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ウミトソラノシルス

2025.08.17

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

パッティンググリーン周辺の縁取り用の溝

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

5月に台湾で開催されたCTBCレディスオープンは
台北にある東方高爾夫球場(Orient Golf & Country Club)で開催されました。

2ラウンド目の14番グリーンでルーリング要請があったので行ってみると、
プレーヤーの球がグリーン周りの縁取り用の溝の上に止まっていました。

この大会では追加ローカルルールで
ローカルルールひな型F-19の「パッティンググリーン周辺の縁取り用の溝」を採用しており、
溝に球が触れていたり、溝が意図するスイングの障害となる場合、罰なしの救済が認められました。

プレーヤーの球はパッティンググリーンにあったので、
規則16.1dに基づいてパッティンググリーンでの異常なコース状態から障害がある状態と同様に救済が受けられます。

そして完全な救済のニヤレストポイントは、
溝に球が触れず、また意図するスイングの障害が避けられる、
ホールに近づかないパッティンググリーンかジェネラルエリアに球をプレースしなければなりません。

このようなルーリングでは、多くの場合、
救済箇所は球の止まっていた地点のすぐ後ろのカラーとなります。

何故なら、通常、ニヤレストポイントを決めるとき、
まず球から等距離にその基点があるか探っていきますが、
ちょうどそこには円型に溝が切られていて、等距離上のニヤレストポイントは球から遠ざかっていきます。

また、プレーヤーはパッティンググリーン上にある球の救済をそのグリーン上にしようとしますが、
実はカラーの方がより近い救済箇所になることが多く、その事実を見逃してしまうことがあります。

このローカルルールの注意点は、
切り溝が意図するスタンスやプレーの線上にあったとしても救済が認められないことです。

つまり 救済のニヤレストポイントを決めるときも、
溝がスタンスやプレーの線上にあっても問題ありません。

2025.08.17

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

「教えて!Nory」

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

【質問】

おはようございます。

先日のラウンドでのことです。

グリーン横のガードバンカーにボールが転がり込み、ヘリにボールがへばり付いてしまいました。

グリーン方向にテークバックが取れず、同伴者の助言に従いアンプレヤブルを宣言したのですが、
正しい処置だったのでしょうか。

またこの場合、その後の処置はどうするべきだったでしょう。

同伴者がバンカー内の打てる場所にリプレースして1罰打と言ったので従ったのですが、
正しかったでしょうか。

【解説】

ご質問者様、ご質問ありがとうございます。

バンカー内でストロークができない場合、アンプレヤブルとみなして救済することはできます。(規則19.2)

ただし、その方法は球をプレースではなく、ドロップしなければなりません。

もしバンカー内でプレーを続けたい場合は、1罰打で2つの選択肢があります。

1つ目はラテラル救済で、
バンカー内で球の箇所からホールに近づかない2クラブレングス以内の救済エリアにドロップです。

2つ目は後方線上の救済で、
バンカー内でホールから球を結んだ後方線上にドロップです。

もし球が止まっている位置からして、この2つのドロップ箇所が好ましくない場合は、
2罰打でバンカーの外でドロップすることができます。

その方法は、バンカーの外でホールから球を結んだ後方線上にドロップすることです。

またプレーヤーはいつでもストロークと距離の罰で、
直前のストロークが行われた場所からプレーをすることができます。(規則14.6)

これがティーショットであれは、ティーイングエリアからプレーすることになり、
フェアウェイやラフなどのジェネラルエリア、或いはバンカーからプレーした場合は、
その地点からホールに近づかない1クラブレングス以内に球をドロップしてプレーを続けます。

また稀ではありますが、高速グリーンからプレーした球がバンカーのヘリに止まった場合は、
パットした箇所に球をプレースしてプレーを続けることができます。

つまりストロークした球の止まった所からプレーしたくないと思えば、
いつでも1罰打で直前のストロークが行われた箇所から再プレーすることができます(規則18.1)。

この質問で気になったのは、同伴プレーヤーの「助言」という言葉です。

もし同伴プレーヤーが、バンカーにある球のライを見て、
打てそうにないと思い、「アンプレヤブルしたらいいんじゃない」とか
「自分だったらアンプレヤブルする」とプレーヤーに言ったとすると、
それはプレーする方法の決定に影響を与えた可能性があるのでアドバイスを与えたことになり、
その同伴プレーヤーは2罰打を受けます。
(定義:アドバイス)

プレーヤー本人は、そのアドバイスに従ったとしても、
そもそもアドバイスを求めていなければ罰はありません。
また同伴プレーヤーはアンプレヤブルの処置の方法を伝えていますが、
その方法が正しいか誤りかに関わらず、規則を知らせることはアドバイスには含みません。

覚えて頂けると幸いです。

2025.08.02

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

全米プロ選手権の泥つきボールの扱いに疑問

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

全米プロ選手権は5月、ノースキャロライナ州のクエイルホロークラブで開催されました。

同じ組で回っていた世界ランクトップ3の
スコッティ・シェフラー選手、ザンダー・シャウフェレ選手とロリー・マキロイ選手が
16番ホールで全員ダブルボギーを叩く珍事がニュースとなりました。

その大きな要因が、大会前日の大雨の影響で地面が柔らかく球に泥が付着しやすい状況の中、
大会を主催する全米プロゴルフ協会は球を拭くことができるローカルルールを採用しなかったということです。

シェフラー選手は16番ホールのフェアウェイ、残り212ヤードのセカンドショットを左に巻いて池に入れてしまいました。

シェフラー選手は
「フェアウェイの真ん中で、どこに飛ぶかわからない泥の付いたボールを打つことは本当にフラストレーションが溜まる。
ゴルフはあるがままでプレーすべきだという純粋主義者は、
私たちが人生をかけてボールの打ち方、コントロールの仕方を習得しているにも関わらず、
ルール次第で突然それが奪われる気持ちを理解していないと思う」
とコメントしました。

球に泥が付く場合、委員会はローカルルールひな型E-2を適用することで
ジェネラルエリアにある球を拭くことを認めることができます。

このローカルルールが適用されている場合、
プレーヤーはジェネラルエリアのラフやフェアウェイで球をマークして拾い上げ、拭き、
元の箇所にリプレースすることができます。

このような救済は「コースはあるがままにプレーする」というゴルフの原則から外れているため、
コースの必要な部分、例えば「6番ホール」などに限定されるべきです。

他にも委員会はローカルルールひな型E-3プリファードライを適用することがでます。

これはジェネラルエリアのフェアウェイの長さ以下の区域においてのみ使うことを意図しており、
委員会が定める救済エリアのサイズに球をプレースすることで球を拭くだけでなく、ライを選ぶこともできます。

ちなみに、JLPGAでは球の箇所からホールに近づかない1クラブレングス以内と定めています。

このようなローカルルールを適用するかしないかの判断はとても難しいです。

なぜなら、ツアーで1年間プレーする場合、
一貫性を持ってその判断をしないとプレーヤーは不満と怒りを委員会にぶつけてくるからです。

シェフラー選手は最後に「ルールを決めるのは僕じゃない。ルールの下での結果を受け入れる必要がある」とコメントしていました。

その言葉に決める立場にいる私は少しホッとしました。

2025.08.02

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

コース上の張芝

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

JLPGAステップ・アップ・ツアーとTLPGA共催のCTBCレディスオープンは5月に台湾のオリエントG&CCで開催されました。

コースには孔雀やフクロウが生息しており、ガジュマルの木には胡蝶蘭が植樹され、美しい花々が咲き誇っていました。

トーナメントのためのコースメンテナンスは「素晴らしい」の一言でしたが、パッティンググリーン上には所々、張芝がありました。

今回はその張芝についてお話しします。

コース上の芝の張られた部分は地面に活着するまで修理地としてマーキングすることが一般的です。

しばらくして芝が地面に根付いて活着した場合は、もはや修理地ではなくなりますが、
委員会はローカルルールひな型F-7を適用することで、張芝の継ぎ目から救済を認めることができます。

この大会では台湾女子プロゴルフツアー(TLPGA)のハードカードを適用しており、
このローカルルールひな型F-7はそこに載っていました。

処置の方法は、プレーヤーの球が張芝の継ぎ目の中にあったり、
継ぎ目がプレーヤーの意図するスイング区域の障害となっていた場合に救済が認められます。

ジェネラルエリアにある球に対しての救済は、規則16.1bに基づいて
完全な救済のニヤレストポイントからホールに近づかない1クラブレングス以内にドロップです。

パッティンググリーン上の場合は、規則16.1dに基づいて
パッティンググリーンかジェネラルエリアに完全な救済のニヤレストポイントを決めてプレースとなります。

注意点は張芝がプレーヤーのスタンスの障害となっても救済がないことと、
張芝の区域の中のすべての継ぎ目は同じ継ぎ目として扱われることです。

CTBCレディスオープンの2日目、7番グリーンで立ち会ったルーリングでは、
プレーヤーの球はグリーン上にあり、プレーの線上にある張芝から救済を受けられるかの質問でした。

張芝や継ぎ目自体は修理地ではないため、その線上からの救済は認められません。

しかし、パッティンググリーン上にある張り替え跡やその継ぎ目は規則13.1cに基づいて修理することができます。

異常気象でコースメンテナンスが難しい近年ではこのように張芝もよく目にすることかと思います。

その時の救済方法としてお役に立てれば幸いです。

2025.07.17

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

「教えて!Nory」

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

【質問】

おはようございます!阿蘇さん、中﨑さん!
グリーンオンしたボールがエアレーションの穴の上に止まっていた際、
マークしてエアレーションの穴をフォークで改善した場合、ペナルティーになりますか?
よろしくご回答ください。

【解説】

ご質問者様、ご質問ありがとうございます。

パッティンググリーン上のエアレーションの穴はパッティンググリーン上の損傷ではないため、
プレーの線上やライにあるエアレーションの穴を修理して
ストロークに影響を及ぼす状態を改善した場合は一般の罰が課されます。
(規則13.1c(2)、8.1a)

つまりパッティンググリーン上で、
自分のプレーに影響のない箇所のエアレーションを直しても罰はありません。

3月や4月は時節柄芝の成長が活発なため、パッティンググリーンにエアレーションやエッジ切りが施されます。

パッティンググリーンのエアレーションの穴は芝の根をしっかり伸ばすための大事なメンテナンス作業です。

しかし、そのようなメンテナンスの穴が適正なゲームのプレーの障害になることがあります。

そのような場合、委員会はローカルルールひな型E-4を適用することで
球がエアレーションの穴の中にある、または触れている時には救済を認めることができます。

パッティンググリーン上にある球は、
規則16.1dに基づいて完全な救済のニヤレストポイントにプレースすることで
罰なしの救済を受けることができます。

ちなみに、エアレーションの穴はグリーン全体にあることがほとんどで、その穴1つ1つが単体の障害と考えます。

つまり、1つの穴から救済を受けると別の穴が障害となる可能性もありますが、
それはそれで1つの救済が完了したことになり、プレーヤーはそのままプレーすることができますし、
さらに救済を受けることもできます。

実際にJLPGAのステップ・アップ・ツアーでは、
4月にエリエール松山で開催された大王海運でこのローカルルールひな型E-4を適用しました。

2025.07.17

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

ドライバーヘッドに描かれたアライメント用の線

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

5月に開催されたパナソニックオープンレディースゴルフトーナメントの競技前、
あるクラブメーカーさんが選手のドライバーを持って競技委員ルームへ訪ねてきました。

そのドライバーヘッドにはフェースに沿ってヘッド上部に2ミリほどの白いペイント線と
その線の真ん中あたりに2センチほどの直角になる線がTの字のように描かれていました。

このようなアライメント目的の装飾がクラブ規定の違反にならないか確認したいとのことでした。

用具の規則iv「外部付属物」には、認められる可能性のある例として、
クラブフェース以外でのアライメントや標準支援など、クラブヘッドへの半恒久的な付属物があります。

しかし、そうしたアイテムはクラブヘッドから過度に突き出てはならず
クラブヘッドの形状に適合しなければなりません。

また、そうした付属物が適合ドライバーヘッドリストのクラブの正しい識別に混乱を生じさせてはならないため、
小さく見た目が単純で控えめな位置にあるべきです。

今回のドライバーはこれらの条件に適っていた為、委員会は適合と裁定しました。

以前、アライメント目的で松山選手がドライバーのフェースの溝にペイントしたことで失格になりました。

このケースでは、そのペイントはアライメント目的であったものの、
溝からはみ出しフェースに僅かな凹凸ができたことから
「球の動きに不当に影響を及ぼす可能性がある物質」とみなされ不適合クラブと裁定されました。(規則4.1a(1))

また、JLPGAツアーでは
2021年にドライバーのフェースに計測用に貼られた小さなシールを付けたままプレーして失格になったケースもありました。

ここでのポイントはシールがクラブの性能やストローク後の球の飛び方に影響したかどうか
という判断基準ではないということです。

尚、2023年のルール改訂では、
このようなシールがフェースに貼られたままうっかりラウンドをスタートした場合でも、
その貼られた状態でストロークをしていなければ、
シールを剥がして残りのホールで罰なしに使うことができます。
(規則4.1a(3)例外)

以前はシールを剥がしても使用できませんでした。

用具規則はとても複雑で、
ペイントやシールなどの付属物はクラブの部位や位置、目的などによっても認められたり認められなかったりします。

クラブに何かを取り付けたり装飾したりする場合はお気をつけください。

 

2025.06.30

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「教えて!Nory」

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

【質問】

ルールが大改訂される前は、
ワッグルの最中にクラブが枝に触れて葉っぱが落ちた場合はライの改善として、罰が課されていましたが、
現在のルールブックを見てもワッグルの最中に枝に触れて葉っぱが落ちた場合の罰が明記されていない様なのですが、
今一度、明確に解説頂けませんでしょうか。

【解説】

ご質問者様、ご質問ありがとうございます。

この内容に関する規則は、2019年のゴルフ規則の大改訂の前後で変更はありません。

私が競技委員になった2012年以降の裁定集(2012~2013、2014~2015、2016~2017)も全て調べて改訂はなかったので、
少なくとも2012年以降の解釈は変わりません。

プレーヤーの球が木の近くにあり、練習スイングやワッグルなどをした結果、木の葉っぱを数枚落としてしまった場合、
葉っぱを数枚落としたからと言って、自動的に規則8.1aの一般の罰が課される訳ではありません。

それは単にそのスイング区域やスタンス区域などの状況を変えたとしても、
プレーヤーのプレーに対して潜在的な利益を生み出していなければ違反とはならないからです。

規則8.1aには、「ストロークに影響を及ぼす状態を改善するプレーヤーの認められない行動」について書かれていますが、
その中にプレーヤーのスイングやスタンス区域に生長している自然物を動かしたり、曲げたり、壊してはならないとあります。

このケースですと、スイング区域に木の枝があり、ワッグルをした際に枝に付いている葉っぱが落ちたとのことですが、
その枝にまだ何十枚もの葉っぱが残っていて状況がほぼ変わらず、
スイング区域を改善したことにならないとのことであれば罰はありません。

このようなルーリングは実際でもありますが、ほとんどのケースで同様に罰なしの裁定となっています。

しかし、もし落とした葉っぱがスイング区域にある唯一の葉っぱであり、
この葉っぱが無くなったことでスイング区域が明らかに改善されたとなれば一般の罰、
つまり2罰打が課されます。

また落とした葉っぱを枝に付け直すことはまず不可能なので、罰は免れず、
プレーヤーはその改善された状況でプレーを続けることになります。

規則8.1c(1)には、「動かした木の枝、草、動かせない障害物を元の位置に戻すことによって改善を無くした場合、罰はない」
とありますが、葉っぱを枝に付け直すことはテープなどを使わない限り、付け直すことはできません。

しかし規則では元の状態に復元しようと、他の物質を使用することはできないとあるのでテープの使用は認められません。

もし枝葉のある木の近くで練習スイングをするときは、
ストロークに影響を及ぼす状況の改善とみなされないように慎重に行動しましょう。

2025.06.30

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

ルーリングに要する時間

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

JLPGA2戦目となるVポイント×SMBCレディスゴルフトーナメントの2ラウンド目で起こったことです。

18番ホール(パー5)のグリーン左側でルーリング要請があり、近くにいたレフェリーが駆けつけました。

プレーヤーはツーオンを狙ったのですが2打目を左に曲げてしまい、グリーンから30ヤード離れた位置に止まりました。

グリーン周りはホスピタリティーテントやスタンドに囲われており、 球とホールの間にはリーダーズボードが介在していました。

プレーヤーはそのリーダーズボードから罰なしで介在の救済を受けられたので、球をあるがままにプレーするか、
臨時の動かせない障害物(TIO)からの介在の救済を受けられるとプレーヤーに説明しました。(ローカルルールひな型 F-23)

ところがプレーヤーではなく、そのキャディーは実際にはホールの左側を狙いたいから、
その狙い目を考えるとレフェリーが示した救済エリアよりも7ヤードほど右側に球をドロップしたいと要求してきました。

このキャディーは外国人で英語しか話せないため、現場で対応したレフェリーの説明が理解できず、
雇った日本人プレーヤーも英語が話せず、どうしてよいか分からずにルーリングが停滞してしまいました。

そこでセカンドオピニオンで私が対応したのですが、キャディーに
「TIOの救済エリアはプレーヤーの狙い目は関係なく、
ホールとリーダーズボードの右端を結んだ線から1クラブレングス離れた箇所が基点となる」
と説明しても納得しません。

キャディーはゴルフ規則を理解しないまま、興奮状態で誤った主張を繰り返すばかりです。

しかしプレーヤーが、キャディーの主張する箇所に球をドロップしてプレーした場合は、
誤所からのプレーで2罰打が付いてしまいます。

そこでプレーヤーに再度、ルールを説明したところ、正しい救済エリアに球をドロップしてプレーを続けました。

結局、このルーリングは18分も要してしまい、18番ホールはティーに2組待ちという大渋滞を招きました。

その結果、プレーの進行が著しく遅れてしまい、予定していた最終組の終了時間は20分超えてしまいました。

プレーヤーやキャディーは、1打が掛かっている中で競技しているのは理解できます。

しかしゴルフ規則を知らないで自身の要求を押し付けるのは誤りです。

ルーリングを要請したのであれば、レフェリーから現場での処置の選択肢や方法を聞いた上で、
次のプレーをどうすべきかを考えて行動に移さなければなりません。

そうでなく、別の場所にドロップを主張してルーリングが長引けば、不当の遅延となります。

プロツアー競技ではプレーの進行が著しく遅れると、
テレビの放送枠、コースのメンテナンス、ラウンド後の練習時間、ギャラリーバスの送迎時間など多くに影響を及ぼします。

それ故、これらの状況も踏まえて行動しなければいけません。

2025.06.30

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

蛭田みな美、「30㎝のパット」を17時間打てず!

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

4月に開催された富士フィルム・スタジオアリス女子オープンの1ラウンド目での出来事です。

この日は一日中、大気が不安定な状態で、午後には会場から離れた北西で雷が鳴り始めました。
大会関係者は安全を最優先に考え、13時57分に雷雨接近のために即時中断を決定しました。

即時中断とは、雷などの切迫した危険がある場合に行う中断で、
レフェリーはエアホンで一回の長い音を一斉に鳴らします。

この合図を聞いたプレーヤーはすぐにプレーを止めなければならず、
もしこのエアホンを聞いたあとで、プレーをすると規則5.7bにより失格となってしまいます。

このとき蛭田選手は最終の18番ホールのグリーン上にいました。

バーディーパットが惜しくもはずれ、
ホールから30cmのところに止まった球をマークして同伴プレーヤーのプレーを待っていた時にエアホンが鳴りました。

もしマークせずにそのままタップインしていれば、
エアホンが鳴る前にそのラウンドは終了となり、翌日の第2ラウンドに備えることができました。

しかし、たとえどんなに短いパットであっても、即時中断の合図が聞こえたあとはプレーを止めなければなりません。
もしプレーヤーがホールアウトしてしまいたいと思って、球をリプレースしてタップインした場合は失格です。

当然、蛭田選手はそのことを理解していたので、すぐに避難しました。

その後、プレーの再開を待ちましたが、その日のうちに天気の回復は見込めず、翌日に持ち越されました。
そして翌朝の7時、中断から実に17時間後、ようやくタップインして第1ラウンドを終えることができました。

この規則5.7bの失格はとても厳しいように思えますが、
これは雷などの危険が及んでいるときにできるだけ速やかに安全な場所に避難させることが目的です。

数か月前にも奈良県の学校のグラウンドでサッカーをしていた学生が落雷で病院に搬送されたニュースがありました。

ゴルフも野外で行われるスポーツであり、いつこのような被害に遭ってもおかしくありません。
大気が不安定なときはプレーヤーのみならず、コースにいる関係者やギャラリーの皆さまも直ぐに安全な場所へ避難してください。

2025.06.11

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

テストドロップすること

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

3月に開催されたアクサレディスゴルフトーナメントの3ラウンド目。

9番ホールのセカンド地点右にあるカート道の上に球が止まり、ルーリング要請がありました。

そのカート道の右側は急斜面で、もしカート道から救済をするとなるとその斜面が救済エリアとなり、
かなりのつま先上がりのライから打つことが予想されました。

プレーヤーは、
「この急斜面に球をドロップすることになるが、ドロップした後にそのライから打ちたくないと思ったら、
カート道上の球の止まっていた箇所にリプレースしてプレーしてよいか」
と訊ねました。

レフェリーは
「それはできません。
カート道の上からそのままプレーするのであれば、インプレーの球を拾い上げることも、ドロップを試すこともできません」
と伝えました。

何故なら、プレーヤーがカート道の救済を受ける目的で球を拾い上げた場合、救済を受けなければならず、
拾い上げた後に気が変わって救済のドロップをしないと決めた場合、
もはや規則16.1bに基づいて球を拾い上げる権利が無効となるからです。

プレーヤーは規則9.4のインプレーの球を拾い上げた1罰打を足して、
カート道に止まっていた元の箇所に球をリプレースしてプレーを続けなければなりません。
(詳説 9.4b/4)

これが球を拾い上げるだけにとどまらず、更にドロップしてライの状態を見定めてから、
そのライで打ちたくないと判断してカート道上の元の位置に球をリプレースしてプレーを続けると、
場合によっては失格となる可能性があります。

もしプレーヤーが、インプレーにする意図がなければ、
ドロップした球はインプレーにはならないことを知っていて、ドロップした球がどうなるかを事前にテストした場合、
ゲームの精神から逸脱したことになります。

これは規則1.2aの「プレーヤーの行動基準」に基づいて失格とすることが正当化される行為です。(詳説 14.4/2)

球をドロップするという処置は、救済を受けるときに球がどのようなライに止まるかの不確実性の要素があることを意味しており、
そのライを受け入れなければなりません。

このルーリングでは、プレーヤーは球に触れずに待っていたので何ら罰はありませんでした。

そして球をドロップしたらどのようなライになるかを想像した上で、
カート道に止まっている球をそのままプレーすることを選択しました。

プレーヤーはそこからナイスショットをしてバーディーチャンスに繋げました。

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