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ウミトソラノシルス

2025.12.29

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

貸しクラブでプロテスト受験

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

9月に行われたプロテスト第2次予選の3ラウンドでの出来事です。

あるプレーヤーが、ホテルからコースへ車で向かおうとしたところ、
車の鍵が見つからず、トランクにあるキャディーバッグや用具も取り出せないことでパニックとなりました。

JAFに電話したものの早朝で営業しておらず、スタート時間に遅れる訳には行かないということで、
車とキャディーバッグを諦め、タクシーを呼び、コースに電話をして「貸しクラブを一式貸してください」とお願いしました。

プレーヤーはスタート15分前にコースに到着し、
ショップでシューズ、キャップ、グローブ、球、ティーを購入して1番ホールへ向かいました。

そこで待機していたキャディーマスターは、貸しクラブ2セットを揃えたのですが、貸しクラブがかなり古いことを懸念して、
支配人のキャディーバッグとそのコースのキャディーさんのキャディーバッグも並べて、計5セットを用意しました。

プレーヤーはその中からキャディーさんのウッド数本と支配人のアイアンセットを選び、
そこに唯一ホテルの部屋まで持っていった自身のパターと合わせて計10本でラウンドを始めることにしました。

この時点でスタート1分前。

プレーヤーは借りたクラブを一度も練習場で打つことなくスタートすることになりました。

そこで放ったティーショットは見事フェアウェイを捉えて歩いて行きました。

その間、プレーヤーの父親は自宅からスペアキーを持ってホテルに停めてある車に向かっていました。

プレーヤーからドライバー、フェアウェイウッド、ユーティリティ、
そしてサンドウェッジの4本をそこから取ってコースに届けて欲しいとの連絡を受けていたのです。

そしてハーフターンの時にその4本を受け取り、キャディーバッグに追加して計14本で残りのハーフをプレーしました。

規則4.1b(1)の「14本のクラブの制限 ; ラウンド中のクラブの共有、追加または取り替え」には、
「プレーヤーが14本より少ないクラブを持ってラウンドをスタートした場合、
そのプレーヤーは14本のクラブの制限までラウンド中にクラブを追加することができる」
とあります。

この規則を知っていたプレーヤーは、スタート前にクラブを選ぶとき、
残りのハーフで自分のクラブを4本使えるよう敢えて10本だけ選んで行きました。

何故なら、スタート時に14本選んでしまっては、もう追加できず、
通常のプレーでクラブが損傷しない限り、取り替えもできないからです。(規則4.1a(2))

こんなハプニングがあったにも関わらず、プレーヤーはこの日見事1アンダーで回り、
最終日も好調をキープして無事にプロテスト第2次予選を合格しました。

ラウンド中にクラブの追加ができる規則を知っていたことで、冷静に本数を選び、ピンチを凌いだのはあっぱれです。

またプレーヤーの急な要望に対して、惜しみなくクラブを5セット用意したコースさんもナイスプレーでした。

2025.12.29

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

フェースに黒テープを貼ったという記事

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

6月に掲載されたあるゴルフ記事が、その週の試合会場で話題となり、競技委員会の耳に入りました。

その記事には、あるプレーヤーがクラブフェースに黒テープを貼っているという内容でした。

しかし規則では、クラブフェースに如何なる物質も貼ってはならず、
貼ってあるクラブは不適合クラブとみなされます。

そのクラブでストロークをした場合は、規則4.1a(1)で失格となります。

これが事実ならば、これまでの大会でその不適合クラブでプレーを続けてきたことになり、
その事情聴取をしなければなりません。

そこでプレーヤー本人に伺ったところ、
そもそもインタビューを受けた覚えはなく、記事が出ていることやその内容も知らずにいました。

しかし記事には、あたかも本人が14本の使用クラブについて聞かれ、詳細に感想を述べています。

これはどういうことなのか、今度は記事の発行元に伺ったところ、
プレーヤーにインタビューはしておらず、担当のクラブメーカーさんから聞いた
「プレーヤーはこんなことを言っていた」内容をあたかも本人が喋ったように書いたとのことでした。

しかしクラブメーカーさんも、フェースにテープを貼ることは違反と知っており、
そのような加工を施した覚えはなく、またこの記事が出ることも知らずに困惑していました。

そこでプレーヤーのクラブを確認したところ、
実際にフェースに黒テープは貼っておらず、フェースの上部に黒マジックで描いてあるだけでした。

これは用具規則に適っているものの、クラブフェースに油性マジックで線や点を書き入れることについては
「すべきでない」とR&Aから見解が示されているほど、慎重に取り扱わなければならない事例です。

つまり記事の題名にある「フェースに黒テープを貼った」や
文中の「フェース面に黒テープのようなものが貼られている」という表記は、
読者に興味を引いてもらう目的で、事実から大きく逸脱して書かれ、ゴルフ規則を軽んじていることが分かりました。

このことを知り、関係者一同驚愕しました。

まずは本人へのインタビューがなされておらず、
本人の知らないところで記事が出ていること。

改めて内容を確認しますと、どう読んでもそうは取れません。

また記事にはプレーヤーとプレーヤーのクラブの画像が38枚載っていますが、
それは記事が掲載される2ヶ月前に撮ったもので、クラブにテープは貼られていないことが確認できました。

発行元は謝罪と共に、速やかにネットから記事を削除しました。

しかし一度世に出た記事は削除される前に既に多くの目に触れています。

また発行元が削除したとしても、
探せば他のホームページや動画に掲載されており、ネット上では半永久的に遺ります。

プレーヤーに至っては、自身の知らないところで、違反クラブを使用していると疑念を持たれる結果となりました。

またクラブメーカーさんは、違反クラブを作ってプレーヤーに使わせていると誤解され、
競技委員会は大会期間中に事情聴取や対応に迫られました。

ゴルフ規則に関わる内容を掲載するのであれば、
事実に基づき規則を熟知した上で書かなければならず、その責任は重大です。

残念ながら、これまでも過去の記事で、誤った内容や解釈が書かれていることがあり、懸念していました。

今回は内容があまりに事実とかけ離れているのでお話をさせて頂きました。

2025.12.29

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

他のホールをプレーしてショートカット

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

ニトリレディスゴルフトーナメントの3ラウンド目での出来事です。

この日の16番パー5は、本来のヤーデージである545ヤードより80ヤード前にティーを出して、465ヤードにセッティングしました。

ほとんどのプレーヤーは、このティーならば16番ホールの左へドッグレッグしていくフェアウェイより、
左隣の15番ホールをプレーした方が、ホールまでの距離が短くなり、16番ホールにある2つの池もプレーに関係なくなると考え、
15番ホールのフェアウェイにめがけてティーショットしました。

これに驚いたギャラリーさんからは「そんなことしていいの?」や「危険じゃないの?」と言うコメントを耳にしました。

確かにイレギュラーではありますが、ギャラリーや15番ホールをプレー中の組の安全を配慮すれば、
16番ホールのプレーで、隣のホールのフェアウェイに打つことは、規則上問題はありません。

それは通常のプレーでも、大きくミスショットをした場合に、隣のホールに打ち込んでしまうことがあり、
これもホールとホールの間にラインOBなどの制限がなければあるがままプレーするのと同じです。

この15番ホールで組同士が交差する珍しい光景が続く中、面白いルーリングが幾つかありました。

この日はローカルルールでプリファードライが出ており、
球の一部がジェネラルエリアのフェアウェイの長さかそれ以下に刈られた部分に触れている場合、
元の球の箇所からホールに近づかないワンクラブレングス以内のジェネラルエリアで球をプレースすることができました。

そこでプレーヤーは「16番ホールをプレー中に、15番のフェアウェイに球があってもプリファードライの救済は受けられますか」
と聞いてきました。

これは委員会がローカルルールでそのような制限をしない限り、どのホールのフェアウェイに止まっていても救済することができます。

もうひとつのルーリングは、16番ホールをプレー中の球が15番ティー前のウォークパスに止まりました。

ウォークパスとはティーからフェアウェイの間にある道筋で、プレーヤーが歩きやすいようにラフより短めに刈られています。

プレーヤーに「ここからプリファードライの救済は受けられますか」と聞かれましたが、
ウォークパスの刈り高は20mmでフェアウェイの12mmより高かった為、「受けられません」と答えました。

このようにコースの芝の刈り高は、コースセッティングやメンテナンス作業には重要な情報で
競技委員会も周知していますが、プリファードライのローカルルールを適用する時は、
規則上でも必要な情報となります。

このイレギュラーなプレーは、プレーヤー達がより少ないスコアで上がるにはどうしたら良いかを考え、
機転を効かせてショートカットできる隣のホールをプレーするという選択をしました。

その結果、66人中7人がイーグル、41人がバーディーを取るなどして会場は大いに盛り上がりました。

2025.12.29

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

「教えて!Nory」

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

【質問】

8月9日のルールザワールドで阿蘇さんが、グリーンのエッジからの救済について説明され、
ローカルルールひな型F-19を適用するとのことでした。

この場合、(球が)グリーン上にあるときは、規則16.1dで処置し、
ジェネラルエリアにある場合、規則16.1bで処置するとのことでした。

しかし、そもそも、この溝の中に入ったボールは、グリーン上のボールと判断しても良いでしょうか?
(グリーンに触れているので)

また、グリーン上のボールである場合、ホールに近づかないニヤレストポイントは、エッジの直ぐ外側になります。

この場合、パターで打つとエッジの縁にぶつかり、ボールが跳ねる可能性があります。

従って、ウェッジ等で打つと、溝の縁にリーディングエッジに当たり、大きくグリーンをえぐる可能性があります。

そこで、ボール1個程度ホールに近づくことを許容して、
最も近いグリーン上にプレースすることを可能とすることはできないでしょうか?

我々のプライベートコンペでは、この場合、ボール1個程度ホールに近づくことを許容して、
最も近いグリーン上にプレースすることにしていますが、これはルール違反でしょうか?

【解説】

ご質問者様、ご質問有難うございます。

まず1つ目の「溝の中に入ったボールは、グリーン上のボールと判断しても良いでしょうか」
という質問ですが、これは可能です。

パッティンググリーンの定義を見ますと、
「パッティンググリーンの縁は特別に作られたエリアが始まると見て分かる所によって定める」とあります。

これは一般的に、パッティンググリーンの縁を示す為に、芝が短く刈られている所を指します。

しかしこれ以外に「委員会が違った方法でその縁を定めている場合」とあり、
例えば、委員会が切り溝をパッティンググリーンの縁と定めて、球がその切り溝に触れている場合、
その球はパッティンググリーン上にあるとすることができます。(定義:パッティンググリーン)

このように委員会が違った方法で縁を定める場合は、ローカルルールに記載しなければなりません。

このローカルルールが無ければ、パッティンググリーンとして短く刈られた部分が縁と定められ、切り溝は関係なくなります。

何故なら通常、切り溝はグリーンとカラーの境に沿って入れられますが、
よく見ると境から左右にはみ出していることもあり、また切り溝を入れた後のグリーン刈りが溝からはみ出ることがあるからです。

余談になりますが、JLPGAではグリーンとカラーの境が分かりづらいときは、緑点を付けて明確化しており、
これはハードカードに記載されています。

ただし、過去に切り溝をパッティンググリーンの縁として定めたことはありません。

何故なら、明らかに芝が短く刈られたグリーンと見られるエリアが切り溝の外側にある場合、
プレーヤーは誤ってその球をマークして拾い上げる可能性があり、その場合は1罰打を課さなければならないからです。

このローカルルールを適用するか否かは、切り溝の救済のことだけでなく、
それ以外に起こりうるあらゆる問題も考慮した上で、慎重に決めなければなりません。

2つ目の質問の「ボール1個程度ホールに近づくことを許容してよいか」ということですが、
どのような理由であれ、これはできません。

もし不利な状況になるということであれば、救済をせずにあるがままにプレーする選択肢があります。

また「切り溝の外にある球をパターで打つとエッジの縁に当たり、ボールが跳ねる可能性がある」とありますが、
それはよほど溝の幅が広くないとそうはならないと想像しますし、
たとえ跳ねたとしてもプレーの線上にある切り溝からの救済はありません。

球が跳ねる可能性があるのは、その球が溝にあってストロークした場合に多く、その為に罰なしでこの救済が認められています。

またプレーヤーが救済した球をウェッジでストロークする際に、意図するスイングがこの溝に当たるというのであれば、
その救済箇所は誤りであり、溝に当たらない救済のニヤレストポイントを正しく取らなければなりません。

その場合、救済箇所はより後ろになる可能性がありますし、もしかしたらホールに近づかない横になるかもしれません。

ご参考になれば幸いです。

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