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2026.02.20

Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド

ラウンド中に突然の病気や怪我に見舞われた場合

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

昨年の大会で、ある組のプレーのペースがやや遅いと思い、パー3のティーイングエリアから少し離れたところでプレーを見ていました。

2人がティーショットを終え、3人目のプレーヤーがティーアップしようとしたら手から球がポロっと落ち、
そのままバタンと倒れてしまいました。

驚いた私は、慌ててギャラリーロープをくぐり、プレーヤーの元へ駆け寄ると、顔色は悪く意識が朦朧としていました。

これはとてもじゃないけど、プレーが続けられる状態ではないと思っていたところ、
ギャラリーの中にお医者さんがおり、その場で介抱してくださいました。

そのお医者さんによると、プレーヤーはめまい症を患っているので、ひとまず日陰に連れていって横にしてあげるといいとのことで、
ギャラリーの目に入らない涼しい場所まで連れていき、仰向けの状態で休ませることにしました。

しかし回復するまでずっと待つ訳にも行かず、同伴プレーヤーも困惑していました。

このような状況で適用されるのが、規則5.6aの「プレーの不当の遅延」です。

通常、プレーヤーはラウンド中にプレーを不当に遅らせてはいけません。

しかし突然の病気や怪我に見舞われた場合は、回復のために15分までの時間が認められます。

例えば、ラウンド中に熱中症になったり、蜂に刺されたり、転んで捻挫をしたりした場合です。

このケースでは、プレーヤーは12時40分にプレーを止めたので、
同伴プレーヤーと医師に12時55分まで回復を診ることができると伝えました。

するとプレーヤーは7分ほど横になったところで回復し、プレーを続けることにしました。

プレーヤーは15分の時間を使い切っていないので、もしまた気分が悪くなった場合、残りの8分間を治療に当てられると伝えました。

つまり15分という制限時間は、プレーを止めて処置に費やす合計時間であり、
再度、治療が必要となれば残りの時間を充てることができます。

その後、万が一に備えてしばらくその組に付いていきましたが、
プレーヤーは残りのホールを止まることなくラウンドを終えることができました。

もし治療に15分を超えてしまった場合は、不当の遅延となり罰が課されます。

一回目の違反は1罰打となるので、プレーを続けるか棄権するかを考える要因となるでしょう。

また処置で時間を要する場合は、後ろの組を先に行かせることも考慮します。

2026.02.20

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「教えて!Nory」

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

【質問】

私は身長が高くて175cm、かなり前の女子プロ選手のナタリー・ガルビスと同じです。

メンズのクラブを使っていますが、冬になると腰の調子が悪く、前傾姿勢が辛くなります。

そのせいか、この季節、シャンクが多く多発するのですが、
ボールの手前から踵までこれから打つクラブを地面に置いて距離を測ると、
シャンクの時は、ボール2つくらい距離が短くなっています。

そこで、誰もやっているのを見たことがなく、自分もやったことがないのですが、
シャンクを出さないために、ラウンド中にボールの手前から踵まで、
これから打つクラブを地面に置いて距離を測って素振りをしてから、
クラブを拾い上げてショットをするのはルール違反でしょうか?

ルール違反でなければ、是非、シャンクの出やすい5鉄を打つ時にルーチンにしたいと思っています。

お教え願います。

【解説】

ご質問者様、ご質問有難うございます。

その行為は規則10.2b(3)の違反となり、一般の罰(2罰打)を受けます。

これはたとえストロークをする前に、その置いたクラブを拾い上げていても、罰は免れません。

この規則では、
「プレーヤーが目標を定める援助とするため、
または行うことになるストロークのためのスタンスをとる際の援助とするために、物を置いてはならない」

と書かれています。

これは例えば、プレーヤーが目標を定める、または足を置くことになる場所を示すために地面にクラブを置くことを意味します。

それなので残念ですが、そのルーティーンはできません。

しかしこの「物を置く」とは、物が地面に接していて、そのプレーヤーがその物に触れていないことを意味します。

つまり、そのクラブから手を離さない限り、物を置いたことにはならず違反にはなりません。

メジャーリーガーの大谷翔平選手がバッターボックスに立つとき、
彼は自身の立ち位置を決めるのにバットの先をホームベースの先端に合わせてからグリップエンドに左足がくるように構えます。

このとき、大谷選手はバットから手を離さずに一連の動作を行っています。

これならば違反にはなりませんので、スタンスの位置を確認するのに参考にしてみては如何でしょうか。

2026.02.20

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「教えて!Nory」

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

【質問】

止まった球に小枝が触れていて、これを取り除こうとした際に球が動きました。

私は球を動かさないように努力したにもかかわらず球が動いた場合、
これは「偶然の動き」とはならず、「故意に動かした」ことになるのでしょうか?

また、規則9.4bの例外4にある「動かせる障害物を取り除く」場合の罰なしの「偶然の動き」とは
一体どういうケースがあるのでしょうか?

【解説】

ご質問者様、ご質問ありがとうございます。

まず、規則15には「動かせる自然物や人工物はコースをプレーする上での挑戦の一部とは扱われず、
それらがプレーの妨げとなる場合、プレーヤーは通常、それらを取り除くことが認められる」とあります。

動かせる自然物とは、規則15.1のルースインペディメントのことであり、
小枝のような分離した自然物のことを指します。(定義:ルースインペディメント)

ルースインペディメントはプレーの挑戦の一部と扱われていないため、取り除いても良いのですが、
プレーヤーの取り除く行為が球を動かす原因となった場合、
偶然か故意か、もしくは合理的な行動かに関わらず1罰打が課され、球はリプレースしなければなりません。

これは、球を動かさないように努力したかは問われないところがポイントです。

次に、規則9.4bの例外4にある「動かせる障害物を取り除く」場合の罰なしの「偶然の動き」ですが、
これはパッティンググリーン以外の場所で、規則に基づいて合理的な行動をとっている間に
偶然に球を動かす原因となった場合のケースを扱っています。

動かせる障害物はルースインペディメントと同様に、プレーの挑戦の一部とは扱われないため、取り除くことができます。

しかし、ルースインペディメントの取り除きとは異なり、動かせる障害物は人工物なので
取り除いた結果、球が動いたとしても罰はありません。(規則15.2)

元の箇所にその球をリプレースすれば良いのです。

それ故、動かせる障害物を取り除く行為で球が動けば、すべて「偶然の動き」となるでしょう。

この状況で唯一考えられる「故意」の行動は、
動かせる障害物に寄りかかっている球の処置をするときに、誤って球を拾い上げてしまうことです。

この場合、規則9.4bに基づき1罰打を受けます。

例えば、プレーヤーは球が動いたら正しくリプレースするために、球の位置をマークしたとします。

その際に、プレーヤーは反射的にマークしたら球を拾い上げる習慣からその球を拾い上げてしまった場合、
「故意」に自分の球を拾い上げたことになります。

合理的な行動をとっている間の「偶然」の球の動きにはなりません。

皆さんはそのようなことがないように気をつけましょう。

2026.02.20

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「教えて!Nory」

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

【質問】

先日、栃木県の某ゴルフコースでの出来事です。

ティーショットがスライスして右側のOBゾーン近辺へ、
球を探しに行くとドライビングレンジの境目のすぐ脇で、
驚きましたが練習用の球や一般に販売されているメーカーの球など十数球の球がありました。

自分の球には特に固有の印など書いていませんでしたが、
メーカーと番号が一致し、適度な汚れ具合も認識どおりだったので、自分の球と認識して二打目のショットをしました。

しかし、ショット後、3メートル先にメーカーも番号も何となくの汚れ具合も全く同じような球を発見、
もしかするとこちらの球が自分の球だったのかもしれません。

この場合、先程ショットした球を自分の球と確信してプレーしたのですが、誤球の疑いが発生しました。

どうにも気持ち悪いですが、どの様に処理するのが最適でしょうか。

某ゴルフコースへ、、、

ロストボールはなるべく拾っておいてください。

以上、よろしくお願い致します。

【解説】

ご質問者様、ご質問ありがとうございます。

とても興味深いケースで、どのように裁定すれば良いか深く考えました。

解答から申しますと、頂いたご質問には3つの可能性があります。

1つ目は、セカンドショットを打った後に同じ場所で見つけた同一の球がご自身の球だと分かった場合です。

球の確認のために、マークして拾い上げ、必要な分だけその球を拭くこともできます。(規則7.3,規則14.1)

その結果、その球がご自身の球だと確認できたら、
その球を元の箇所にリプレースしてプレーしなければなりません。(規則7.2,規則7.3)

ただし、誤球をプレーしたことがわかったので、2罰打を加えて、次に行われるストロークは4打目となります。(規則6.3c)

2つ目は、マークして拾い上げた球がご自身の球でなかった場合、
サード地点にあるセカンド地点からプレーした球を確認した結果、その球がご自身の球だと分かった場合です。

その時は罰なしにそのままプレーを続けます。

3つ目は、2つの球を確認した結果、どちらもご自身の球だと結論づけることはできなかった場合です。(規則7.2)

この場合、セカンド地点に戻って元の球を3分間捜索することができます。(規則18.2a(1))

仮にその捜索でもご自身の球が見つからなかった場合、
元の球は紛失となり、誤球のプレーをした2罰打とストロークと距離の救済の1罰打で合計3罰打を加え、
ティーイングエリアに戻って打ち直しをしなければなりません。

そのストロークは5打目となります。

ご参考にしていただけますと幸いです。

2026.01.23

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ラウンドの意味

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

昨年10月のスタンレーレディスホンダゴルフトーナメントは東名カントリークラブで開催されました。

その最終ラウンドは濃い霧に覆われたため、いつスタートできるのかわからない状態でした。

大会本部では、54ホールの完遂を目指すために最終ラウンドは18ホール行うことを優先順位としていましたが、
当初7:30スタート予定だったのが、9:50には出場選手のセカンドカットを実施することが決まり、
とうとう10:40には9ホールの短縮ラウンドが決まりました。

通常、9ホールのみを実施する場合、TVやギャラリースタンドが設置されているインコースをプレーしますが、
12番ホールと13番ホールは標高の高いところにあるため、霧が晴れる気配がなく、
朝からコース状況を見ていた競技委員会は、9ホールをプレーすることもままならないと心配になりました。

そこで委員会は、12番ホールと13番ホールを除き、
その代わりに霧の影響が少ない1番ホールと9番ホールを足した変則9ホールでラウンドすることを
主催者やテレビ、運営に提案したところOKが出ました。

スタートホールは1番ホールで、次がいきなり9番ホールなのですが、隣同士なので移動に問題はありません。

そこからインコースへ入っていき、10番ホール、11番ホールと進み、11番グリーンから14番ティーへの移動も歩ける距離でした。

そのあとは18番ホールまで順番どおりに9ホールをプレーすることを選手やキャディーに伝え、11:30にスタートすることができました。

ラウンドとは、委員会が設定した順番でプレーする18(またはそれ以下)のホールです。(規則5.1)

現状、JLPGAではシステムの都合で9ホール単位でしかラウンドを短縮することができませんが、
本来規則では3ホール、5ホール、12ホールでも委員会が決定すればラウンドとして認められます。

2013年にバハマで開催されたUSLPGAの試合でも、
豪雨の影響でプレーできるホールが限られ、1ラウンドを12ホールの短縮競技で開催しました。

このときもプレーするホールの順番は、10-6-7-4-5-11-12-13-14-2-3-8と変則でした。

ラウンド数やホール数というのは競技の条件で定められていますが、
スタンレーやUSLPGAの試合のように、
悪天候により、スタートしていないラウンドのホール数はその状況に対処するために変更することができます。
(オフシャルガイド5A(8))

これからの荒天を考えますと、ラウンドも柔軟に対応していかなくてはならないと思った2025年のシーズンでした。

2026.01.23

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クラブを除外する手続き

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

昨年11月のエリエールレディスオープンはエリエールゴルフクラブ松山で開催されました。

大会の1ラウンド終了後、クラブを除外する手続きを正しく行わなかったために、
アマチュアの叶選手が失格となったことがニュースでも取り上げられました。

叶選手は1番ホールからプレーし、2番ホール終了後に15本のクラブを持ってラウンドをスタートしたことを競技委員に告げました。

立ち会った競技委員は規則4.1c(1)に基づき、そのクラブをプレーから除外することと、
規則4.1bの違反により1番ホールと2番ホールのスコアにそれぞれ2罰打を加えるように告げました。

しかし、その組を担当していたスコアラーさんから詳しく説明を聞くと、
「競技委員要請は2番ホールのプレー中にしていたが、無線が繋がらなかった」と競技委員に告げました。

そこで委員会は、プレーヤーからより詳細を聞こうと18ホール終了後のアテストエリアで事情聴取をすることにしました。

そして分かったのは、叶選手が15本のクラブを持ってプレーしていたことに気付いたのは2番ホールのセカンドショット終了後で、
グリーン周りから打った3打目の後に競技委員を要請したことでした。

そして超過クラブをプレーから除外することなくそのままホールアウトしたのでした。

もしプレーヤーが2番ホール終了後に超過クラブの違反に気づいたのであれば、
合計4罰打の裁定は変わらずでしたが、気づいたのが2番ホールの2打目終了後となると裁定は変わります。

何故なら、規則4.1c(1)の「クラブをプレーから除外するための手続き」は、
次のストロークを行う前にとらなければならず、そうしなかった場合は失格となるからです。

プレーヤーが14本を超えるクラブを持っていて、規則4.1b(1)の「14本のクラブの制限」に違反したことに気付いた場合、
そのプレーヤーは規則4.1c(1)の手続きによって次のストロークを行う前にその超過クラブをプレーから除外しなければなりません。

ここのポイントは、「次のストロークを行う前に」です。

2023年より前の規則では「すぐに」という言葉が使われていましたが、
今はより明確になり、「次のストロークを行う前に」と変わりました。

規則4.1c(1)の違反の罰は重く、正しく行わないと失格になります。

それなので、もし競技のラウンド中に14本を超えるクラブを持ってラウンドをスタートしたことに気付いた場合、
除外するクラブをマーカーかその組の別のプレーヤーに告げる、もしくは他の何らかの明確な行動、
例えば、そのクラブをバッグに逆さまに入れることやゴルフカートの床に置く、別の人にクラブを渡すなどをするようにしましょう。

ルーリング要請をしていたからと言って何でも規則違反から保護されるわけではありません。

競技ゴルフに出場するプレーヤーは、自身を守るためにも絶対に知っておいて欲しいルールです。

2026.01.23

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コース上の霜

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

12月の第1週に行われたJLPGAファイナルクォリファイングトーナメントは、
宍戸ヒルズカントリークラブ東コースで開催されました。

104名の出場選手は4ラウンド(72ホール)の合計スコアで順位付けされ、来シーズンの出場権が決まります。

この時期の宍戸ヒルズの日の出は6時32分ごろ、日の入りは午後4時28分ごろとなり、
104名の選手を回すためにトップスタートは7:50に設定しました。

ところが、3日目は最低気温が3度を下回ることが予報されていたことから、霜が降りたり、コースが凍ることが心配されました。

その状態で一部の選手をスタートさせプレーすることは、
コースが溶けた状態でプレーするスタート時間の遅い選手と比べると不公平な状況です。

しかし、日没の時間を考えると霜や地面が溶けるまでスタートを遅らせる余裕はないため、
コース課さんはパッティンググリーンやティーイングエリアが凍らないように大きなシートを被せて下さいました。

そのシートのことを寒冷紗かんれいしゃと言います。

宍戸ヒルズのコース課さんは18ホール全てのグリーンに寒冷紗を被せて下さり、
練習グリーンやスタートの3ホールのティーイングエリアも同様にして下さいました。

3ラウンドの朝は、予報通り冷え込み、快晴だったことから放射冷却で霜が降りてしまい、
スタート予定の7:50はフェアウェイやグリーンが霜で真っ白になりました。

霜は地面に付着しており、一時的な水でもルースインペディメントでもありません。(定義:一時的な水、ルースインペディメント)

そのため、霜を取り除くことや罰なしの救済を受けることはできません。

フェアウェイやパッティンググリーンの霜をタオルや手で払い除き、
プレーの線やライを改善してしまうと規則8.1aの違反により一般の罰が課されます。

しかし、ティーイングエリアの霜は取り除いても罰はありません。(規則6.2b(3))

スタート前にキャディーさんから、
フェアウェイにある球に付着した霜を「ふーふー」と口を窄めて息を吹きかけることで溶かしても良いかと聞かれました。

これは、息を吹きかけることで霜が溶けたのであれば、認められていないのに球をふいたことになり1罰打となります。(規則14.1c)

また、息を吹きかけたことが原因で球が動けば1罰打です。(規則9.4b)

もし、1つの行為でこのように複数の違反があった場合、
ストロークなどの介在する出来事がないため、1罰打のみ課されることになります。(規則1.3c(4))

結局、3ラウンドはスタートを8:30まで遅らせ、霜がほとんど溶けた状態でプレーが始まり、
日没後にはなりましたが何とかその日のラウンドを終えることができました。

この時期のコースには霜が多いと思いますので、覚えて頂けますと幸いです。

2025.12.29

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貸しクラブでプロテスト受験

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

9月に行われたプロテスト第2次予選の3ラウンドでの出来事です。

あるプレーヤーが、ホテルからコースへ車で向かおうとしたところ、
車の鍵が見つからず、トランクにあるキャディーバッグや用具も取り出せないことでパニックとなりました。

JAFに電話したものの早朝で営業しておらず、スタート時間に遅れる訳には行かないということで、
車とキャディーバッグを諦め、タクシーを呼び、コースに電話をして「貸しクラブを一式貸してください」とお願いしました。

プレーヤーはスタート15分前にコースに到着し、
ショップでシューズ、キャップ、グローブ、球、ティーを購入して1番ホールへ向かいました。

そこで待機していたキャディーマスターは、貸しクラブ2セットを揃えたのですが、貸しクラブがかなり古いことを懸念して、
支配人のキャディーバッグとそのコースのキャディーさんのキャディーバッグも並べて、計5セットを用意しました。

プレーヤーはその中からキャディーさんのウッド数本と支配人のアイアンセットを選び、
そこに唯一ホテルの部屋まで持っていった自身のパターと合わせて計10本でラウンドを始めることにしました。

この時点でスタート1分前。

プレーヤーは借りたクラブを一度も練習場で打つことなくスタートすることになりました。

そこで放ったティーショットは見事フェアウェイを捉えて歩いて行きました。

その間、プレーヤーの父親は自宅からスペアキーを持ってホテルに停めてある車に向かっていました。

プレーヤーからドライバー、フェアウェイウッド、ユーティリティ、
そしてサンドウェッジの4本をそこから取ってコースに届けて欲しいとの連絡を受けていたのです。

そしてハーフターンの時にその4本を受け取り、キャディーバッグに追加して計14本で残りのハーフをプレーしました。

規則4.1b(1)の「14本のクラブの制限 ; ラウンド中のクラブの共有、追加または取り替え」には、
「プレーヤーが14本より少ないクラブを持ってラウンドをスタートした場合、
そのプレーヤーは14本のクラブの制限までラウンド中にクラブを追加することができる」
とあります。

この規則を知っていたプレーヤーは、スタート前にクラブを選ぶとき、
残りのハーフで自分のクラブを4本使えるよう敢えて10本だけ選んで行きました。

何故なら、スタート時に14本選んでしまっては、もう追加できず、
通常のプレーでクラブが損傷しない限り、取り替えもできないからです。(規則4.1a(2))

こんなハプニングがあったにも関わらず、プレーヤーはこの日見事1アンダーで回り、
最終日も好調をキープして無事にプロテスト第2次予選を合格しました。

ラウンド中にクラブの追加ができる規則を知っていたことで、冷静に本数を選び、ピンチを凌いだのはあっぱれです。

またプレーヤーの急な要望に対して、惜しみなくクラブを5セット用意したコースさんもナイスプレーでした。

2025.12.29

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フェースに黒テープを貼ったという記事

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

6月に掲載されたあるゴルフ記事が、その週の試合会場で話題となり、競技委員会の耳に入りました。

その記事には、あるプレーヤーがクラブフェースに黒テープを貼っているという内容でした。

しかし規則では、クラブフェースに如何なる物質も貼ってはならず、
貼ってあるクラブは不適合クラブとみなされます。

そのクラブでストロークをした場合は、規則4.1a(1)で失格となります。

これが事実ならば、これまでの大会でその不適合クラブでプレーを続けてきたことになり、
その事情聴取をしなければなりません。

そこでプレーヤー本人に伺ったところ、
そもそもインタビューを受けた覚えはなく、記事が出ていることやその内容も知らずにいました。

しかし記事には、あたかも本人が14本の使用クラブについて聞かれ、詳細に感想を述べています。

これはどういうことなのか、今度は記事の発行元に伺ったところ、
プレーヤーにインタビューはしておらず、担当のクラブメーカーさんから聞いた
「プレーヤーはこんなことを言っていた」内容をあたかも本人が喋ったように書いたとのことでした。

しかしクラブメーカーさんも、フェースにテープを貼ることは違反と知っており、
そのような加工を施した覚えはなく、またこの記事が出ることも知らずに困惑していました。

そこでプレーヤーのクラブを確認したところ、
実際にフェースに黒テープは貼っておらず、フェースの上部に黒マジックで描いてあるだけでした。

これは用具規則に適っているものの、クラブフェースに油性マジックで線や点を書き入れることについては
「すべきでない」とR&Aから見解が示されているほど、慎重に取り扱わなければならない事例です。

つまり記事の題名にある「フェースに黒テープを貼った」や
文中の「フェース面に黒テープのようなものが貼られている」という表記は、
読者に興味を引いてもらう目的で、事実から大きく逸脱して書かれ、ゴルフ規則を軽んじていることが分かりました。

このことを知り、関係者一同驚愕しました。

まずは本人へのインタビューがなされておらず、
本人の知らないところで記事が出ていること。

改めて内容を確認しますと、どう読んでもそうは取れません。

また記事にはプレーヤーとプレーヤーのクラブの画像が38枚載っていますが、
それは記事が掲載される2ヶ月前に撮ったもので、クラブにテープは貼られていないことが確認できました。

発行元は謝罪と共に、速やかにネットから記事を削除しました。

しかし一度世に出た記事は削除される前に既に多くの目に触れています。

また発行元が削除したとしても、
探せば他のホームページや動画に掲載されており、ネット上では半永久的に遺ります。

プレーヤーに至っては、自身の知らないところで、違反クラブを使用していると疑念を持たれる結果となりました。

またクラブメーカーさんは、違反クラブを作ってプレーヤーに使わせていると誤解され、
競技委員会は大会期間中に事情聴取や対応に迫られました。

ゴルフ規則に関わる内容を掲載するのであれば、
事実に基づき規則を熟知した上で書かなければならず、その責任は重大です。

残念ながら、これまでも過去の記事で、誤った内容や解釈が書かれていることがあり、懸念していました。

今回は内容があまりに事実とかけ離れているのでお話をさせて頂きました。

2025.12.29

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他のホールをプレーしてショートカット

解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん

ニトリレディスゴルフトーナメントの3ラウンド目での出来事です。

この日の16番パー5は、本来のヤーデージである545ヤードより80ヤード前にティーを出して、465ヤードにセッティングしました。

ほとんどのプレーヤーは、このティーならば16番ホールの左へドッグレッグしていくフェアウェイより、
左隣の15番ホールをプレーした方が、ホールまでの距離が短くなり、16番ホールにある2つの池もプレーに関係なくなると考え、
15番ホールのフェアウェイにめがけてティーショットしました。

これに驚いたギャラリーさんからは「そんなことしていいの?」や「危険じゃないの?」と言うコメントを耳にしました。

確かにイレギュラーではありますが、ギャラリーや15番ホールをプレー中の組の安全を配慮すれば、
16番ホールのプレーで、隣のホールのフェアウェイに打つことは、規則上問題はありません。

それは通常のプレーでも、大きくミスショットをした場合に、隣のホールに打ち込んでしまうことがあり、
これもホールとホールの間にラインOBなどの制限がなければあるがままプレーするのと同じです。

この15番ホールで組同士が交差する珍しい光景が続く中、面白いルーリングが幾つかありました。

この日はローカルルールでプリファードライが出ており、
球の一部がジェネラルエリアのフェアウェイの長さかそれ以下に刈られた部分に触れている場合、
元の球の箇所からホールに近づかないワンクラブレングス以内のジェネラルエリアで球をプレースすることができました。

そこでプレーヤーは「16番ホールをプレー中に、15番のフェアウェイに球があってもプリファードライの救済は受けられますか」
と聞いてきました。

これは委員会がローカルルールでそのような制限をしない限り、どのホールのフェアウェイに止まっていても救済することができます。

もうひとつのルーリングは、16番ホールをプレー中の球が15番ティー前のウォークパスに止まりました。

ウォークパスとはティーからフェアウェイの間にある道筋で、プレーヤーが歩きやすいようにラフより短めに刈られています。

プレーヤーに「ここからプリファードライの救済は受けられますか」と聞かれましたが、
ウォークパスの刈り高は20mmでフェアウェイの12mmより高かった為、「受けられません」と答えました。

このようにコースの芝の刈り高は、コースセッティングやメンテナンス作業には重要な情報で
競技委員会も周知していますが、プリファードライのローカルルールを適用する時は、
規則上でも必要な情報となります。

このイレギュラーなプレーは、プレーヤー達がより少ないスコアで上がるにはどうしたら良いかを考え、
機転を効かせてショートカットできる隣のホールをプレーするという選択をしました。

その結果、66人中7人がイーグル、41人がバーディーを取るなどして会場は大いに盛り上がりました。

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