2024.06.11
Green Jacket 楽天GORA presents タケ小山のルールザワールド
霧の中でのプレー
解説:(JLPGA競技委員)阿蘇紀子さん、中崎典子さん
昨年6月のリシャール・ミル ヨネックスレディスゴルフトーナメントは、静岡県の朝霧ジャンボリーで開催されました。
会場は富士山麓の標高800mに位置するのですが、大会当週は練習日から連日霧が発生しました。
更に金曜日から土曜朝にかけては、台風による300mm以上の激しい雨が降り、
土曜日の昼12時にようやく1ラウンド目が開始できるという状況でした。
雨が上がった後は雲一つない快晴となり、目の前の富士山は雄大で美しく、
この日は無事に1ラウンドを終えられると思った矢先です。
16時過ぎに急に冷たい空気が流れ込み、徐々に霧が出てきて、
17時過ぎにはコース全体が雲の中に入った状態でした。
霧は競技をする上で最も扱いが困難な自然現象です。
雨と違って、いつ発生していつ晴れるか全く予測がつきません。
また18ホールあるコースでは、晴れているホールがあれば、霧で見えないホールもあります。
このように競技中に霧で予測がつかなくなったとき、競技委員会はプレーの中断をせずに、
その各組の状況にあわせてプレーを続けるか、止まるかの判断を
プレーヤーに委ねることがあります。
例えば、霧の中でティーショットをする場合、プレーヤーの飛距離が230ヤードだとすると、
ティーから230y離れたランディングエリアのフェアウェイのライン、
バンカーやペナルティーエリア、そして樹木などが見えるのであれば、
部分的にモヤがかかっていてもプレーを続けます。
これはグリーンに向かってプレーするときも同じで、
例えばセカンド地点からグリーンの形、旗竿、グリーン周りのバンカーなどが
薄っすらでも見えたらプレーを続けます。
これらが見えなければ止まり、また晴れてくればプレーを進めます。
しかし委員会は、霧が濃くなる一方で回復の見込みがないと判断すれば、そこでプレーを中断します。
また一部のエリアだけ霧でプレーが止まり、他のホールがクリアでプレーが進み続けると、
全体のプレーの進行がアンバランスになるので中断にします。
この大会では、16時40分から徐々に霧が出始め、
17時には霧が濃くなるばかりで全ホールでプレーが止まりました。
委員会は、日没まで晴れる見込みがないと判断し、
17時19分にプレーの中断のエアホンを鳴らしてサスペンデッドとしました。
本来、プレーヤーは落雷の危険を感じたときや
委員会がプレーを中断したときを除いて、自らプレーを止めることはできません。
もし正当な理由なく中断した場合、プレーヤーは規則5.7aに基づいて失格となります。
またプレーヤーがルーリングを要請したり、怪我や病気になった時も、
少しの遅れが認められるものの、不当に遅らせたと判断されれば規則5.6aに基づいて罰を受けます。
しかし競技委員が6人しかいない大会で、
霧の影響で各組がルーリング要請をしては委員会の対応が追いつきません。
それ故、霧の中でのプレーは、プレーヤーに
プレーを続けるか止めるかの判断を任せる非常に稀なケースとなります。