2024.12.17
Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド
ラウンド中にドライバーヘッドが壊れる
解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
ソニー日本女子プロゴルフ選手権の2日目に14番ホールでルーリングがありました。
プレーヤーは前のホールでティーショットをした際に、
ドライバーヘッドの上面部分であるクラウンの接着が剥がれて割れてしまったとのことでした。
そのドライバーではもう打てる状況ではなかったので、
どうしたら良いかの質問でした。
規則4.1a(2)には、「クラブがラウンド中に損傷した場合、
クラブを乱暴に扱った場合を除き、そのクラブを修理するか、他のクラブに取り替えることができる」とあります。
つまり、プレー中に怒りに任せてクラブを地面に叩きつけたり投げたりする以外で、
クラブが壊れてしまった場合、他のクラブに取り替えることができます。
しかしJLPGAを含む主だったゴルフ団体は、ローカルルールで
「壊れた、または著しく損傷したクラブの取り替え」を採用している為、
軽度な損傷では取り替えができない制限を設けています。(ローカルルールひな型G-9)
例えば、シャフトが折れたり、曲がってしまったら取り替えは認められますが、
単にシャフトがへこんでいるだけでは認められません。
クラブフェースは、目に見えて陥没などで変形していれば取り替えられますが、
細い亀裂が入っているだけでは認められません。
今回のケースでは、プレーヤーは通常のプレーでクラブが壊れ、
しかも著しく損傷しているので、クラブの取り替えを認めました。
そこで担当のクラブメーカーさんは、クラブカーからドライバーヘッドを持ってきて、
プレーヤーが18番ティーに来たところで、シャフトから壊れたヘッドを取り外し、
新たなヘッドを取り付けました。
これは同じシャフトを使っているので、修理と思われがちですが、
修理とはラウンドをスタートした時点でそのクラブを構成していたグリップ、シャフト、
クラブヘッドで元の状態に修復することを意味します。
今回のようにクラブヘッドを交換した場合は、
修理の範囲を越えているので取り替えとなります。
このクラブの修理と取り替えの違いを明確にする理由は、
クラブが著しく損傷してなくても修理は可能ですが、取り替えはできないという点です。
このケースのもう一つの注意点は、新たに取り替えたドライバーヘッドについてです。
14番ホールでルーリング要請があったとき、
メーカーさんはドライバーヘッドを新たに取り付けたいと言いました。
それについては問題ないのですが、
レフェリーはその時点で取り付けたいドライバーヘッドをプレーヤーやメーカーさんらが
一緒に持ち運んでいないことを確認しました。
これは規則4.1b(4)の「クラブを追加する、または取り替える場合の制限」にありますが、
ラウンド中にクラブが壊れるかもしれないと心配して、ドライバーヘッドなどの部品を持ち運び、
その部品でクラブを組み立てることを禁じています。
つまりプレーヤーが事前にキャディーバッグに入れてプレーしたり、
クラブメーカーさんがいつでも交換できるようにとプレーを観戦しながら
持ち歩いた部品でクラブを取り替えると違反となります。
何故なら、これを認めてしまうと規則4.1b(1)の「14本のクラブの制限」の効力がなくなってしまうからです。
クラブとは、1本のシャフトにクラブヘッドがついて初めて1本と数えられます。
つまりシャフトだけとかヘッドだけを部品として持ち運んでも
14本のクラブの制限の違反に引っかからないのです。
今回のように、部品として持ち運び、いざ壊れたという時に直ぐに1本のクラブに組み立てて使えてしまうと、
15本のクラブを持っているのと変わらないので、それを制限する為にこの規則があります。
この違反は組み立てて1本のクラブとして追加、
或いは取り替えた時点で一般の罰(2罰打)で2回目の違反は失格となります。
そして違反に気づいたら、次のストロークをプレーする前にプレーから除外する手続きをしなければ、
今度は規則4.1c(1)の失格となります。
このようにクラブの損傷や取り替えには、どのようにして壊れたのか、
著しい損傷なのか、修理なのか取り替えか、取り替える部品は持ち運ばれていないか等、
正しく裁定するまで1つ1つ細かな確認が必要です。