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2025.11.26

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

ソニー選手権の日没サスペンデット

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

9月に行われたソニー日本女子プロゴルフ選手権大会は大洗ゴルフ倶楽部で開催されました。

132名の出場選手を回すために午前の部と午後の部に分け、
トップは6:20、最終組は12:45にスタートしました。

1Rは雷のため中断となり、サスペンスデットになりました。

1Rを2日目の6:57分にプレーを再開して8:43に終了。

2Rは7:30にスタートしてそのまま、
サスペンデットになった選手は1R終了の約40分後に2Rをスタートしてこの日は18ホール以上プレーすることになりました。

2Rの午後スタートの最終組は13:55だったため、
17:51の日没だとラウンドが終わらない計算になり、日没サスペンデットはほぼ決定していました。

それでも、3日目に2Rを残したくない選手達は脅威のスピードでプレーし、
結果的に残った組はアウト上がりが2組と1人、イン上がりが1組だけでした。

17:43に日没のため、通常の中断のエアホンを鳴らしたとき、
9番グリーンでプレーしていた組のうち2人の選手はホールアウトしてラウンドを終えましたが、
1人はカットラインの+3におり、24ヤードの大事なバーディーパットを残していたため、
プレーを中断することを決めました。(規則5.7b)

その時、セカンド地点にいた後続組は、ホールアウトすることを選び、組の終了する順番が入れ替わることになりました。

通常の中断の場合、その組の選手が1人でもホールをスタートしていたら、
プレーを中断するか、そのホールを終了するか選択することができます。(規則5.7b(2))

プレーを中断することを選んだ1人のカットラインにいた選手は、
マーカーの署名をして他の2人の選手がスコアカードを提出できるようにしました。

担当だった私は、残された彼女のパットをマーカーとして付き添うことになり、
17ホールマーカーしてくれた選手からサインをもらい、そのスコアカードを預かることになりました。

そうすることでマーカーの選手は翌朝プレーを再開するときに現場にいなくても良いことになりました。

3日目の朝、2Rは7:24分にプレーが再開されました。

その再開前の1時間前にその選手のキャディーが練習グリーンで練習器具を使用してパットの練習をして良いかと尋ねてきました。

この場合、問題はありません。

プレーの中断中は委員会が認める指定練習グリーンや打撃練習場で練習して、練習器具を使用しても良いですし、
アドバイスを受けても問題ありません。

それは、規則5.7aに基づくプレーの中断中は
ラウンドの途中ではあってもラウンドをプレーしていることにはならないからです。(規則5.1)

その選手は、7:24分の再開前に9番グリーンに来て一生懸命プレーのラインを読んでいました。

再開のエアホンが鳴った後、意を決したように打ったロングパットはホールに入り、
朝早くから観戦にいらしたお客様は優勝パットかのような盛大な拍手を送っていました。

その選手は+2で見事予選通過し、私はアテストエリアでスコアカードにマーカーとして署名した際に、
彼女が再開前の1時間ずっと24ヤードのパター練習をしていたことを知りました。

あっぱれです。

2025.11.26

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「教えて!Nory」

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

【質問】

お世話になります。

ダブルノーリー、タケさん、いつもこのコーナーで学ばせてもらっています。

先日の競技でわからないことが起きたので教えてください。

同伴者からもメールが来ているかもしれませんが、よろしくお願い致します。

同伴者がセカンドショットを左方向に打ってしまい、
ボールは違うホールのティーエリア近く、保護ネットがあってカート道も近い、刈っていない深いラフに。

自分は25ヤードほど前を見ていたのですが、他の人にニヤレストなどを確認してボールをドロップ。

クラブを取りに行ってから、ボール近くで素振りを。

2度目ぐらいの素振りの時にラフにあった違うボール(ロストボール)を打ってしまいました。

本人は「見えなかった。知らなかった。打つ意思は無かった」と言っています。

ペナルティーは付くのでしょうか?

その日はノーペナでスコア登録しました。

【解説】

ご質問者様、ご質問ありがとうございます。

解答から申しますと、ペナルティーはありません。

球を打つ意思のない練習スイングを行っているときに隠れているロストボールにクラブが当たったとしても
練習とはみなされません。(規則5.5a)

それなので、同伴プレーヤーの「見えなかった。知らなかった。打つ意思は無かった」という主張は
裁定するにはとても重要なポイントになります。

反対に、打つ意思を持って見えているロストボールを打ってしまうと、
規則5.5の違反による一般の罰がそのホールに課されます。

ホールとホールの間に起きた出来事の場合は次のホールに適用されます。

別のケースですが、今年のソニー日本女子プロゴルフ選手権大会の最終日、
16番ホールで、優勝した金澤選手はレフェリーを呼んで何かを確認した姿がテレビに映っていました。

実は、彼女がラフで素振りをしているときに偶然にも松ぼっくりを打ってしまい、
練習ストロークとしてペナルティーが課されるのか確認していました。

そもそも松ぼっくりをクラブで打つこと自体練習ストロークではありませんので(詳説5.5a/1)、
偶然にクラブが松ぼっくりに当たっても罰はありません。

仮に、偶然に打ってしまったロストボールや松ぼっくりがインプレーの球を動かす原因となった場合は
インプレーの球を動かした1罰打(規則9.4b)が課され、元の箇所にその球をリプレースしなければなりません。

ご参考にして頂けますと幸いです。

2025.11.26

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木の上に球が止まってからプレーの中断となる

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

ソニー日本女子プロゴルフ選手権は大洗ゴルフ倶楽部で開催されました。

ここは松の木が多く、ショットを曲げると球が木の枝に止まってしまうことがあります。

1ラウンド目の8番ホール(パー3)では、プレーヤーのティーショットがパッティンググリーン右の松の枝に止まり、
その直後に雷の為、即時中断のエアホンが鳴りました。

この時、球らしき物が枝に止まっていることは確認できたのですが、
プレーヤーはここで球の捜索をすべきか止めるべきかを悩んでいました。

何故なら、ここで球の捜索を続けて、その間に自分の球だと確認できた場合、
翌朝にプレーの再開をするとき、たとえ夜の間に風で球が地面に落ちていたとしても
木の枝に止まっていた場所にあったものとしてプレーを続けなければならないからです。(規則5.7d(2))

これが、球の確認を行っていなかった場合、翌朝の捜索時間内にプレーヤーの球が木の下のラフで発見されれば、
そこからプレーを続けることになります。(規則18.2a)

ちなみに、球の捜索はプレーの中断となっても行うことができ、捜索を打ち切らない限り3分間の時計は止まりません。

そのため、3分間の捜索時間が終了した時に球が見つからなければ、
プレーの中断中であっても、その球は紛失となります。(詳説18.2a(1)/1)

一見、すぐに球を確認しない選択肢の方がお得な感じがするかもしれませんが、リスクも伴います。

それは、翌朝のプレー再開前に球が木の枝の上にも木の下のラフにもない場合、
プレーヤーの球は紛失球となり、ストロークと距離の救済が唯一の選択肢になります。

そのため、アンプレヤブルの球の選択肢はなくなります。

結果的にこの選手は、プレーの中断のときに球の捜索を止め、翌朝まで待ちました。

すると、捜索を始めてからプレーヤーの球らしきものが木の枝の上にすぐに見つかり、
ペットボトルを投げてその球を落とそうとしましたが、結局、捜索時間内には確認することはできませんでした。

プレーヤーはストロークと距離の1罰打のもと、ティーイングエリアに戻ってプレーを再開することになりました。

2025.11.03

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「教えて!Nory」

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

【質問】

久しぶりにメッセージします。

先日、ライの改善の話がありましたが、以前、草むらにボールが隠れているのをボールが見えるところ迄、
手では触れずにアイアンで草刈りして、ボールを打っている某会社の会長さんがいました。

勿論、これはペナルティーになるかと思いますが、一体これは何罰打になるのでしょうか?

過去にはティーイングエリアでデベソを注意したら白のティーマーカーを動かしたこともあります!

兎に角、この会長さんは独自のルールを作るので、一緒にラウンドすると周りは困ってしまいます。

大変なんですよね~!

【解説】

ご質問者様、ご質問有難うございます。

たとえプライベートのゴルフだとしても、このような会長さんとのプレーは大変だとお察しします。

まず1つ目の質問です。

実際の状況を見ていないので明確には答えられませんが、罰なしか2罰打のいずれかになります。

規則7.1aには、「球の捜索において、球を見つけて確認するために合理的な行動をとることができ、
その行動には草、ブッシュ、木の枝、その他の生長または付着している自然物を動かすこと、
曲げること、そのような物を壊すことが含まれます。

ただし、球を見つける、または確認するために合理的な行動をとったが、結果として壊してしまった場合に限ります」

このようにフェアな捜索をした上で、ストロークに影響を及ぼす状態を改善した場合、
その改善がフェアな捜索の結果であれば罰はありません。

しかし、改善がフェアな捜索の為に合理的な限度を超えた行動の結果である場合、規則8.1aの違反に対して2罰打となります。

ご説明にあったように、草むらに隠れている球を見えるところまでアイアンで草刈りしたのであれば、
合理的な限度を超えた行動である可能性は高く、違反と裁定されるでしょう。

2つ目の質問ですが、ティーイングエリアでティーアップした球がティーマーカーより前にあり、
それを注意したらティーマーカー自体を球の前に動かしてティーショットしたということですね。

これは規則6.2b(4)の「ティーイングエリアからプレーするときにティーマーカーを動かすことの制限」に書かれていますが、
プレーヤーがティーイングエリアからストロークをする前にティーマーカーを動かすことによって
ストロークに影響を及ぼす状態を改善した場合、規則8.1aの違反に対して2罰打を受けます。

しかし、このケースでは、プレーヤーはティーアップした場所がティーイングエリアの前にあり、
それを直すために、ティーアップの位置を動かさず、
ティーマーカーを動かすことによってティーイングエリアに球があることにしたならば、
委員会は規則1.2aのゲームの精神に反する重大な非行として失格とすることができます。
(詳説6.2b(4)/1)

2025.11.03

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球が空中に飛ぶことなく地面にくいこんだ場合

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

AIG女子オープンの2ラウンド目。

今、注目のロッティー・ウォード選手が16番ホール(パー4)でルーリング要請をしました。

イギリス生まれのウォードはアマチュアからプロに転向した初戦のスコティッシュオープンで優勝し、
AIGでも優勝候補に挙げられていました。

そんなウォードは16番ホールの2打目をミスショットし、
グリーン右手前の膝近くまであるフェスキューのラフにすっぽり隠れてしまいました。

そこから3打目で横のフェアウェイに出そうとストロークしたのですが、
球はフェスキューの中に覆われたまま同じ場所にとどまりました。

その球がラフに埋もれたままの状態だと確認したウォードはレフェリーを呼び、
「自分の球はラフの中でくい込んでいるように思う」ということで、
罰なしで地面にくい込んだ球の救済を求めたのです。

しかしレフェリーはストロークをした時に球が空中に飛んでいないことを確認し、その場合であれば、
「たとえ球が地表面以下にあったとしても、地面にくい込んでいることにはならず、罰なしの救済は受けられない」
と伝えました。

これは規則16.3a(2)に記載されており、
例えば、誰かに踏まれて球が地面に押し込まれた場合や、
救済を受けるときにドロップした球が地面にくい込んだ場合も、
同様に地面にくい込んだ球の救済は受けられません。

ウォードはあるがままの状態でプレーすることは困難と判断し、アンプレヤブルとみなしました。

そして球とホールを結んだ20ヤード後方まで下がり、
カートやギャラリーが歩いて踏みつけられてできた自然道に球をドロップしました。

これは規則19.2bの後方線上の救済で1罰打をスコアに加えます。

ウォードはこの地点からホールまで58ヤードある距離を5打目でグリーンに乗せ、
2パットでこのホールをトリプルボギーとしました。

そんなトラブルに見舞われたウォードですが、
2日目の強風の中でスコアを落としたのはこの16番ホールと11番ホールのボギーのみ。

他のホールではバーディーを6つ取って順位を上げました。

多くの選手がスコアを崩す中、この日を通算-2の11位タイで終え、最終的に通算-4の8位タイで大会を終えました。

女子ゴルフ界は、ウォード選手のように海外でも若手の活躍が目覚ましく、ツアーに大きなインパクトを与えています。

2025.10.15

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デシャンボーがUSオープンで危うくルール違反となる

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

6月にオークモントCCで開催されたUSオープンで昨年の覇者として参加したブライソン・デシャンボーが
1ラウンド目の4番ホールで危うく罰打を課されるところがTVに映り、話題となりました。

4番ホール(パー5)でティーショットを右のバンカーに入れ、
顎の高いバンカーから2打目をフェアウェイに出した球は、ギャラリーが歩くクロスウェイにあり、
USGAはローカルルールで、緑線で囲われたそのクロスウェイを修理地と定めていました。

デシャンボーはその修理地から救済しようと球を拾い上げましたが、
正しい救済エリアが本人の望んだ場所と違うと分かると、拾い上げた球を元の位置にリプレースできると思い、
現場にいたレフェリーにそう尋ねました。

しかし規則では、修理地からの罰なしの救済を受けるつもりで自分の球を拾い上げ、
その後になって気が変わり、処置をしないと決めた場合、その球を拾い上げる権利はもはや無効となります。(詳説9.4b/4)

もし球があった元の箇所にリプレースするとなると、
インプレ―の球を拾い上げたことにより規則9.4の違反で1罰打を課すことになります。

そのことをレフェリーから伝えられると、デシャンボーは1罰打を免れようと、
望んだ場所ではないけれど、修理地の救済をしようと決めます。

その場所は元の位置より5ヤードほど後ろに下がったところなのですが、
デシャンボーは更に勘違いして、救済エリアにドロップすべきところをプレースしてしまいます。

再度、レフェリーに誤りを指摘され、プレースした球を拾い上げ、罰なしにドロップして救済を正しく終えました。

もしプレースした球をそのままプレーした場合、誤所からのプレーで2罰打を受けるところでした。

しかしプレーする前だったので、規則14.5bに基づき、罰なしに誤りを訂正することができました。

この教訓として皆様にお伝えしたいのは、
もし球が修理地や障害物などの上や近くに止まっていて罰なしの救済が受けられるとしても、
すぐに球を拾い上げないことです。

それは拾い上げた後に、ドロップすべき救済エリアが球の止まっている位置より好ましくない状況となる可能性があるからです。

その辺りも見極めてから正しく救済を始めましょう。

2025.10.15

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プレーの再開のエアホンが鳴る前にストロークする

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

6月に開催された宮里藍サントリーレディスオープンの3日目は、
トップの組がスタートした直後から激しい雨が降り、2度の中断と再開を繰り返しながらのラウンドとなりました。

その2度目の中断は、激しい雨の影響でパッティンググリーン全体に水が浮いて9時02分に中断となりました。

その20分後に雨は止み、グリーン上の水は引いたものの、バンカーの水溜まりが残ったままだったので、
特に酷かった3つのバンカーの水抜き作業を終えた9時41分に再開をしました。

その後は雨が降ったり止んだりを繰り返したものの、中断なく3ラウンドを終えることができました。

ところが翌日の4ラウンド目の競技中、ある大会関係者より、
「3ラウンドの2回目の再開のエアホンが鳴る数分前に、
ある選手が10番グリーンで1メートルのパットをストロークしたのを見たけど問題ないのか」
と質問されました。

この時、当該選手は既に4ラウンドをスタートしていた為、
ラウンド終了後に集計所で内容を確認したところ、事実であったことが分かりました。

結果的に、プレーヤーは3ラウンドの10番ホールに一般の罰(2罰打)を足してスコアを修正することになりました。

3ラウンドのこのプレーヤーの組は、10番ホールでパッティング中に中断のエアホンが鳴りました。

この時、3選手のうち2人は既にホールアウトしていて、あと1人がショートパットを残すのみという状況でした。

通常の中断なので、エアホンが鳴った後でもプレーを続けることができますが、
グリーン上に水溜まりができた為、パットすることができませんでした。

そこでプレーヤーはプレーを止めて、近くにあるトンネルで雨宿りすることにしました。

しばらくすると雨は止み、グリーン上の水が引いたため、
プレーヤーはパッティンググリーンに戻って、再開のエアホンが鳴る数分前にパットしてホールアウトしてしまったのです。

何故、このような行動を取ったのかと訊ねると、
プレーヤーは危険が及ばない通常の中断だった為、ホールをプレー中であれば、
中断のエアホンが鳴ってもそのホールに限り、終了できると理解していました。

これ自体は正しいのですが、問題は中断のエアホンが鳴った後に、
グリーン上に水溜まりがあった為にプレーヤー自身がそこで一旦、プレーを中断したことです。

規則5.7bには、
「ホールのプレー中に通常の中断となった場合、プレーヤーがそのホールを終了する前にプレーを中断した場合、
委員会がプレーを再開するまで、プレーヤーは別のストロークを行ってはならない」
とあります。

このケースでは、プレーヤーがホールアウトせずにパッティンググリーンを離れて雨宿りをしたことでプレーを中断したとみなされ、
プレーの再開のエアホンが鳴るまでプレーを待たなければなりませんでした。

この違反をした場合は失格となりますが、
幸いにもこの規則には例外があり、再開のエアホンが鳴る5分以内にストロークをした場合、
規則5.3a例外2が適用され、一般の罰となりました。(規則 5.7c(2)例外)

これは例えば、プレーヤーがスタート時間より前にティーショットをプレーした時と同様に、
それがスタート時間の5分以内であれば失格を免れ、一般の罰を受けるのと同じです。

このことをプレーヤーに説明し、
前日の3ラウンドのスコアカードを提出する前には受けていたことを知らなかった2罰打を加えて
スコアを修正しました。(規則 3.3b(3)例外)

2025.08.17

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

パッティンググリーン周辺の縁取り用の溝

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

5月に台湾で開催されたCTBCレディスオープンは
台北にある東方高爾夫球場(Orient Golf & Country Club)で開催されました。

2ラウンド目の14番グリーンでルーリング要請があったので行ってみると、
プレーヤーの球がグリーン周りの縁取り用の溝の上に止まっていました。

この大会では追加ローカルルールで
ローカルルールひな型F-19の「パッティンググリーン周辺の縁取り用の溝」を採用しており、
溝に球が触れていたり、溝が意図するスイングの障害となる場合、罰なしの救済が認められました。

プレーヤーの球はパッティンググリーンにあったので、
規則16.1dに基づいてパッティンググリーンでの異常なコース状態から障害がある状態と同様に救済が受けられます。

そして完全な救済のニヤレストポイントは、
溝に球が触れず、また意図するスイングの障害が避けられる、
ホールに近づかないパッティンググリーンかジェネラルエリアに球をプレースしなければなりません。

このようなルーリングでは、多くの場合、
救済箇所は球の止まっていた地点のすぐ後ろのカラーとなります。

何故なら、通常、ニヤレストポイントを決めるとき、
まず球から等距離にその基点があるか探っていきますが、
ちょうどそこには円型に溝が切られていて、等距離上のニヤレストポイントは球から遠ざかっていきます。

また、プレーヤーはパッティンググリーン上にある球の救済をそのグリーン上にしようとしますが、
実はカラーの方がより近い救済箇所になることが多く、その事実を見逃してしまうことがあります。

このローカルルールの注意点は、
切り溝が意図するスタンスやプレーの線上にあったとしても救済が認められないことです。

つまり 救済のニヤレストポイントを決めるときも、
溝がスタンスやプレーの線上にあっても問題ありません。

2025.08.17

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「教えて!Nory」

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

【質問】

おはようございます。

先日のラウンドでのことです。

グリーン横のガードバンカーにボールが転がり込み、ヘリにボールがへばり付いてしまいました。

グリーン方向にテークバックが取れず、同伴者の助言に従いアンプレヤブルを宣言したのですが、
正しい処置だったのでしょうか。

またこの場合、その後の処置はどうするべきだったでしょう。

同伴者がバンカー内の打てる場所にリプレースして1罰打と言ったので従ったのですが、
正しかったでしょうか。

【解説】

ご質問者様、ご質問ありがとうございます。

バンカー内でストロークができない場合、アンプレヤブルとみなして救済することはできます。(規則19.2)

ただし、その方法は球をプレースではなく、ドロップしなければなりません。

もしバンカー内でプレーを続けたい場合は、1罰打で2つの選択肢があります。

1つ目はラテラル救済で、
バンカー内で球の箇所からホールに近づかない2クラブレングス以内の救済エリアにドロップです。

2つ目は後方線上の救済で、
バンカー内でホールから球を結んだ後方線上にドロップです。

もし球が止まっている位置からして、この2つのドロップ箇所が好ましくない場合は、
2罰打でバンカーの外でドロップすることができます。

その方法は、バンカーの外でホールから球を結んだ後方線上にドロップすることです。

またプレーヤーはいつでもストロークと距離の罰で、
直前のストロークが行われた場所からプレーをすることができます。(規則14.6)

これがティーショットであれは、ティーイングエリアからプレーすることになり、
フェアウェイやラフなどのジェネラルエリア、或いはバンカーからプレーした場合は、
その地点からホールに近づかない1クラブレングス以内に球をドロップしてプレーを続けます。

また稀ではありますが、高速グリーンからプレーした球がバンカーのヘリに止まった場合は、
パットした箇所に球をプレースしてプレーを続けることができます。

つまりストロークした球の止まった所からプレーしたくないと思えば、
いつでも1罰打で直前のストロークが行われた箇所から再プレーすることができます(規則18.1)。

この質問で気になったのは、同伴プレーヤーの「助言」という言葉です。

もし同伴プレーヤーが、バンカーにある球のライを見て、
打てそうにないと思い、「アンプレヤブルしたらいいんじゃない」とか
「自分だったらアンプレヤブルする」とプレーヤーに言ったとすると、
それはプレーする方法の決定に影響を与えた可能性があるのでアドバイスを与えたことになり、
その同伴プレーヤーは2罰打を受けます。
(定義:アドバイス)

プレーヤー本人は、そのアドバイスに従ったとしても、
そもそもアドバイスを求めていなければ罰はありません。
また同伴プレーヤーはアンプレヤブルの処置の方法を伝えていますが、
その方法が正しいか誤りかに関わらず、規則を知らせることはアドバイスには含みません。

覚えて頂けると幸いです。

2025.08.02

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全米プロ選手権の泥つきボールの扱いに疑問

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

全米プロ選手権は5月、ノースキャロライナ州のクエイルホロークラブで開催されました。

同じ組で回っていた世界ランクトップ3の
スコッティ・シェフラー選手、ザンダー・シャウフェレ選手とロリー・マキロイ選手が
16番ホールで全員ダブルボギーを叩く珍事がニュースとなりました。

その大きな要因が、大会前日の大雨の影響で地面が柔らかく球に泥が付着しやすい状況の中、
大会を主催する全米プロゴルフ協会は球を拭くことができるローカルルールを採用しなかったということです。

シェフラー選手は16番ホールのフェアウェイ、残り212ヤードのセカンドショットを左に巻いて池に入れてしまいました。

シェフラー選手は
「フェアウェイの真ん中で、どこに飛ぶかわからない泥の付いたボールを打つことは本当にフラストレーションが溜まる。
ゴルフはあるがままでプレーすべきだという純粋主義者は、
私たちが人生をかけてボールの打ち方、コントロールの仕方を習得しているにも関わらず、
ルール次第で突然それが奪われる気持ちを理解していないと思う」
とコメントしました。

球に泥が付く場合、委員会はローカルルールひな型E-2を適用することで
ジェネラルエリアにある球を拭くことを認めることができます。

このローカルルールが適用されている場合、
プレーヤーはジェネラルエリアのラフやフェアウェイで球をマークして拾い上げ、拭き、
元の箇所にリプレースすることができます。

このような救済は「コースはあるがままにプレーする」というゴルフの原則から外れているため、
コースの必要な部分、例えば「6番ホール」などに限定されるべきです。

他にも委員会はローカルルールひな型E-3プリファードライを適用することがでます。

これはジェネラルエリアのフェアウェイの長さ以下の区域においてのみ使うことを意図しており、
委員会が定める救済エリアのサイズに球をプレースすることで球を拭くだけでなく、ライを選ぶこともできます。

ちなみに、JLPGAでは球の箇所からホールに近づかない1クラブレングス以内と定めています。

このようなローカルルールを適用するかしないかの判断はとても難しいです。

なぜなら、ツアーで1年間プレーする場合、
一貫性を持ってその判断をしないとプレーヤーは不満と怒りを委員会にぶつけてくるからです。

シェフラー選手は最後に「ルールを決めるのは僕じゃない。ルールの下での結果を受け入れる必要がある」とコメントしていました。

その言葉に決める立場にいる私は少しホッとしました。

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