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2025.10.15

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

デシャンボーがUSオープンで危うくルール違反となる

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

6月にオークモントCCで開催されたUSオープンで昨年の覇者として参加したブライソン・デシャンボーが
1ラウンド目の4番ホールで危うく罰打を課されるところがTVに映り、話題となりました。

4番ホール(パー5)でティーショットを右のバンカーに入れ、
顎の高いバンカーから2打目をフェアウェイに出した球は、ギャラリーが歩くクロスウェイにあり、
USGAはローカルルールで、緑線で囲われたそのクロスウェイを修理地と定めていました。

デシャンボーはその修理地から救済しようと球を拾い上げましたが、
正しい救済エリアが本人の望んだ場所と違うと分かると、拾い上げた球を元の位置にリプレースできると思い、
現場にいたレフェリーにそう尋ねました。

しかし規則では、修理地からの罰なしの救済を受けるつもりで自分の球を拾い上げ、
その後になって気が変わり、処置をしないと決めた場合、その球を拾い上げる権利はもはや無効となります。(詳説9.4b/4)

もし球があった元の箇所にリプレースするとなると、
インプレ―の球を拾い上げたことにより規則9.4の違反で1罰打を課すことになります。

そのことをレフェリーから伝えられると、デシャンボーは1罰打を免れようと、
望んだ場所ではないけれど、修理地の救済をしようと決めます。

その場所は元の位置より5ヤードほど後ろに下がったところなのですが、
デシャンボーは更に勘違いして、救済エリアにドロップすべきところをプレースしてしまいます。

再度、レフェリーに誤りを指摘され、プレースした球を拾い上げ、罰なしにドロップして救済を正しく終えました。

もしプレースした球をそのままプレーした場合、誤所からのプレーで2罰打を受けるところでした。

しかしプレーする前だったので、規則14.5bに基づき、罰なしに誤りを訂正することができました。

この教訓として皆様にお伝えしたいのは、
もし球が修理地や障害物などの上や近くに止まっていて罰なしの救済が受けられるとしても、
すぐに球を拾い上げないことです。

それは拾い上げた後に、ドロップすべき救済エリアが球の止まっている位置より好ましくない状況となる可能性があるからです。

その辺りも見極めてから正しく救済を始めましょう。

2025.10.15

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

プレーの再開のエアホンが鳴る前にストロークする

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

6月に開催された宮里藍サントリーレディスオープンの3日目は、
トップの組がスタートした直後から激しい雨が降り、2度の中断と再開を繰り返しながらのラウンドとなりました。

その2度目の中断は、激しい雨の影響でパッティンググリーン全体に水が浮いて9時02分に中断となりました。

その20分後に雨は止み、グリーン上の水は引いたものの、バンカーの水溜まりが残ったままだったので、
特に酷かった3つのバンカーの水抜き作業を終えた9時41分に再開をしました。

その後は雨が降ったり止んだりを繰り返したものの、中断なく3ラウンドを終えることができました。

ところが翌日の4ラウンド目の競技中、ある大会関係者より、
「3ラウンドの2回目の再開のエアホンが鳴る数分前に、
ある選手が10番グリーンで1メートルのパットをストロークしたのを見たけど問題ないのか」
と質問されました。

この時、当該選手は既に4ラウンドをスタートしていた為、
ラウンド終了後に集計所で内容を確認したところ、事実であったことが分かりました。

結果的に、プレーヤーは3ラウンドの10番ホールに一般の罰(2罰打)を足してスコアを修正することになりました。

3ラウンドのこのプレーヤーの組は、10番ホールでパッティング中に中断のエアホンが鳴りました。

この時、3選手のうち2人は既にホールアウトしていて、あと1人がショートパットを残すのみという状況でした。

通常の中断なので、エアホンが鳴った後でもプレーを続けることができますが、
グリーン上に水溜まりができた為、パットすることができませんでした。

そこでプレーヤーはプレーを止めて、近くにあるトンネルで雨宿りすることにしました。

しばらくすると雨は止み、グリーン上の水が引いたため、
プレーヤーはパッティンググリーンに戻って、再開のエアホンが鳴る数分前にパットしてホールアウトしてしまったのです。

何故、このような行動を取ったのかと訊ねると、
プレーヤーは危険が及ばない通常の中断だった為、ホールをプレー中であれば、
中断のエアホンが鳴ってもそのホールに限り、終了できると理解していました。

これ自体は正しいのですが、問題は中断のエアホンが鳴った後に、
グリーン上に水溜まりがあった為にプレーヤー自身がそこで一旦、プレーを中断したことです。

規則5.7bには、
「ホールのプレー中に通常の中断となった場合、プレーヤーがそのホールを終了する前にプレーを中断した場合、
委員会がプレーを再開するまで、プレーヤーは別のストロークを行ってはならない」
とあります。

このケースでは、プレーヤーがホールアウトせずにパッティンググリーンを離れて雨宿りをしたことでプレーを中断したとみなされ、
プレーの再開のエアホンが鳴るまでプレーを待たなければなりませんでした。

この違反をした場合は失格となりますが、
幸いにもこの規則には例外があり、再開のエアホンが鳴る5分以内にストロークをした場合、
規則5.3a例外2が適用され、一般の罰となりました。(規則 5.7c(2)例外)

これは例えば、プレーヤーがスタート時間より前にティーショットをプレーした時と同様に、
それがスタート時間の5分以内であれば失格を免れ、一般の罰を受けるのと同じです。

このことをプレーヤーに説明し、
前日の3ラウンドのスコアカードを提出する前には受けていたことを知らなかった2罰打を加えて
スコアを修正しました。(規則 3.3b(3)例外)

2025.08.17

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

パッティンググリーン周辺の縁取り用の溝

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

5月に台湾で開催されたCTBCレディスオープンは
台北にある東方高爾夫球場(Orient Golf & Country Club)で開催されました。

2ラウンド目の14番グリーンでルーリング要請があったので行ってみると、
プレーヤーの球がグリーン周りの縁取り用の溝の上に止まっていました。

この大会では追加ローカルルールで
ローカルルールひな型F-19の「パッティンググリーン周辺の縁取り用の溝」を採用しており、
溝に球が触れていたり、溝が意図するスイングの障害となる場合、罰なしの救済が認められました。

プレーヤーの球はパッティンググリーンにあったので、
規則16.1dに基づいてパッティンググリーンでの異常なコース状態から障害がある状態と同様に救済が受けられます。

そして完全な救済のニヤレストポイントは、
溝に球が触れず、また意図するスイングの障害が避けられる、
ホールに近づかないパッティンググリーンかジェネラルエリアに球をプレースしなければなりません。

このようなルーリングでは、多くの場合、
救済箇所は球の止まっていた地点のすぐ後ろのカラーとなります。

何故なら、通常、ニヤレストポイントを決めるとき、
まず球から等距離にその基点があるか探っていきますが、
ちょうどそこには円型に溝が切られていて、等距離上のニヤレストポイントは球から遠ざかっていきます。

また、プレーヤーはパッティンググリーン上にある球の救済をそのグリーン上にしようとしますが、
実はカラーの方がより近い救済箇所になることが多く、その事実を見逃してしまうことがあります。

このローカルルールの注意点は、
切り溝が意図するスタンスやプレーの線上にあったとしても救済が認められないことです。

つまり 救済のニヤレストポイントを決めるときも、
溝がスタンスやプレーの線上にあっても問題ありません。

2025.08.17

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「教えて!Nory」

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

【質問】

おはようございます。

先日のラウンドでのことです。

グリーン横のガードバンカーにボールが転がり込み、ヘリにボールがへばり付いてしまいました。

グリーン方向にテークバックが取れず、同伴者の助言に従いアンプレヤブルを宣言したのですが、
正しい処置だったのでしょうか。

またこの場合、その後の処置はどうするべきだったでしょう。

同伴者がバンカー内の打てる場所にリプレースして1罰打と言ったので従ったのですが、
正しかったでしょうか。

【解説】

ご質問者様、ご質問ありがとうございます。

バンカー内でストロークができない場合、アンプレヤブルとみなして救済することはできます。(規則19.2)

ただし、その方法は球をプレースではなく、ドロップしなければなりません。

もしバンカー内でプレーを続けたい場合は、1罰打で2つの選択肢があります。

1つ目はラテラル救済で、
バンカー内で球の箇所からホールに近づかない2クラブレングス以内の救済エリアにドロップです。

2つ目は後方線上の救済で、
バンカー内でホールから球を結んだ後方線上にドロップです。

もし球が止まっている位置からして、この2つのドロップ箇所が好ましくない場合は、
2罰打でバンカーの外でドロップすることができます。

その方法は、バンカーの外でホールから球を結んだ後方線上にドロップすることです。

またプレーヤーはいつでもストロークと距離の罰で、
直前のストロークが行われた場所からプレーをすることができます。(規則14.6)

これがティーショットであれは、ティーイングエリアからプレーすることになり、
フェアウェイやラフなどのジェネラルエリア、或いはバンカーからプレーした場合は、
その地点からホールに近づかない1クラブレングス以内に球をドロップしてプレーを続けます。

また稀ではありますが、高速グリーンからプレーした球がバンカーのヘリに止まった場合は、
パットした箇所に球をプレースしてプレーを続けることができます。

つまりストロークした球の止まった所からプレーしたくないと思えば、
いつでも1罰打で直前のストロークが行われた箇所から再プレーすることができます(規則18.1)。

この質問で気になったのは、同伴プレーヤーの「助言」という言葉です。

もし同伴プレーヤーが、バンカーにある球のライを見て、
打てそうにないと思い、「アンプレヤブルしたらいいんじゃない」とか
「自分だったらアンプレヤブルする」とプレーヤーに言ったとすると、
それはプレーする方法の決定に影響を与えた可能性があるのでアドバイスを与えたことになり、
その同伴プレーヤーは2罰打を受けます。
(定義:アドバイス)

プレーヤー本人は、そのアドバイスに従ったとしても、
そもそもアドバイスを求めていなければ罰はありません。
また同伴プレーヤーはアンプレヤブルの処置の方法を伝えていますが、
その方法が正しいか誤りかに関わらず、規則を知らせることはアドバイスには含みません。

覚えて頂けると幸いです。

2025.08.02

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全米プロ選手権の泥つきボールの扱いに疑問

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

全米プロ選手権は5月、ノースキャロライナ州のクエイルホロークラブで開催されました。

同じ組で回っていた世界ランクトップ3の
スコッティ・シェフラー選手、ザンダー・シャウフェレ選手とロリー・マキロイ選手が
16番ホールで全員ダブルボギーを叩く珍事がニュースとなりました。

その大きな要因が、大会前日の大雨の影響で地面が柔らかく球に泥が付着しやすい状況の中、
大会を主催する全米プロゴルフ協会は球を拭くことができるローカルルールを採用しなかったということです。

シェフラー選手は16番ホールのフェアウェイ、残り212ヤードのセカンドショットを左に巻いて池に入れてしまいました。

シェフラー選手は
「フェアウェイの真ん中で、どこに飛ぶかわからない泥の付いたボールを打つことは本当にフラストレーションが溜まる。
ゴルフはあるがままでプレーすべきだという純粋主義者は、
私たちが人生をかけてボールの打ち方、コントロールの仕方を習得しているにも関わらず、
ルール次第で突然それが奪われる気持ちを理解していないと思う」
とコメントしました。

球に泥が付く場合、委員会はローカルルールひな型E-2を適用することで
ジェネラルエリアにある球を拭くことを認めることができます。

このローカルルールが適用されている場合、
プレーヤーはジェネラルエリアのラフやフェアウェイで球をマークして拾い上げ、拭き、
元の箇所にリプレースすることができます。

このような救済は「コースはあるがままにプレーする」というゴルフの原則から外れているため、
コースの必要な部分、例えば「6番ホール」などに限定されるべきです。

他にも委員会はローカルルールひな型E-3プリファードライを適用することがでます。

これはジェネラルエリアのフェアウェイの長さ以下の区域においてのみ使うことを意図しており、
委員会が定める救済エリアのサイズに球をプレースすることで球を拭くだけでなく、ライを選ぶこともできます。

ちなみに、JLPGAでは球の箇所からホールに近づかない1クラブレングス以内と定めています。

このようなローカルルールを適用するかしないかの判断はとても難しいです。

なぜなら、ツアーで1年間プレーする場合、
一貫性を持ってその判断をしないとプレーヤーは不満と怒りを委員会にぶつけてくるからです。

シェフラー選手は最後に「ルールを決めるのは僕じゃない。ルールの下での結果を受け入れる必要がある」とコメントしていました。

その言葉に決める立場にいる私は少しホッとしました。

2025.08.02

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コース上の張芝

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

JLPGAステップ・アップ・ツアーとTLPGA共催のCTBCレディスオープンは5月に台湾のオリエントG&CCで開催されました。

コースには孔雀やフクロウが生息しており、ガジュマルの木には胡蝶蘭が植樹され、美しい花々が咲き誇っていました。

トーナメントのためのコースメンテナンスは「素晴らしい」の一言でしたが、パッティンググリーン上には所々、張芝がありました。

今回はその張芝についてお話しします。

コース上の芝の張られた部分は地面に活着するまで修理地としてマーキングすることが一般的です。

しばらくして芝が地面に根付いて活着した場合は、もはや修理地ではなくなりますが、
委員会はローカルルールひな型F-7を適用することで、張芝の継ぎ目から救済を認めることができます。

この大会では台湾女子プロゴルフツアー(TLPGA)のハードカードを適用しており、
このローカルルールひな型F-7はそこに載っていました。

処置の方法は、プレーヤーの球が張芝の継ぎ目の中にあったり、
継ぎ目がプレーヤーの意図するスイング区域の障害となっていた場合に救済が認められます。

ジェネラルエリアにある球に対しての救済は、規則16.1bに基づいて
完全な救済のニヤレストポイントからホールに近づかない1クラブレングス以内にドロップです。

パッティンググリーン上の場合は、規則16.1dに基づいて
パッティンググリーンかジェネラルエリアに完全な救済のニヤレストポイントを決めてプレースとなります。

注意点は張芝がプレーヤーのスタンスの障害となっても救済がないことと、
張芝の区域の中のすべての継ぎ目は同じ継ぎ目として扱われることです。

CTBCレディスオープンの2日目、7番グリーンで立ち会ったルーリングでは、
プレーヤーの球はグリーン上にあり、プレーの線上にある張芝から救済を受けられるかの質問でした。

張芝や継ぎ目自体は修理地ではないため、その線上からの救済は認められません。

しかし、パッティンググリーン上にある張り替え跡やその継ぎ目は規則13.1cに基づいて修理することができます。

異常気象でコースメンテナンスが難しい近年ではこのように張芝もよく目にすることかと思います。

その時の救済方法としてお役に立てれば幸いです。

2025.07.17

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「教えて!Nory」

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

【質問】

おはようございます!阿蘇さん、中﨑さん!
グリーンオンしたボールがエアレーションの穴の上に止まっていた際、
マークしてエアレーションの穴をフォークで改善した場合、ペナルティーになりますか?
よろしくご回答ください。

【解説】

ご質問者様、ご質問ありがとうございます。

パッティンググリーン上のエアレーションの穴はパッティンググリーン上の損傷ではないため、
プレーの線上やライにあるエアレーションの穴を修理して
ストロークに影響を及ぼす状態を改善した場合は一般の罰が課されます。
(規則13.1c(2)、8.1a)

つまりパッティンググリーン上で、
自分のプレーに影響のない箇所のエアレーションを直しても罰はありません。

3月や4月は時節柄芝の成長が活発なため、パッティンググリーンにエアレーションやエッジ切りが施されます。

パッティンググリーンのエアレーションの穴は芝の根をしっかり伸ばすための大事なメンテナンス作業です。

しかし、そのようなメンテナンスの穴が適正なゲームのプレーの障害になることがあります。

そのような場合、委員会はローカルルールひな型E-4を適用することで
球がエアレーションの穴の中にある、または触れている時には救済を認めることができます。

パッティンググリーン上にある球は、
規則16.1dに基づいて完全な救済のニヤレストポイントにプレースすることで
罰なしの救済を受けることができます。

ちなみに、エアレーションの穴はグリーン全体にあることがほとんどで、その穴1つ1つが単体の障害と考えます。

つまり、1つの穴から救済を受けると別の穴が障害となる可能性もありますが、
それはそれで1つの救済が完了したことになり、プレーヤーはそのままプレーすることができますし、
さらに救済を受けることもできます。

実際にJLPGAのステップ・アップ・ツアーでは、
4月にエリエール松山で開催された大王海運でこのローカルルールひな型E-4を適用しました。

2025.07.17

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ドライバーヘッドに描かれたアライメント用の線

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

5月に開催されたパナソニックオープンレディースゴルフトーナメントの競技前、
あるクラブメーカーさんが選手のドライバーを持って競技委員ルームへ訪ねてきました。

そのドライバーヘッドにはフェースに沿ってヘッド上部に2ミリほどの白いペイント線と
その線の真ん中あたりに2センチほどの直角になる線がTの字のように描かれていました。

このようなアライメント目的の装飾がクラブ規定の違反にならないか確認したいとのことでした。

用具の規則iv「外部付属物」には、認められる可能性のある例として、
クラブフェース以外でのアライメントや標準支援など、クラブヘッドへの半恒久的な付属物があります。

しかし、そうしたアイテムはクラブヘッドから過度に突き出てはならず
クラブヘッドの形状に適合しなければなりません。

また、そうした付属物が適合ドライバーヘッドリストのクラブの正しい識別に混乱を生じさせてはならないため、
小さく見た目が単純で控えめな位置にあるべきです。

今回のドライバーはこれらの条件に適っていた為、委員会は適合と裁定しました。

以前、アライメント目的で松山選手がドライバーのフェースの溝にペイントしたことで失格になりました。

このケースでは、そのペイントはアライメント目的であったものの、
溝からはみ出しフェースに僅かな凹凸ができたことから
「球の動きに不当に影響を及ぼす可能性がある物質」とみなされ不適合クラブと裁定されました。(規則4.1a(1))

また、JLPGAツアーでは
2021年にドライバーのフェースに計測用に貼られた小さなシールを付けたままプレーして失格になったケースもありました。

ここでのポイントはシールがクラブの性能やストローク後の球の飛び方に影響したかどうか
という判断基準ではないということです。

尚、2023年のルール改訂では、
このようなシールがフェースに貼られたままうっかりラウンドをスタートした場合でも、
その貼られた状態でストロークをしていなければ、
シールを剥がして残りのホールで罰なしに使うことができます。
(規則4.1a(3)例外)

以前はシールを剥がしても使用できませんでした。

用具規則はとても複雑で、
ペイントやシールなどの付属物はクラブの部位や位置、目的などによっても認められたり認められなかったりします。

クラブに何かを取り付けたり装飾したりする場合はお気をつけください。

 

2025.06.30

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「教えて!Nory」

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

【質問】

ルールが大改訂される前は、
ワッグルの最中にクラブが枝に触れて葉っぱが落ちた場合はライの改善として、罰が課されていましたが、
現在のルールブックを見てもワッグルの最中に枝に触れて葉っぱが落ちた場合の罰が明記されていない様なのですが、
今一度、明確に解説頂けませんでしょうか。

【解説】

ご質問者様、ご質問ありがとうございます。

この内容に関する規則は、2019年のゴルフ規則の大改訂の前後で変更はありません。

私が競技委員になった2012年以降の裁定集(2012~2013、2014~2015、2016~2017)も全て調べて改訂はなかったので、
少なくとも2012年以降の解釈は変わりません。

プレーヤーの球が木の近くにあり、練習スイングやワッグルなどをした結果、木の葉っぱを数枚落としてしまった場合、
葉っぱを数枚落としたからと言って、自動的に規則8.1aの一般の罰が課される訳ではありません。

それは単にそのスイング区域やスタンス区域などの状況を変えたとしても、
プレーヤーのプレーに対して潜在的な利益を生み出していなければ違反とはならないからです。

規則8.1aには、「ストロークに影響を及ぼす状態を改善するプレーヤーの認められない行動」について書かれていますが、
その中にプレーヤーのスイングやスタンス区域に生長している自然物を動かしたり、曲げたり、壊してはならないとあります。

このケースですと、スイング区域に木の枝があり、ワッグルをした際に枝に付いている葉っぱが落ちたとのことですが、
その枝にまだ何十枚もの葉っぱが残っていて状況がほぼ変わらず、
スイング区域を改善したことにならないとのことであれば罰はありません。

このようなルーリングは実際でもありますが、ほとんどのケースで同様に罰なしの裁定となっています。

しかし、もし落とした葉っぱがスイング区域にある唯一の葉っぱであり、
この葉っぱが無くなったことでスイング区域が明らかに改善されたとなれば一般の罰、
つまり2罰打が課されます。

また落とした葉っぱを枝に付け直すことはまず不可能なので、罰は免れず、
プレーヤーはその改善された状況でプレーを続けることになります。

規則8.1c(1)には、「動かした木の枝、草、動かせない障害物を元の位置に戻すことによって改善を無くした場合、罰はない」
とありますが、葉っぱを枝に付け直すことはテープなどを使わない限り、付け直すことはできません。

しかし規則では元の状態に復元しようと、他の物質を使用することはできないとあるのでテープの使用は認められません。

もし枝葉のある木の近くで練習スイングをするときは、
ストロークに影響を及ぼす状況の改善とみなされないように慎重に行動しましょう。

2025.06.30

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ルーリングに要する時間

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

JLPGA2戦目となるVポイント×SMBCレディスゴルフトーナメントの2ラウンド目で起こったことです。

18番ホール(パー5)のグリーン左側でルーリング要請があり、近くにいたレフェリーが駆けつけました。

プレーヤーはツーオンを狙ったのですが2打目を左に曲げてしまい、グリーンから30ヤード離れた位置に止まりました。

グリーン周りはホスピタリティーテントやスタンドに囲われており、 球とホールの間にはリーダーズボードが介在していました。

プレーヤーはそのリーダーズボードから罰なしで介在の救済を受けられたので、球をあるがままにプレーするか、
臨時の動かせない障害物(TIO)からの介在の救済を受けられるとプレーヤーに説明しました。(ローカルルールひな型 F-23)

ところがプレーヤーではなく、そのキャディーは実際にはホールの左側を狙いたいから、
その狙い目を考えるとレフェリーが示した救済エリアよりも7ヤードほど右側に球をドロップしたいと要求してきました。

このキャディーは外国人で英語しか話せないため、現場で対応したレフェリーの説明が理解できず、
雇った日本人プレーヤーも英語が話せず、どうしてよいか分からずにルーリングが停滞してしまいました。

そこでセカンドオピニオンで私が対応したのですが、キャディーに
「TIOの救済エリアはプレーヤーの狙い目は関係なく、
ホールとリーダーズボードの右端を結んだ線から1クラブレングス離れた箇所が基点となる」
と説明しても納得しません。

キャディーはゴルフ規則を理解しないまま、興奮状態で誤った主張を繰り返すばかりです。

しかしプレーヤーが、キャディーの主張する箇所に球をドロップしてプレーした場合は、
誤所からのプレーで2罰打が付いてしまいます。

そこでプレーヤーに再度、ルールを説明したところ、正しい救済エリアに球をドロップしてプレーを続けました。

結局、このルーリングは18分も要してしまい、18番ホールはティーに2組待ちという大渋滞を招きました。

その結果、プレーの進行が著しく遅れてしまい、予定していた最終組の終了時間は20分超えてしまいました。

プレーヤーやキャディーは、1打が掛かっている中で競技しているのは理解できます。

しかしゴルフ規則を知らないで自身の要求を押し付けるのは誤りです。

ルーリングを要請したのであれば、レフェリーから現場での処置の選択肢や方法を聞いた上で、
次のプレーをどうすべきかを考えて行動に移さなければなりません。

そうでなく、別の場所にドロップを主張してルーリングが長引けば、不当の遅延となります。

プロツアー競技ではプレーの進行が著しく遅れると、
テレビの放送枠、コースのメンテナンス、ラウンド後の練習時間、ギャラリーバスの送迎時間など多くに影響を及ぼします。

それ故、これらの状況も踏まえて行動しなければいけません。

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