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ウミトソラノシルス

2025.04.17

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

誤球されたために球が紛失

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

2020年日本女子プロゴルフ選手権の1ラウンド目に起こった出来事です。

6番ホール(パー5)で、プレーヤーAのティーショットは左ラフへ飛んでいきました。

同伴プレーヤーBとCがセカンドショットをしている中、Aは左ラフを捜索していたのですが、
あるはずの球は見つからず3分の捜索時間が経ってしまったため、
紛失球となりティーに打ちに戻っていきました。

改めてティーショットをしてセカンド地点に戻っている間、BとCは3打目地点へ歩いている途中で
ドライクリークの手前のラフで球を見つけました。

それは球を捜索していた地点から約20ヤード前だったのですが、確認してみるとそれはBの球でした。

つまりBはAの球を自分の球だと思い込み誤球をしていたのです。
ここでルーリングとなりました。

本来であれば、誤球されたプレーヤーは罰なしに、
打たれた箇所に球をリプレースしてプレーを続ければよいのですが、
このケースではAはBによって誤球されていたことを知らずに球の捜索をしました。
(規則 6.3c(4))

当然、球は打たれてしまっているので、探しても見つかるはずもないのですが、
規則では3分の捜索時間が終わったときに、
Bによって誤球されていたことが「分かっている、または事実上確実」でなければ、
Aの元の球は紛失となってしまいます。
(定義:分かっている、または事実上確実/3)

Aはストロークと距離の罰のもと、ティーに打ちに戻った球でプレーを続けなければならず、
セカンド地点から4打目をプレーしていきました。

一方、Bは誤球の2罰打を受け、セカンド地点にあった自分の球でプレーを続けました。

Bは自身の球の捜索はしていないので紛失とはならず、セカンド地点から4打目をプレーしていきました。

このケースはAにとって非常に不運でしたが、
この教訓として、他のプレーヤーのショットの行方もちゃんと見て、自分の球と同じような場所に止まったときは注意する。
または自分だけ色の違うカラーボールを使うなどしてトラブルを回避することが考えられます。

2025.04.17

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

「教えて!Nory」

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

【質問】

タケさん、ダブルノーリー先生、おはようございます。

TikTokで、コースの大きな池かクリークの横に留まっている巨大なワニの頭の上にボールが乗っている動画が流れてきました。
本当にプレーヤーの打球なのかも確認できないし、そもそも近づけないと思います。

こういう場合、プレーはどのように続けるのでしょうか?

日本にワニはいませんが、国内ならキツネがボールを咥えて逃げて行く動画を見たこともあります。
仮にキツネやカラスが咥えたボールをそのまま使うのはエキノコックスなどの病気が怖いです。

プレーヤーの安全が最優先で間違いないと思いますが、お二人の見解をお聞かせくださいませ。

【解説】

ご質問者様、ご質問有難うございます。

TikTokでその動画を見つけました。

池の脇の芝地でお昼寝をしているワニの頭に球が乗っているのですが、そのワニは微動だにしません。
そのすぐ側で、もう一匹のワニが池の中で大きな口を開けていました。

まずプレーヤーの球かどうかの確認ですが、
打ったショットが池に入ったことが分かっているか事実上確実なのであれば、
1罰打で最後にペナルティーエリアを横切った地点からペナルティーエリアの救済が受けられます。

もし池に入ったことが分からないのであれば、
ワニの近辺を捜索したりワニの頭にある球が自分のであるかを確認しなければなりません。

これは距離計測器や双眼鏡などを使って確認することもできますが、
3分間の捜索時間内に分からなければ紛失となります。

仮に、ワニの頭に乗っているのが自分の球だったとします。

その場合、ワニは危害を及ぼす可能性のある動物なので、
規則16.2に基づいて罰なしに「危険な動物の状態」から救済が受けられます。

救済方法は、異常なコース状態と変わらず完全な救済のニヤレストポイントを基点として、
ホールに近づかないワンクラブレングス以内に球をドロップします。

この場合の完全な救済のニヤレストポイントは、
球がある同じコースエリアで危険が存在しないホールに近づかない最も近い地点となります。

ワニはジェネラルエリアの芝地にいるので、ジェネラルエリアで基点を定めますが、
この動画ではおそらくワニから10ヤード離れたホールに近づかない辺りが安全かと思います。

そこに基点を決めたらワンクラブレングス以内の救済エリアに
別の球をドロップしてプレーを続けることが出来ます。

キツネの場合、危険な動物ではないのでワニのように規則16.2では扱いませんが、
球を咥えて動かされたときは規則9.6の「外的影響が拾い上げた、動かした球」が適用します。

この場合、動かされた球は元の位置にリプレースしなければなりません。

リプレースなので、初めの球がすぐに取り戻せる場合は、その動かされた球でリプレースしなければいけませんが、
感染の危険があるという理由で、委員会は別の球でリプレースを認めることができます。

2025.04.17

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

明らかに不合理な場合、救済はない

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

2019年WGC Mexicoのファイナルラウンドで起きた2つのカート道に関するルーリングがあり、
両方とも似た状況だったにも関わらずダスティン・ジョンソン選手は救済が認められ、
ロリー・マキロイ選手は認められなかったことで話題になりました。

そして救済が認められたジョンソンはこの試合を優勝しました。

1つ目のルーリングはジョンソンの5番ホールのセカンドショットです。

彼のティーショットは右に曲がり、木の根元付近に球が止まりました。

木の右40センチほどのところにカート道があり、ジョンソンがフェアウェイに球を戻すには右足がカート道にかかる状況でした。

立ち会ったレフェリーは救済を認め、
完全な救済のニヤレストポイントからホールに近づかない1クラブレングスの救済エリアに球をドロップしました。(規則16.1b)

すると、グリーンへ向かってプレーするには邪魔になっていた木が全く関係のないところに救済が受けられたので、
彼は目標をグリーンに変えてナイスオンしました。

救済後にプレーの線を変えることは認められます。

2つ目のルーリングはマキロイの6番ホールのセカンドショットです。

彼のティーショットは右に曲がり、木の根元でグリーン側に球が止まりました。

木の左から50センチほどのところにカート道があり、
マキロイは隣のホールへ右打ちをすると右足がカート道にかかるとルーリングに立ち会ったレフェリーにアピールしました。

しかし右足がカート道にかかる状態で普通にバックスイングしようとすると木の幹が邪魔になり現実的でなく、
右足をカート道から外したスタンスの方が、バックスイングが可能な状況でした。

レフェリーは彼が主張するプレーの線は救済を受けたいがためのものであり
明らかに不合理と判断し、救済を認めませんでした。(規則16.1a(3))

すると、マキロイ選手はそれを受け入れ、木の根元にある球を左打ちでプレーしているホールのフェアウェイに戻しました。

この左打ちだとカート道は障害になっていませんでした。

マキロイの救済が認められなかったポイントは「明らかに不合理」という言葉です。

ほとんどの無罰の救済では、あるがままに球をプレーすることができない場合や
プレーヤーが明らかに不合理なクラブ、スタンスやスイングの種類、
プレーの方向を選択することでのみ障害が生じる場合は救済が認められません。

そのため、プロの試合では無罰の救済が認められるかが際どい場合、
プレーの方向やスタンス区域、スイング区域をデモンストレーションしてもらうことがあります。

小さな隙間を狙って打つと言われれば、その技術を持っているので救済を認めます。

しかし、明らかに不合理な場合、例えば木が密集していて、球が1つしか通らないような隙間は認めません。

このようなルーリングは難しいため、レフェリーはセカンドオピニオンを呼ぶこともあります。

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