を踏んだとコメントしていました。

徳田選手の言う通り、
パッティンググリーンとティーイングエリアの地面の修理や改善は認められていますが、
他のコースエリアは一部例外があるものの、
基本的に改善した場合は一般の罰が課されます。
(規則6.2b(3)、13.1c、8.1)

競技に参加するプレーヤーのほとんどは、徳田選手のように痛い目にあって初めて規則を学びます。

そうならないようにこちらのコーナーを通してお役に立てたら嬉しいです。

2025.01.06

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インプレーの球に触れる
解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

9月に開催された山陽新聞レディースカップの1ラウンド目の出来事です。

8番グリーンでルーリング要請がありました。

プレーヤーはパッティングをしようとボールマーカーの前に球をリプレースし、
ボールマーカーを拾い上げました。

それからストロークしようと思いきや、球の向きが狙っている方向より僅かにずれていることが気になり、
その向きを調整しようと無意識に球に触れてしまったのです。

プレーヤーは、「球を動かしてはいないが、その位置で球に触れて少し向きを変えた」と言いました。

本来であれば、ボールマーカーで球の位置をマークしたままでなければ
グリーン上の球を拾い上げたり触れたりしてはいけません。

それはたとえ、球の位置を変えずに故意に触れるだけでも
規則9.4の違反で1罰打となります。

プレーヤーは、「故意ではなく、無意識です」と説明しましたが、
たとえ無意識であっても手で球に触れる行為は故意とみなされてしまいます。

その結果、1罰打を加えた上で、
同じ位置からプレーを続けました。

このようなルーリングはとても稀ですが、
年に1~2度あります。

昨年は富士通レディースの9番グリーンでは、
プレーヤーがマークせずに球を拾い上げてしまうことがありました。

この場合も1罰打で、
球を元の箇所にリプレースしました。

あとでそのプレーヤーに事情を聞いてみたところ、
「グリーンに上がったときに、3打目のサンドウェッジの距離が想定していた距離より4ヤードショートしていたので、
何でだろうと考え込んでいたら、
マークするのを忘れて球を拾い上げてしまった」と言ってました。

プレーヤーたちは、常に多くのことを考え、
判断や決定、ときには反省をしながらプレーしています。

そんな中、
ふとしたことでいつものルーティーンと違う行動を取ってしまうのかもしれません。

それで罰を課されるのは勿体ないので、
インプレーの球に触れる時は、慎重に行いましょう。

2024.12.17

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

ラウンド中にドライバーヘッドが壊れる

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

ソニー日本女子プロゴルフ選手権の2日目に14番ホールでルーリングがありました。

プレーヤーは前のホールでティーショットをした際に、
ドライバーヘッドの上面部分であるクラウンの接着が剥がれて割れてしまったとのことでした。

そのドライバーではもう打てる状況ではなかったので、
どうしたら良いかの質問でした。

規則4.1a(2)には、「クラブがラウンド中に損傷した場合、
クラブを乱暴に扱った場合を除き、そのクラブを修理するか、他のクラブに取り替えることができる」とあります。

つまり、プレー中に怒りに任せてクラブを地面に叩きつけたり投げたりする以外で、
クラブが壊れてしまった場合、他のクラブに取り替えることができます。

しかしJLPGAを含む主だったゴルフ団体は、ローカルルールで
「壊れた、または著しく損傷したクラブの取り替え」を採用している為、
軽度な損傷では取り替えができない制限を設けています。
(ローカルルールひな型G-9)

例えば、シャフトが折れたり、曲がってしまったら取り替えは認められますが、
単にシャフトがへこんでいるだけでは認められません。

クラブフェースは、目に見えて陥没などで変形していれば取り替えられますが、
細い亀裂が入っているだけでは認められません。

今回のケースでは、プレーヤーは通常のプレーでクラブが壊れ、
しかも著しく損傷しているので、クラブの取り替えを認めました。

そこで担当のクラブメーカーさんは、クラブカーからドライバーヘッドを持ってきて、
プレーヤーが18番ティーに来たところで、シャフトから壊れたヘッドを取り外し、
新たなヘッドを取り付けました。

これは同じシャフトを使っているので、修理と思われがちですが、
修理とはラウンドをスタートした時点でそのクラブを構成していたグリップ、シャフト、
クラブヘッドで元の状態に修復することを意味します。

今回のようにクラブヘッドを交換した場合は、
修理の範囲を越えているので取り替えとなります。

このクラブの修理と取り替えの違いを明確にする理由は、
クラブが著しく損傷してなくても修理は可能ですが、取り替えはできないという点です。

このケースのもう一つの注意点は、新たに取り替えたドライバーヘッドについてです。
14番ホールでルーリング要請があったとき、
メーカーさんはドライバーヘッドを新たに取り付けたいと言いました。

それについては問題ないのですが、
レフェリーはその時点で取り付けたいドライバーヘッドをプレーヤーやメーカーさんらが
一緒に持ち運んでいないことを確認しました。

これは規則4.1b(4)の「クラブを追加する、または取り替える場合の制限」にありますが、
ラウンド中にクラブが壊れるかもしれないと心配して、ドライバーヘッドなどの部品を持ち運び、
その部品でクラブを組み立てることを禁じています。

つまりプレーヤーが事前にキャディーバッグに入れてプレーしたり、
クラブメーカーさんがいつでも交換できるようにとプレーを観戦しながら
持ち歩いた部品でクラブを取り替えると違反となります。

何故なら、これを認めてしまうと規則4.1b(1)の「14本のクラブの制限」の効力がなくなってしまうからです。

クラブとは、1本のシャフトにクラブヘッドがついて初めて1本と数えられます。

つまりシャフトだけとかヘッドだけを部品として持ち運んでも
14本のクラブの制限の違反に引っかからないのです。

今回のように、部品として持ち運び、いざ壊れたという時に直ぐに1本のクラブに組み立てて使えてしまうと、
15本のクラブを持っているのと変わらないので、それを制限する為にこの規則があります。

この違反は組み立てて1本のクラブとして追加、
或いは取り替えた時点で一般の罰(2罰打)で2回目の違反は失格となります。

そして違反に気づいたら、次のストロークをプレーする前にプレーから除外する手続きをしなければ、
今度は規則4.1c(1)の失格となります。

このようにクラブの損傷や取り替えには、どのようにして壊れたのか、
著しい損傷なのか、修理なのか取り替えか、取り替える部品は持ち運ばれていないか等、
正しく裁定するまで1つ1つ細かな確認が必要です。

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